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エミリとシャックがご飯を食べ終え、自室へ戻っていくとギルベルト様と2人だけが食堂に残った。
「なぜあの2人が私たちの代わりの運命のパートナーとして立てようとしたんでしょう」
「……何かがあるんだろうけど、分からないな」
ギルベルト様がため息をつきながら席を立ち上がった。
どうやらドラゴンの対応にシャックが来る事に対して残念に思っているようだ。
様子がおかしいままシャックとエミリが来なければ、何事もなく終えることができたのにという思考が読めるようだ。
確かに、話し合いで終わらせようとしている私たちに対して、討伐を行いたいシャックがいる事によって混乱が起きることは必須。彼らを庇いながら動くなんて今回は不可能に近いのだから本当に大人しくしていてと願うばかりだ。
『ドラゴンは怒らせると大変ですよ』
(それは分かってるんだけど)
ドラゴンの討伐は大昔に行われたことがある。
それは息に触れると凍る魔力を持ったドラゴンで、討伐に参加した戦士たちはほとんど死亡し、討伐した人間も足を失ったと歴史書に書かれていた。
その土地はそれまでは常に寒い土地でしかなかったにもかかわらず、ドラゴン討伐後に急激な暑さに襲われ、突然の温度変化によって育っていた食物は全て死に、砂漠化が進行してしまった。
今では誰も寄り付かない土地となり、灼熱の太陽の日差しが降り注ぐ危険な場所となっているらしい。
その歴史書を見る限りでも、ドラゴンの討伐にはたくさんの命を失うだろうと事は分かるはずだ。
学園長がシャックにドラゴン討伐を命じているとして、彼に何か利があるからやっていると予想できる。
(ドラゴンの討伐によって考えられる得する人間てだれかな)
『医療関係の方、土地整備の方……でしょうか?』
(例えばこの付近の土地を得ようとして討伐させようとするかな)
『以前のドラゴン討伐の時は記憶ありませんが、氷のドラゴンが住んだ土地は、住む前は普通の山だったと聞いてます。だから今回も討伐したとしても災いとして、この土地にも何か気候に変化が出る可能性が高いです……』
(つまり、ここに建物を立てる事は不可能になると思うってことか)
『はい』
もう一つ考えられるとすれば、この土地に隠したい物があり、全て無かったこととなるようにしたいか。
「……」
割とあり得そうだったので、つい黙ってしまった。
意地汚い貴族たちは下の人間を使ってついでに闇の過去を抹消する癖があるものだ。
しかもここは観光地。
ついハメを外してしまったなんてこともあったかもしれない。
一応ギルベルト様に提案をしよう。
ドラゴンの場所に向かう事にも緊張しているのに、どうして別のことも考えなきゃいけないんだ。
「レティ、早く準備しよう」
「あ、はい」
とりあえずドラゴンの場所へいく最中に話をしよう。
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