133
「夜はずっと謝って、でもふと思いついたように『でも運命のパートナーになれば』と言ったり。私はただそばにいることしかできなくて」
「そうだったんだね」
ギルベルト様にかけられていた呪いは、おそらく完璧な状態で使用されていたとは思えないが、シャックにかけられた恐らく呪いは、ほぼ完成状態であり、それを無理やり引き剥がされた状態に見えた。
ギルベルト様は初めから不安定な状態であったが、シャックはなんの迷いも見えなかったためである。
きっとシャックの体に根付いていた呪いは、割と深くまで浸透していたのだと思う。
そういえば、何で呪いが根付く物だって知ったんだっけ。
『それは私が知っていたからだと思います』
(レシー?)
『そう、昔から魔法薬の調合が上手だったことも、私が昔魔法薬の研究を行っていたからだと』
(なるほど)
『魂を入れ替えられてからも聖女と崇められていたから、せめて良い薬をと思って作っていました。なぜか知っていたレシピがありましたよね。あれは、せめて誰かの役に立てるようにと私が考案したレシピなんですよ』
普通にレシーの能力に感心していると、ギルベルト様はシャックに何かを話しかけていた。
「名前は」
「……シャック」
「エミリとパートナーだね」
「ああ、運命のパートナーのようだといつも褒められていたんだ……」
ギルベルト様に憧れていると語った彼の目には一切の感情が浮かんでいるように見えない。
恐らく今話している相手がギルベルト様であることも分かっていないのだと思われる。
昔のことを思い出して、それに対して少し口角があがるのを見ると、きっとすでに彼の心は疲れ切って現実を見たくないと感じていると理解できた。
「ドラゴンへは俺たち2人で行く。君たちは誰に何を言われても部屋から出ない方が良い。扉に魔法をかけよう」
「……でも、貴族の人がきたら」
「エミリが言えないその貴族の人って、今までは近くにいたの?」
「本人ではないけど関係者の人がいたよ」
「ふーん?」
関係者?
何となく、雇われている人間なのかと思っていたが関係者と聞くと何だか違う立ち位置の人のように感じる。
もしかしてその関係者も貴族の人なのか。
今回は陛下から派遣されている騎士たちと共にしかきていない気がしていたのだが、また別で、例えば観光客に紛れて存在していたのではないだろうか。
「そういえばここにもエルフなどはいないんですね」
先ほどまでギルベルト様と、学校にはエルフがいないという話を思い出してそんなことを呟いた。
するとギルベルト様は、はっとした顔をした後にこう答えてくれた。
「他の学校にはエルフが存在する場合もある、ただ、うちの学校は一度も入学したことはなかったらしい。学園長が言うには、『穢れてしまうから』と言い伝えられていたと言っていたが」
そこまで言葉を発してギルベルト様はエミリの方を向いた。
「……その貴族というのはもしかして、学園長か」
「……」
その瞬間、エミリの顔は真っ青になった。
お読みいただきありがとうございます!!