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「頑張るという意思は、ここで言われても全く信用ないということは分かってますか?」
「え……?」
「これ以上は、この問題が解決した後に聞いてくださいということです」
「信じられないってこと?」
「当たり前でしょう。そもそも信用をかける相手はギルベルト様ではありませんよ。私たちにかかっている呪いとか魔法に対してです。操られている人間に何を言われても信用できない事と同様。私は今自分自身に対して信用もできません。だから、今後解決よりも前にその話題を降ったら、結婚は無効です、早く解決したいんですから、余計なことを考えさせないでもらえますか」
器用では無いのだ、今頑張っているこの難問に対して恋心なんていう自分で操作できない感情まで考えているほど余裕はない。
そもそも寝ているがドラゴンの前で何を悠長なことを言い始めるのだ。自分を放っておいて何話しているんだとか不機嫌になったらどうしてくれる。
今は遠い将来よりも近い将来のことを考えたい。その意識を込めて早口で捲し立ててしまった。
「あ……そうだね、ごめん」
「あーもう、後回しにするだけじゃないですか。落ち込まないでくださいよ、有名な魔剣士さまのくせに」
「ええ……なにその呼び方。俺も別に好きで有名になった訳じゃないけど」
「じゃあなんで有名になったんですか」
「それはギルドが何故か俺を祭り上げて……」
「……」
「……」
ギルベルト様が一躍有名にさせた出来事は、大きな魔獣が暴れ出した際に学園の生徒が止めた事件からだった。
私も覚えているが、「あの魔獣を学園の生徒が止めた!」という内容だった。
止めただけで有名になるなんてすごいなと思ったことを覚えている。
普段ギルドが大きく取り上げる事件は、討伐をしたとの内容ばかりで、止めることができたとしても再び暴れ回る魔獣は討伐をしなければ結局意味がない。
今考えればそのニュースが出てから、すごい学生の魔剣士として一躍有名になったはずだ。
「ギルドは確か、学園と精通しているな」
「なんで今まで教えてくれなかったんですか」
「学園長は、本当にただ憧れのパートナーを見たかっただけだと思っていた。だから、怪しいと確信したのがシャック等のことがあってからなんだ」
当たり前だが、ギルド間はもちろん繋がっている。
隣町で起きた情報も、全部ギルドでは把握されているという訳だ。
では、以前出会ったエルフたちは?
彼らは本当に信用に足人物たちだっただろうか。
もしかして、渡された本も、告げられた言葉も、全てウソだったら?
私はギルベルト様の本を思い返した。
今ギルベルト様の魂は魔王と勇者が合わさっていると言われていなかったか。
じゃあ、本に移ったアギィトスって、何のことを言っているの?
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