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「とりあえず、赤のドラゴンは……」
「それは、僕も倒しにいきます」
ギルベルト様が話しかけ、少しだけ様子が戻ってきていたシャックが突然立ち上がった。
その目は先ほどの虚な感じとはまた違っているものの、視線が全く合わない。
何か知っているかとエミリを見ると、深くため息をついていた。
「私と2人きりの時はこんな感じの時もあったのよ。洗脳っぽいでしょ」
「確かにさっきのよりも洗脳の感じがするかも」
この状態になると断固としてその意思は変えなくなるという。
遂行するまで終わらないその行動力にエミリは困っているらしい。
「ドラゴンは討伐目的では無いけど」
「いえ、悪さをするドラゴンは倒さなければいけないと言ってました」
「一体誰が?学園長が?」
「は、い……あれ、いいえ、違います……」
シャックは慌てたというよりは頭の中の情報が違ったために、つい言い直したような形でギルベルト様の言葉を否定すると、席を立って何処かへ行こうとしている。
エミリが慌てたように腕を引っ張って座らせた。
「シャック、ご飯食べるために来たんだから食べようよ」
「でも、ドラゴンを」
「倒すためには力を付けなきゃでしょ?」
「ああ、そうだね。適当な料理で良いよ」
「分かったわ。ここにいてね」
そんな会話をしたのち、エミリが朝食を取って戻ってきた。
おそらくテーブルに付く前に注文を終えていたのだろう。
ご飯はしっかりと食べるんだなと少し安心して見ていると、シャックがこんなことを言い始めた。
「エミリ、味付けをかえたの?今のも美味しいけど前の方が好きだな」
「……そうだよ、今研究中だから許して」
「分かった」
これは全く大丈夫な状況ではなさそうである。
一体いつエミリがこの食堂の食事を作ったというのか。
精神的な不安定と記憶の混同、シャックの中では今何が見えているのかがもっと分かってあげることができたら、少しは解決に進む可能性もあるのかもしれない。
それにしても、学園長が犯人だとして。
結構余計なことをした物だ。
私より、ギルベルト様に取ってはただ迷惑なだけだろうし、エミリとシャックも巻き込まれて可哀想なパートナーである。
「そういえば、あの魔法陣はどうやって出しているの?」
「『黄金のスター』のこと?」
私は無言でうなずいた。
私の問に対してシャックは何も反応が無いので、この状態の時は忘れているのかもしれない。
「あれはただ、イメージを空中に投影しているだけだよ。かなり大きいうえに光り輝かせたりする効果が結構大変で、あんまり出したく無いんだよね」
私の知識としての魔法陣は、魔法を使用した際に発生する物だと認識していたため、魔法陣事態を魔法で発生させるという発送がまるでなかった。
ようやくこの2人の大きな謎が私の中で落ち着いた。
確かに意図的に発生させるなら魔力が安するパートナーなら誰でも出すことができそうだ。
それならば、元から魔力が高い貴族のパートナーを使って「運命のパートナー」を作るべきだったのでは無いかと思った。
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