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アギィトスは頭を捻らせていた。
先ほど現れたエルフ、フラワージェは、確かに自分と勇者の魔力反応で爆破し跡形もなく消し飛んだと記憶している。
だが、先ほど現れたのは、以前見た姿と全て一致する。
全てというのは肌の色や髪の色などではない。髪型から服装まで全てという意味だ。
そこから導き出された事は、フラワージェ自身が霊体であり、当時の姿を変えることが出来ないのではないかという事だ。
魔王として長く1人で城に篭り、世界に張り巡らせた探知に引っ掛かった『人に被害を加えそうな魔物を消す作業』しか行わず、何事に対しても興味が無かったアギィトスだ。
最後に生きた僅か数年という短い間が人と関われた、そして自分で外部の情報を得ることができた時間である。
もちろん、現在でも魔族以外についての知識はほとんどない。
だが、ある魔族が人間に恋をして、たくさん会いに行っていた時期。それからアギィトスが聞いた図書館にある本に、『霊』という現象が存在するのだと記載されていたらしい。
魔族はもちろん、人間、ましてや他の種族の存在は全て把握していたアギィトスだが、それらが死ぬと全て変わらず『霊』になるとは知らなかった。
興味を持ったがそれらは人間も空想で書いている者もいるらしい。だからこそ、真実かどうか分かりかねる内容が多いようだった。
何故か死ぬ時に僅かに軽くなると噂されるのも、全て霊になる前の物が体から抜けるからだと聞いた。
全てが噂であり物語であり仮説であると思われていたが、ある国で『呪い』を行う際に『霊』になる前の『魂』という物を使用するという内容が出回り始めてからだ。
魔族が急激に増え始めたのである。
何故魔族が生まれるのかは解明できていないが、負の感情で生まれてしまう可能性が高いとされてきた。そして、おそらく答えとしては正解だったと。そう、アギィトスは思わざるおえない。
魂とは、人間の死を意味している。
死ぬ人数が増えれば、悲しむ人間も増えるに違いない。
そして、その『呪い』を開発した国こそレティシーの出身国である。
きっと王族が管理する『呪い』も存在しただろう。
レティシーであれば、それらを悪用することは無かったが、最後あちらの国で姫として存在していたのはエターナル姫だった。
自分の幸せのために魂を入れ替えた女だったのだ。
アギィトスは、どうにかして呪いを調べられないかと再び思考を巡らせた。
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