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私の家はギルベルト様の寮の一室となった。
あの日、学長に頑張れと告げられた日のうちに、何故か編入手続きが取られ、そして、学費は一括でギルベルト様の財布から支払われ、私の荷物は持ち運び出されていた。
「り、両親に挨拶を…」
「もう許可はもらったよ」
そう言って取り出した紙には、確かに両親の字で『達者で』と書かれており、まるで最後の別れかのような気持ちにさせられた。
「お金は渡しましたか」
「渡してきたよ」
私が薬で稼いでいたお金を家に送っていたことすら彼は把握していそうだ。恐らく、私がパートナーであることを誰にも話さないようにという事も言ったことだろう。
私は何度目かのため息をついた。
よく分からないうちにこんな所まで来てしまった。
まだ認めていないパートナーという契約名も、自分で半端知っているのだから全くの白紙にする事なんて難しいのだろう。
出来る事なら記憶を持ったまま学校に入る直前までもどしてほしい。
せめて勉強をもっと真面目に取り組んだことだろう。
だがもう取り戻すことは不可能な時間という概念に多少の恨みを覚えつつ、昨日渡された教科書を開く。
それはギルベルト様の1学年の時のものであり、私の習ってきた3年分の内容が詰め込まれたものでもあった。
これがトップを走る学校の学力なのだなと感心する。
私はこの学校に編入させられたとまだ信じていないのかもしれないほど他人事に感じた。
ギルベルト様の部屋は、学生寮という名の小さい家だった。
積んだお金の額によって変わるというそれは、私の実家ほどの大きさであり、部屋は大きく分けて3つ。寮の廊下の扉を開けるとリビングがあり、両側に彼の寝室と物置があった。
今日からその物置が私の部屋である。
彼の侍女は、間違いがあってはならないとギルベルトの寝室に鍵をつけ、私の部屋の鍵はギルベルト様に渡していた。一体どんな間違いがあるというんだ。それに私の人権は無いに等しいらしい。むすっとしていたらギルベルト様に笑われた。彼に鼻をつままれてパシリと手を払うと彼の侍女がすっ飛んできて私にこう言う。
「まるで礼儀がなっておりませんわ」
当たり前である。
礼儀とはなんぞやという所から教えて頂きたい。
彼女達は、私がパートナーという事が許せないらしい。初めから私にあたりがとても厳しかったが、仕方がないので無視である。
こちらの学校では金持ちの家の子供には侍女がつけられる学校だということもあり、お金を見せたい父の命は変えられず、外してもらえないと言っていた。
つまりは、その『父』も恐らく許せていないのだろうと思った。
因みに各部屋の中に別に寝室やお風呂などがあります。
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