119
昨日は夏休みいただきまきました。
「自ら爵位を持たない場合、パートナーの鑑定には援助を受けているその主からの許可が必要となる。だが、何らかの理由により王族が許可を下す場合も……」
陛下が会場に現れると、お酒をがぶ飲みしていた2人は一応洋服を直し、赤い顔ながらも真面目そうな顔で正面を向いた。
私とギルベルト様も流石に中二階に居る事はできずに静かに広間へ移動する。
そして、陛下が簡単な挨拶を済ませた直後に宰相の説明が始まった。
『運命のパートナーを決定する』と宣言されたそれは、まるでセレモニーの前である。
通常パーティでここまでゲーム開催前みたいな説明始まるだろうか。
いや、きっと無いだろう。
私はこの後に起こりうるいくつかのパターンを考えたが、どれも面倒だと思うものばかりだった。
そもそもギルベルト様の父ザヘメンド辺境伯様が意地になって鑑定をしてくれないのも少しおかしな話である。
逆に陛下と手を組んでいたりしないのだろうか。
「……ゲームですか」
「そうだね、俺たちを題材にしたね」
「寧ろ主役ですけどね。前出来なかった事を根に持ってたりして……」
「陛下だとあり得なくない事が不安だね」
「……」
ギルベルト様は諦めた顔をして腕を組んでいた。
早くここから立ち去りたいと考えているに違いない。
まだ陛下への挨拶も済ませていないので、逃げられない事は承知している。
私達は、貴族様たちに囲まれる覚悟を持ちながら宰相様のお話の終わりを待った。
「ご機嫌よう、ギルベルト様!!お会いできる事を楽しみにしておりました!!」
「ギルベルト様!!この間の魔獣対峙では一緒に戦うことができて嬉しかったです!!また協力して討伐しましょう!!」
陛下から提示されたゲーム内容は、私とギルベルト様のパートナーと、あの外見麗しい『運命のパートナー』しか出せないとされる黄金のスターの魔法陣を出せる二人のパートナー4人で、最近暴走し始めた赤の竜を止めに行くというものだ。
止められたパートナーに、今回の『運命のパートナー』としての名誉を与えてもらえる。
そして、その賭けに参加する貴族は、自分の推薦する者に支援してほしいと声がかかっている。
注目すべき点は『赤の竜を止めてほしい』だけで討伐と言っていないこと、『名誉はパートナーに与える』のに支援は個別に行えるということの2点だ。
そこをふまえた上で、この2人は何を言っているんだろうと思わざるおえない。
まず、竜は討伐してはいけなかったはずだ。
何かの契約がされているから討伐してしまうと守りがなくなると聞いたことがある。
それが理由で平民のお店でもお守りとして竜の飾りが売られているほどなのだ。
多分この2人は誰かの協力のもと邪魔を仕掛けてきていると考えているのだが、その協力者も大丈夫なのか心配になってしまう。
お読みいただきありがとうございます!!




