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今回は第三者視点から始まります。
急に開催する事となった宴にも関わらず、数百人の貴族達が集まった。遠い場所が住居あっても魔力で道を繋ぎ、無理に王宮へ足を運んだに違いない。
ここまでの人数が集まった理由は、陛下の口から《運命のパートナーの候補が現れた》と発表したと同時に開催する事となった宴だからである。
貴族達は、自分達の予定をかなぐり捨てる勢いでその陛下の発表する《運命のパートナーの候補者》を目に収めようと躍起にやっていた。
恐らくそれは、貴族の中で密かに噂が立っている、隣国から戦争を仕掛けられる可能性と、魔獣の急速な成長が原因であろう。
隣国が何故戦争を仕掛けようとしているのかについては、資源の減少が挙げられるが、もう1つが《運命のパートナー》が生まれていないことも理由となっている。
《運命のパートナー》とは、世界に希望をもたらす人材として、現在は世界全土から守られなければならない決まりになっており、そのパートナーはレティシア達の住む国からしか生まれたことが無かったのだ。
だからこそレティシア達の国は、強い魔力を持つ平民は貴族に渡るようにし、魔力学校に力を入れて、武力にその力を振らないように心がけてきていた。
守られている間であれば、仕掛けさえしなければ戦争にはなり得なかったからである。
だからこそ、ここ数千年の間、レティシア達の国では魔獣と戦う以外で戦争が起きたことはなかった。
だが、そろそろ現れても良い《運命のパートナー》が現れず、守られる象徴がいない現在の王国では戦争を仕掛けられても戦うしかないのだ。
だからこそ、呼び掛けられた貴族達はその姿を一目でも見ようと集まったのである。
レティシア達がその発表がなされたと聞いたのは宴が開かれる会場の前に着いた時であった。
因みに、《運命のパートナー》が守られる対象とされるのは人間からのみであり、領地を治める事となった当主しかその事を伝えられない。
つまり、レティシアとギルベルトはその事実を知らないままに会場に連れてこられている訳である。
すでにギルベルトのパートナーが運命のパートナーである確率が高い事は国中には知れ渡り、現在共に連れ立って入ってきたレティシアに目を向けられた事は至極当然であった。
王宮の会場は当たり前であるがとても広く、天井も見上げ無ければ見えない程高い。白を基調とした会場内は魔法の力によってチカチカと輝き、様々な色のドレスの貴婦人とそのパートナー達からは、これまた様々な香水の匂いが放たれており、会場内は独特の匂いに包まれている。
ギルベルトとレティシアはその匂いに耐えながらなんとか陛下達の元へと歩みを進めると、その下へとたどり着く。
どうやら宴が正式に始まるようだ。
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