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堕天使の堕落生活  作者: 三日月らびっと
第1章 ゲーマー
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五話:悪魔の遊技場

「はははっ。へぇ、面白そうなことやってるなぁ」

 熱気が漂うこの小さなスペースの中で周りに感化されたのか、フーマンは少しばかりの笑みを浮かべた。しかし、元々ゲーム好きなフーマンにとっては、心底湧き上がらせられるものがどこかにあったのだろう。

 

ゾクッ


一つの視線がフーマンの体を貫いた。

瞬間にして、フーマンの体は小刻みに腰から四肢へとブルブルッと震えが伝達していく。まるでその視線が酷く痛々しいものであるから、無意識に体が反応したと言わんばかりにとてつもない速さだった。


 フーマンは“ハッ”とし、すぐさまその視線に向けて体ごとぐるりと振り向く。しかしその時にはすでにその視線は消えており、気がつけば消えていたはずの熱気が忽然と辺りを覆っていた。


「…………」


ドンッ

 モニターに目を向けていた男性とぶつかった。

「おい、にぃちゃん! なに後ろ向いてんだよ! 興味ねーならあっち行ってな!」

 男はフーマンに怒鳴った。


「……あぁ、すみません」

 フーマンはそれでも動かなかった。まるで何か獲物を狩るときのような鋭い視線、それは確かにあった。


 フーマンにとっては初めてで奇妙な体験だった。今までに視線を向けられたことは幾度としてあった。しかしそれは、全て幼なじみであるナキリアーナから好意の視線だ。

 しかしフーマンは気づいた、“今回の視線はまるで違っていた“と。天界はここ、地上と同じく戦争のない平和な地である。だからこのような冷たい視線を向けられることがなかった。

 加えて、フーマンは地上に降りてきてまだ日が浅い。もし幼少期からここで暮らしていたのならフーマンを快く思わないものもいるだろう。それならごく自然で不思議ではない。

 しかしそうではない。ゆえに気づいてしまう、この異様な視線に。


(一体、なんだったんだ……)


 フーマンはそう思いながら、歩き始めた。


  ♦♦♦


 フーマンはモールでの物色を終え、一段落をするためモール内にあるとあるカフェにはいることにした。カフェは通路と隣接しておりこれといった扉などは無いため外から中の様子がわかる。壁にはお洒落な壁紙が貼られており、少し高価そうな絵画が額縁に入れられ飾られている。まるでチェーン店では無く個人営業の洋風喫茶店のようなお店である。そのためか、たくさんの人が来店しており、レジ付近にもモール内のカフェにしては多いと思われるくらいの行列ができていた。


 フーマンは入る前に外に置かれている看板に足を運んだ。そこには、様々なメニューが書かれていた。コーヒー、紅茶、アップルパイなどの一品ものが色鮮やかなペンで記入されている。

 フーマンは少し悩んでから「……ふむ」と小さく声に出してからゆっくりと中に入る。そして、そのままレジへと向かう。少し並ぶとすぐにレジ前に着いた。


「本日のコーヒーとアップルパイをお願いします」


 フーマンは店員さんに「レシートをお持ちになってそちらで少々お待ちください」と言われたので、指示された通り“お渡し口”の前まで歩く。


 フーマンはレシートを眺めると、レシートの最下部には番号が書かれてあった。

(129番、か……)

 心の中で何気なく呟く。


「…………」

 やはり先ほどの視線が気になるのか少し考えた表情をしながら待つ。フーマンは誰が一体何の目的で自分に視線を放ったのかと、この初めての体験からありうる可能性を必死に模索する。


 店員さんの声が響く。けして静寂とは言えない環境でフーマンはそれすらも聞こえないくらい深く考え込んでいた。


 「129番の方〜!」

 店員さんの声がフーマンの耳に初めて響き渡る。


「あ、私です」


 すると、トレイに置かれた商品がお渡し口から出てきた。フーマンはそれを受け取りシュガーやミルクが置かれているセルフ台に向かうと、必要分を取り座りたい席へと足を運んだ。



 フーマンは角にある一番奥の席に座っていた。テーブルの上にはトレイが置かれてあり、そこには、ブラックコーヒーとまだ手のつけられていないアップルパイがあり、シュガーとミルクがそれぞれ一つずつ置いてあった。しかし、フーマンは一向にシュガーとミルクを手に取り投入する気配がない。


