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堕天使の堕落生活  作者: 三日月らびっと
第1章 ゲーマー
8/12

七話:ホルダー

 外の階段からカンカンカンと音が聞こえてくる中、フーマンは天井についているライトを不意にパンフレットで遮る。

 パンフレットのトップには大きく"悪魔の遊技場"と書かれていた。


(悪魔の遊技場か......)


 フーマンは視線をゆっくりと降ろし少しづつ読み進めていく。


==========================================

『悪魔の遊技場』


これは人生をかけたデスゲームである。

この世は弱肉強食の世界。

強者だけが膨大な富や名声、権威を得ることができる世界。

敗者には生きる価値はない!

勝ってこそ強者!

勝って勝って勝ち続けること以外は決して許されることはない!

自分こそは人の上に立つべき存在だと自負するものは参加せよ‼️

我々はそんな君を求めている!

==========================================


「参加を希望するものは、必ず"ホルダー"登録をお願いします、と」


("ホルダー"?)


 フーマンには何のことかさっぱりわからず、持っていたパンフレットをそっと床に置いた。多少の興味はそそられたががいまいち参加する気にはなれなかった。なぜなら登録するほど面倒臭いものはないからだ。


 再び外から音が聞こえてくる。どうやら、階段から廊下に移動したらしい。


ザッザッザッ


 音はさらに動く。先ほどの音とは違い、靴と床が生み出すそのセッションは住民が歩く足音とはまるで違っていた。

 数秒後、ピタリと音が止まる。この時、フーマンは「どうせお隣さんが帰ってきたのだろう」と思って、

然して気にも留めなかった。フーマンにとっては”数回話しただけのちょっと変わったお隣さん”という感覚だったからだ。


ピーンポーン


 突然呼び鈴が鳴る。しかしフーマンには全く心当たりがなかった。しかし今家にいるのに()()()()を装うことは相手に対して失礼だと思ったのも事実である。

 恐る恐る扉を開けると、そこには一人の男性が片脇で覆うようにして一つの箱を抱えていた。

 その男はどこからどう見ても配達員の格好をしていた。しかしどこか雰囲気が違っていた。キャップのバイザーを深くかぶっているせいか目元が隠れており、口角に一切の動作は見受けられない。とても暗い人のように思えてくるほどだ。


「..................ナキリアーナ様から......あなた当てに......お届け物.......」


 男は何も言わず持っていた箱をスッと前に出した後、ボソボソと声を出す。


「ナキリーから?」

「.................確かに......届けた.......」


 どうしたのだろうかと思いつつ、フーマンは差し出された箱を両手で受け取る。


「.................では......」


 終始ボソボソしていたが聞き取れないほどではなかった。フーマンが「ありがとうございます」とだけ言い、バタンと音を立てながら扉を閉めると、再び動き出した足音は次第に雑音に紛れ、闇へと消えていった。


 フーマンは手に持っていた箱を床に置く。その箱はしっかりとガムテープで梱包されており、天界からきたものとは思えないほど、地上のものと似ていた。


 一生懸命に指を使ってガムテープを剥がそうとするフーマン。というのも、フーマンがそのような面倒臭い行動を取ったのには理由がある。それは、未だフーマンの家にはハサミというとても便利な代物が置かれていなかったからである。


 ガムテープを剥がし終えると、四方折り畳まれていた蓋の部分を外に開き中を確認する。そこには大きなものと小さなものが二つあった。


 大きなものの方から先に取り出す。これは、地上に住む人たちからすると一見ただの正方形の形をしたガラクタのように思えるものの、天界では主流といっていい程に使用率が高く、天界人なら知らない者はいないと言える程メジャーな映像機である。


「......映像機?」


(どうしたのだろうか。何か重大なことでも起きたのか? まさかーー兄上がひどい病に⁉︎ いやいや、兄上のことだ、ありえない)


「いったいなんだと言うのか......」


 フーマンはあらゆる可能性を張り巡らせながら映像機を手に取り床に置く。そのあと、ゴクリと唾を飲むと勢いよく電源ボタンを押した。


 映像機が起動し部屋一面を薄青く塗りつぶしていく。その後、少しずつ薄黄色い丸いものが現れ、プツプツと一点に集まっていき、頭、体、四肢と形を形成していく。その姿は紛れもなくナキリアーナそのものだった。


『よしできた‼︎ あ......や、やっほー。元気にしてる? いきなりごめんね? こんな映像を急に送っちゃって......。あ、でね! あなた、今暇してるでしょ!』


「いや、暇じゃねーし......!」


『だからね、面白いゲーム持ってきた!』


「面白いゲーム?」


 フーマンは唐突な言葉に驚いた。まさかゲームを持ってくるなど到底考えてもいなかったからだ。しかし、フーマンの言葉など一切顧みることなく淡々と映像は進む。まるで一方的にプレゼントを押し付けるかの如く。


『このゲームはいいところはね、ハラハラドキドキのスリルがあるところだから、きっとあなたに合うと思うの! そこにUSBメモリーが入っているでしょ?』


「......これ?」


 言われるがまま、フーマンは箱の中に入っていたUSBメモリーを取り出し映像機の前に持っていくと、返事が帰って来ないことはわかっていたが、つい聞き返してしまった。


『そのUSBメモリーを胸に差して“ログイン”って言ってみて』


「......わかった。“ログイン”!」


 この言葉に反応し突然USBメモリーが光り出す。すると輝き続けるUSBメモリーから、黒い線が奇妙な紋章を描くようにジジジという小さな音を立てながら放射線状に広がっていく。その後、ゆっくりと先端の端子だけがフーマンの体の中へと入っていき、その紋章はUSBメモリーだけに収まらず、フーマンの全身を侵食していく。


(あ、熱いっ。熱い熱い熱いっ。頭が......いや四肢が、いや体全体が飲み込まれていくようだっ......! 何も考えられないッ、頭から指先まで焼けるように痛いッ。誰かーー)


 フーマンは頭を挟むようにして強く抑える。しかし、痛みは消えない。フーマンは何が起こったのかわからず、ただただ痛みが消えることだけを願った。


 その5秒後、ゆっくりと体から紋章が消えていくと同時にまるで何事もなかったように痛みが引いていく。あり一点だけを残して。


「イッ......」


 フーマンの左肩に少しの痛みが走る。しかし先ほどの痛みとは比べ物にならないくらいの小さな痛みだった。


「なんだこれ......?」


『あ、そうそう。最初は激痛が走るけど失神しないようにね。............さて、終わったかな?』


 ナキリアーナは他人ごとのように淡々と進めていく。


『体のどこかに紋章があるはず、探してみてっ。これであなたはゲームに参加する資格を得ることができました! よかったわね!』


(ゲームするだけなのにこんな洗礼を受けないといけないのか......)


『はい、これであなたは“ホルダー”になりました! いつでもゲームに参加できるわよ! あ、ゲームをする時はそのUSBメモリーをどこかに挿してね。そうしたらゲームが開始するわ。じゃあね!』


 これを言い終わると、映像はプツっと音を立てて消え、部屋はいつも通りの色に戻る。もう一度聞こうと電源を押しても反応は帰ってこない。


「......なる、ほど。わかった」


 この時、フーマンの頭の中には一つの感情が芽生えていた。それは実際に試してみたいという欲。そんな欲望が血と一緒に全身を駆け巡る。


 フーマンは床に放ったらかされたパンフレットを見ると、手をギュッと握り締めた。

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