12
起きて魔力量を測定してみると以前の5倍位に増えていた。
もう一回寝ようとして時計を見ると学校の時間。
「…………」
そして、カーテンを開けると寮の前にギルベルト様がいた。
私に気がつくとまるでそこだけ切り取られた絵の様に花びらが舞い、爽やかな笑顔で手を振ってくる彼が目に映る。
頭だけペコリと下げると私は学校へ行く準備をはじめた。
「なんで居るんだぁ!」
その叫び声は寮全体に響き渡ったらしい。
「ひどいな、あんな叫ばなくたって」
「不可抗力です」
朝から完璧な顔面がうざい。
私はもう寝癖さえそのままで学校へ足を踏み入れているというのに隣を歩く彫刻は髪さえ思いのままなのかもしれない。
「私の髪は長いから寝癖がつかないんだよ」
「……心読む魔法でも使ってるんですか」
「髪をずっといじっていて頬を膨らませているから、恨まれているのかなと」
それは誰でも分かりそうである。
なんとなく悔しかったのでそのまま前を向いて歩き出すと急に頭に手が乗ってきた。そして流れるように頭を撫でられる。
「ふふ、フワフワ……」
「ちょ、ちょっと」
「可愛い、飼いたいくらいだ」
「私はペットじゃないんですが……」
「そうだった、私の愛しいパートナーだったね」
「………」
その言葉には語弊がある。
まだ、世間で言われている認められたパートナーではないし、愛しいというのも彼にとっては『おはよう』くらいだのテンションのはず、ぜひ呪いたい。
紙で右手を地味に切って、そしてそれから何かの菌が入ってずっと腫れて文字が書きづらくなればよい。その程度なら呪っても許される気がした。
ヒールの存在を思い出して、魔力の量が多い人にやっても無駄だと悟り、今の考えを消去しておく。思考を無駄に使ってしまった。もったいない。
さて、教室に向かおうとする私の腕を掴んで彼は職員室に向かっていた。既に担任には話しをつけているらしく悪びれもしない態度でその扉をあける。
学長は苦虫を噛み潰したような顔をして待っていた。
「本当に彼女なのかね、ギルベルト君」
「ええ、彼女以外は考えられません」
「ん!?」
私が居ない所で何かの話しが進んでいるようだった。
簡単に話しを聞くと、もしパートナーが見つかった場合、今日連れてくる事が決まっていたらしい。
その相手がまさかただの平民の弱小者だとは思わなかったのだろう。そもそもパートナーが見つかるとも思っていなかってのかもしれない。
学園長は疲れ切った顔で問いかけてくる。
「……試したのかい」
「いいえ、ですが彼女だと確信しております」
その言葉に驚いた学長は私を見た。私も驚いているのだから見られても困る。
そんな時間は彼にとって必要ないと判断したのだろう、どんどんと話しを進め始めた。
「ですから彼女を私の学校に招待したいのです」
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