 フーマンが片手に持っている一冊の分厚い本を眺めていたからだ。カフェに入る前に買ったハードカバーで包まれたこの本は、フーマンが数ある本のうち唯一興味をそそられたファンタジー小説である。普段、勉強を目的にした本くらいしか読まないフーマンにとって、まして勉強にもならないフィクション小説を読むことなど皆無に等しいことである。そんなフーマンがこのような小説を読むということはフーマンにとって、よっぽど価値のある物か、またフィーリングがあったのか、はたまた暇つぶしなのかの三択である。


 答えは“フィーリングがあった”ただそれだけである。しかしフィクションにしてはあまりにも現実離れをしていた。著者に“エド”と書かれているがそれだけならたいしたことはないだろう。だが、その下部に“訳=大和上皇子”とあることがフィクションにしては不思議であった。


(お勧めではなかったが、訳されていると言うことはよっぽど売れていたのか……? しかし背表紙を見たところ初版ではなかった……、やはり売れていたのか?)


 親指と小指で挟むようにして右手で持ち左手でページをめくる姿は、とても凛々しく、また周りの目からはとても賢々しい人であるかのように写っていた。


(タイトルは……『Devil’s (悪魔の)Playground(遊技場)』。面白そうだ小説だな)



 しかし、当の本人は周りから注目されていることに一切気付いておらず、読むことに集中している。目を上下させると一行ずらしまた上下させる。フーマンは淡々と読み進めていくと次第に心の中で文章を復唱しつつ、活字に吸い込まれていった。


『——Devil’s (悪魔の)Playground(遊技場)、それは古より幾度として繰り返されてきた悪魔のゲーム。決して参加してはならない。人々に高い地位という恩賞をもたらすと共に人々を苦しめるこのゲーム風景はまさに地位という名の極上の餌を取り合い、遊技場で踊る醜い小悪魔も同然である。もう一度言うこのゲームには()()()()()()()()()()()()


(ふむ、序章にしては面白い出だしだ)

 プロローグを読むと次に本文を読み始める。


『昔々——Mと呼ばれる男がいました。その男は“伝承”という仕事をしていました。けれど、ある時その男は仕事に行き詰まってしまいます。なぜなら、“伝承”と言っても、男が生活をする地は未だ発展途上国、これと言って伝えられるものがなかったのです。


(ならば、その地の誕生した歴史を徹底的に調べ上げ、それを同じ地に住む人々に伝えよう) 

 ——と。

 

 男は正しい歴史を伝えるため、再度初めからあらゆる事柄を調べました。地形、人種、文字など、ありとあらゆる事柄から事実を結び付けようと試みました。

 そこで初めて知り得たことがあったのです。それは、人々に同じ質問をすると同じ言葉が返ってきたことです。


「「「A様が作ってくださった、今の私たちがいるのはA様のおかげ」」」

 ——と。


 しかし男はそれを信じませんでした。なぜなら、聞き込みをした人々はA様に会ったことがなかった、いや、会える身分ではなかったからです。つまり、彼らの言うことが正しいとは到底思えなかったのです。


(ならば、直接A様に会って問いただそう)

 ——そう男は考えました。


 しかし、A様は初めてその地に誕生した者。そのため、最上位の身分であるため通常会うことはできませんでした。でも一つだけ例外がありました。A様の側近の身分になれば会うことはできたのです。そこで、“まずは側近になろう”と男は思い立ちました。


 それから数十年が経ち、ついに男は側近になることができました。しかし、なかなか二人になれるチャンスがありませんでした。それは、側近の中でも上位身分である“創設者”と呼ばれる者たちが常にA様のそばについていたからです。そのため、聞くにも聞けない日々が続きました。


 しかし、あるときに好機とも呼べるほどの転機が起こったのです。A様や“創設者”たちと共に、身分制度の公式化や公共事業政策の推進など、各自様々な意見を言い合いました。そのせいか、今まで少し距離が遠いと思えていた“創設者”たちとの距離が急速に縮まったのです。つまり、男は“創設者“たちから信頼を得られることができました。男はこの機会を逃すことなく、A様や“創設者”たちだけがいるときにとある質問を一つ投げかけました。


「私たちを作ったのはA様か?」

 ——と。

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