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今日は携帯です
服を脱いで扉を開けると温泉には誰も入っていなかった。これなら贅沢にも1人でゆっくりと湯船につかれることだろう。
「ふぅ……」
温泉は3種類あり、2つは中に、1つが外に配置されていた。それぞれ効能が違うらしい。
とりあえず近場の湯船に入ってからその効能を確認する。
「血行の促進、肩こりなど」
血液がドロドロの人にも効果があるらしい。
そもそも血液の検査なんてここの観光地でしかやっていない。血液がドロドロしていたら一体何に影響があるのかをこの場にも書いて貰わないと、効果がイマイチ頭に入らなかった。
どれも体の疲れを癒してくれる事には変わりないだろう。
『いいですね、私も温泉に入りたいです』
(正直目の前にあって入らないのは辛いと思う)
『それ位気持ちいいんですね、ずるいです』
レシーには可哀想ではあるがこの贅沢を満喫してやろうと思った瞬間だ。
ガラガラと扉が空いた。
そこには驚いた顔をした世間一般でライバルとされるパートナーの片割れの女の子が立っていた。
何故このタイミングで入ってきたのか、できれば紙にまとめて提出してほしい。
その間に私は温泉を出るつもりだ。
「なんでここにいるのよ」
「え、居たらダメ?」
ここの観光地での温泉は、前もって貸し切りたいと伝えていなければ誰であっても自由な時間に貸し切らないとしている。
以前王族が来た時も同じように対応したとして一度問題になったようだが、国全員にこの場を楽しんでもらう為に必要な制度だと説得して事なきを得たらしい。
よって、当日は店によって決められた時間制の貸し切り(予約が埋まっていた場合はできない)の手配を行わない限りは、貴族とですら浴場でバッタリ、なんてことも起こり得る。
つまりは目の前の少女に『何故ここにいるのか』について聞かれた理由が全くまでもって意味が分からない。
「私が居るんだから出てってよ」
「入ったばかりなので嫌なんですが」
「そんなの関係ない!」
「じゃああんたが時間変えれば良いじゃん」
つい強い口調で反論すると、少女は少したじろいだ。
どうやら私が自分に反論をしてくるなど考えても居なかったらしい。
長く外に裸でいたからだろう、彼女は両腕を前に抱えてさすっている。
「入れば」
「………」
少しの間再び悩むと、寒い方が上回ったのだろう湯船にゆっくりとつかってくる。
まぁ、初めに説明した通り、この風呂場には3つの湯船があり、1つは外にある訳で。
本当に嫌ならそちらに行けば良いのに、そこまでの思考すら危ういらしい。
「………」
「………」
今まで出会ってきた記憶では、彼女にはすぐ罵倒されてきた記憶がほとんどなので、急に黙って大人しくするのはやめてほしいと思った。
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