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『哀れな男よ、ただ外見の良さで目をつけられ、いつでも捨てても良いように策を立てられている。魔王の男、保護してやれ』
「なぜ俺が」
『ふん、その男を操る奴が以前ここに来たことがあるのだ。我を僕にしようとしたので追い返してやったんだが、その時に谷に落ちていた魔石を拾ったらしくてな。その石をその男に埋め込んでおる』
ドラゴンが言うにはその魔石に呪いを移すことができるらしい。
だが、魔石はシャックの体に完全に埋め込まれているので、取り出すには時間がかかる。取り出せるまでに彼が死ぬと魔石の効果もなくなってしまうようだ。
また、魔石を取り出すためには、元のギルベルト様を憧れている純粋なシャックを取り戻す必要がある。
エミリと純粋に恋愛をして、憧れの人物がいて、頑張って勉強をして、そんな当たり前の日常を思い出すためには、今彼らが今住んでいる場所に戻らないようにしなければならない。
つまり、誰かが保護して匿う必要があるとのこと。
『この件について把握していて、信用できる人物はいるのか。いないならばお前自身が保護するしかない』
「ギル様のご実家」
「母に知られたくはない」
「陛下は?」
「貸しを作りたくはない」
「ギル様自分の寮に戻るんですか?」
「戻……はぁ寮は学園で、今は王宮に住んでるな」
「そうですね、今私たち王宮に住んでます、流石に学園に戻ることはできないと思うので、バレちゃいますよ。陛下には」
信用がある友達がいないらしいギルベルト様に私は可哀想にという思いを込めた視線を投げると、とても嫌そうな顔をしてきた。
そういえば殿下には友達……というよりは、ギルベルト様に恋をしているのかを疑うほど好かれていたはずだ。
彼なら少しは待遇よく彼らを保護する手伝いをしてくれないのだろうか。
だが、嫌な顔をしているギルベルト様へこの提案はあまり進まなかった。
彼は殿下のこともあまり頼りたくないと思っていそうだ。
「仕方ないな、こっちで保護するか」
「え、ええ……それは」
「大丈夫だよ、エミリも一緒に保護するはず」
ギルベルト様が保護を決めると、エミリがとても不安そうにキキョロキョロとし始めた。
今の環境を知っている訳では無いが、シャックと近しい環境だと思われる。だからシャックが急に居なくなることは彼女の今後の生活にも影響があるんだろう。
私の予想では2人とも保護してくれると思っていたので、私が答えてしまった。
「ああ、シャックを保護するならもちろん君も保護するよ。何をされるか分からないからね」
「で、でも迷惑なのでは」
「これを仕組んだ奴らが悪いから気にしなくていい」
ギルベルト様もあっさりと承諾したため、私もホッと息を落ち着けた。
もし断られていたら、無理にでも連れ込もうとしていたので一安心だ
やはり、ギルベルト様は優しい人だ。
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