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『どうして、なんで……』
レシーが泣いているような気がした、でも私には肩に手をおいて慰めることはできずに手を空中に浮かせたまま静かに俯くしかできない。
自国の滅んだ原因が、まさか自分が有名になりなかったからなんて、誰であっても許すことはできないだろう。
しかも、自国を繁栄させた力を勝手に悪用されて、破滅など聞きたくはなかったはずである。
「そういえば、勇者と聖女の物語はあっても、それを運命のパートナーの力を使用して魔王を倒したという記述はなかったな。書いてあるのは、黄金のスターと言われる魔法陣を使用したという物だけだ」
「そういえば黄金のスターの魔法陣て本来の使用の目的ってなんでしょうか」
ギルベルト様の言葉に、私は現実に引き戻された感覚があった。
レシーのことも心配だが、問題は私たちの呪いをとかなければいけないのだ。
まずは、よく運命のパートナーに現れたとされるあの魔法陣について確認をしたかった。
シャックとエミリが出現させることができるあの魔法陣は、過去にはどんな時に出ていたのだろうか、期待してアカの方を伺うと、興味がなさそうにチョコレートを頬張っている。
「ああ、あの魔法陣はとても神秘的だと思われるだろう」
「確かに、そうですね」
「それだよ」
「え?」
アカは口の端についたチョコレートを舌で舐めとると、残り1枚となったそれを名残惜しそうな顔で眺めていた。
5枚も買って来たのにこの短時間で全て消費してしまうなんて燃費が悪いのではないだろうか、それなら小分けで大量に入っているチョコレートを購入するべきだった。
残りの1枚もすぐに口の中へと消えていき、結局全てアカの胃の中へ収まってしまった。
安物だったので大丈夫かと思っていたが、値段はさほど関係がなかったようだ。
しかし、魔法陣が神秘的だからなんだって言うんだ。
「魔法陣には魅了の力がある。運命のパートナーにしか生み出せないのではなく、運命のパートナーを印象付けるための魔法陣でな、誰が使用しようと内容は変わらない。勇者と聖者への願望、それを人の頭に流し込むことができる物だ」
何その魔法陣、気持ち悪い。と口をつきそうになった。自分を有名にするため、人を魅了するための魔法陣を呪いを使って生み出すなんて、エターナル姫は相当自信があったのだろうか。有名になりたいだけでそこまでできるなんて、もっと他のことに力を注ぐことができれば、もっと素敵な未来に繋がっていたかもしれないのに。
有名になりたいとは1ミリも思わない私の意思でも盛り込んであげれば多少は変わったのでは無いだろうか。どうやら魂は聖女で、エターナル姫のようなのだが。
「……こんな間反対の人間になるもんですか、前エルフの人たちに聖女そのままだと言われたので、多分エターナル姫の魂なんだと思うんですが、全然有名になりたいとは思わないんですけど」
「魂が同じで、性質が同じだったとしても、与えられた使命は違うからな」
「しめい?」
「魂には生まれ変わる時に使命が与えられるんだ、確かに性質が同じ魂は性格が似やすいが、どちらかといえば使命によって性格は変わってくる。だからお主はそんな暗い性格をしているんだろう」
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