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とても簡易的な防具を身に纏い、私とギルベルト様は早足で歩いていた。
エミリたちは先に行ってしまったらしいと報告を受けて私たちは慌てて追いかけている。
ドラゴンに問答無用で攻撃などされたらたまったものではない。
運動不足の私的には山道を早足で歩くなど心臓に悪いのだが、現状そんなことを言っている暇はなさそうだ。
「レティ大丈夫?」
「……は、は、い」
「本当に辛くなったら抱えるから言って」
「は、はい」
限界という訳ではないがすでに息は上がっている。
歩きながら話そうと思っていたことも全く話せるとは思えなかった。
そもそもドラゴンに向かうためにつけた防具が、布でできた物で本当に問題ないのだろうか。
ギルベルト様は、ドラゴンから攻撃を受けたらどれだけ強い防具でも意味を成さないのだから、逃げれる可能性にかけて軽い素材の防具が良いと言っていた。
そんなことを聞いて断然行きたくなくなった訳だが、許してくれる訳もなく。
「はぁ……はぁ……」
「……レティ、おいで」
頭がボーッとしてきたと思ったら、ギルベルト様の腕の中に抱き留められていた。
少し意識が朦朧としていたらしい。
そのままお姫様抱っこの形にされて、森の中を進んで行こうとする。
「え、この体勢で進むんですか」
「背中から襲われた時対応しにくいからね」
私は背後から攻撃がくるなんて想定はしておらず、思わず口を閉じた。
それはどの敵を想定した判断なのかは怖くて確認することができない。
余計な会話はより恐怖を煽る気がしたので黙ってギルベルト様の首に腕を回した。
森をどんどん進んでいくと、徐々に空気が暑くなってきていることが分かる。
おそらくドラゴンの住処に近づいているからなのだろう。
「ギル様、そろそろ」
「大丈夫だよ」
暑いのに誰かを抱えてなど大変かと思い、おろして欲しいとお願いするとギルベルト様は呪文を唱え始めた。
気がつくと先ほどまでの汗が出るような暑さはなくなり、多少歩いても汗は出ないほどの気温まで下がっていた。
こんな高度な魔法が使えるなんて、やはりこの人はすごい人だなと改めて尊敬する。
しかし、魔法使用で疲れないわけもない。
「あの、魔法薬持ってきているので……」
「そうなんだ!レティの薬飲んだらこんな山道楽に登れそうだ」
目の前で口を開けられたので薬を中に放り込む。
この薬は別に甘く加工してある訳でもないので、普通に苦い。
「水出さないと」
「大丈夫、慣れてる」
先ほどより少し涼しそうな顔で歩くギルベルト様を見て、もっと早くに薬があると伝えればよかったと思った。
どうも魔力を伸ばすイメージで作成しているので、体力向上が付属していると忘れてしまう節がある。
迷惑をかけることは分かり切っているのだから、もっと自分のできうる限りの対応を考えなければ。
私は他にどんな効能の魔法薬を持っているか、今一度頭の中で確認したのだった。
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