四話:各地
会場内の観客から再び大きな歓声があがった。
時を同じくして、モニター越しに見ていた人々にもその盛大な開幕宣言が体の節々に痛く伝わったのか、各地で大きく盛り上がっていた。
♦♦♦
場面は変わり——。
—北の地、商業都市『クレハ』—
ここは様々な商人が集い、各々の商材を売買し最も商業に栄えている都市である。
元々は小さな集落の集まりに過ぎなかったが、ある時一人の男が立ち上がり多くあった集落を一つにまとめ、今にいたる。
今では、その男の家系の者が代々この都市で最も高貴である“長”を努めており、現在は6代目・佐川昇が“長”である。
都市の端側には、そこだけまるで別次元の様な大きな城があり、この都市ではそこに必ず長が住むという風習がある。
城の敷地周りには桜や椿などの樹々が一面に咲いていて、商業都市の中でも唯一‘和’を感じさせられるほど綺麗である。
4階、いや5階以上ある高くそびえた紅白の城。ピラミッドの様に地上階は横に広く、最上階は狭く、大屋敷ひとつしかない構造をしている。
その大屋敷の上座に正座で座って、“プロジェクター”という大きな映像機を見ている袴を着た男がいた。
この男こそが、6代目“長”・佐川昇である。
「ふふ……」
彼は楽しみを隠せないのか少し笑った。その時——。
「し、失礼します!」
一人の女家礼が慌ただしく入ってきた。そして軽く頭を下げた。
「ど、どうやら、城下町が騒がしい様子で、各地で喧嘩などが起きていると住民から伝令を受けました。いかがなされますか?」
「良い。皆、これを見て活気付いているのです。一時のこと、すぐ収まるでしょう。ありがとう、もう下がっていいですよ」
「承知いたしました、し、失礼します!」
女家礼は顔を上げると、またもや慌ただしく立ち去って行った。
「慌ただしい子ねぇ。少ししつけが足りないんじゃ、なぁい?」
彼の少し後ろで同じく映像機を見ていた女が話しかける。
彼女は鬼頭未来。佐川家が代々“長”の家系であるならば、鬼頭家は代々“長”に使える側近の家系である。
「……別にいいじゃないか」
「ふふ、そうね」
「どうせ、俺よりも頭と口が回らない馬鹿なんだろ?」
——ふふ、やっぱり。あなたならそう答えると思ったわぁ。あなたの考えることは、なぁんでも手に取るように分かるのよ。ボロ雑巾の様に使い捨ててあげるわぁ!
彼女は彼の後ろ姿をひっそりのにらめつける。
♦♦♦
一方——。
—西の地、学園都市『バザク』—
ここは多くの学生たちが集う大きな学園都市である。
赤ちゃんから社会人まで、そして名門校から無名校までおよそ千個の学園があり、学生たちは日々この学園都市で生活をしている。
ここでは、電子化されたマネーを共通通貨として使用されている。
大都市『ンヴァ』でも電子マネー制度は導入されているが、学園都市で使われている通貨とはまた別物である。しかし、『ンヴァ』の通貨が学園都市内で使えないわけではない。
なぜなら、「親御さんや旅行客が訪れた際にいちいち換金していてはとても面倒だ」という理事長の言葉があったからだ。
けれども、学生が他都市を立ち寄る際は『バザク』の通貨を他通貨に換金しなければならない。学園都市でしかその通貨は使えないからである。
これには、“学生の本分は勉強だ。なるべく学園都市内で有意義に勉強をしてほしい“といった理事長の思いが込められており、そのため、カフェにレストランなど多くの学生が満遍なく勉強に勤むことのできる施設がこの学園都市には多く存在している。
さらに、他通貨よりも『バザク』の通貨で購入した方が10%安く購入でき、得である。
全て、今の理事長がこの学園都市をゼロから創設し、この仕組みを少しずつ整えていったのである。
場所は理事長室。
一人の老夫が大きな窓ガラスから見える学園都市の風景を眺めており、ドア前でその男性を見つめる男が一人、合計二人が立っていた。部屋の片隅にある小さなモニターから流れる開幕宣言の音声位を聴きながら。
「ほほ、今日は生徒たちが一段と明るい顔をして、元気に勉強に勤しんでおるわい」
「そうですね、きっとこれのせいですよ」
「わしはな……生徒たちには早々に自身の人生を潰して欲しくないと思うとる。しかし、その一方で自身の今の実力を自分で確かめてほしいとも思うとる」
「……だから、このデスゲームに出てほしいと?」
「ほほ、そうじゃのぉ」
彼は少し笑いながら答えた。まるで蚊が育つのを優しく見守る父親の様に。
場所は『ローズ学園』
『ローズ学園』——学園都市『バザク』の中にある学園の中でも最も高貴な者たちが集まる最も大きな学園である。学園都市の中心街にあり、その約七割がこの『ローズ学園』である。
大きな庭園が敷地内の半分にわたって広がっており、もう半分には北館、南館と校舎が綺麗に四角く建てられている。
この『ローズ学園』の北館の最上階に、多くの学園を統轄している理事長がいる理事長室があるのだ。
『ローズ学園』では有名校で高貴な者たちしか入ることができないと言われているが、しかし、その中でも階級が存在している。階級は1~5段階で評価され、1が最も階級が高く、5
が最も低い。さらに学園の知名度もあって、この階級が将来の就職に大いに影響する。つまり、階級が低ければいくら『ローズ学園』でも就職ができない実力主義の世界である。その結果、すでに『ローズ学園』内では多くの階級争いが絶えず起きていた。
「……退屈だ」
空は青く、小鳥が飛んでおり遠くから鳴く声が聞こえてくる。それを眺める様に窓の方に顔を向け、頬杖を着きながら教室の隅で一人の男がボソッと呟いた。
男は白い学生服を着ており、服の二の腕と胸の部分には『ローズ学園』の校章と思われる、白黄色をした薔薇の花に赤色をした茨がその周りを包んでいる紋章が見える。襟の部分には1の数字が書かれたバッジが付いており、襟後ろは中に来ている服に付いているフードで隠れている。
髪は白くサラサラしており、少しパーマがかった癖毛で、黒いフレームをしたメガネをかけている。その容姿からは、誰がどう見ても知性を感じられる。イケメンと言い換えてもいいだろう。
「少しはこの僕を楽しませてくれるのかな……? いや……これだけ盛大に発表したんだ。楽しませてくれよ……!この僕を……!」
彼の机には小型映像機 “スマートフォン”というものが置かれてあり、そこから開幕宣言の映像が流れている。そして“イヤホン”という有線の音声出力機の先の部分を直接自身の両耳に入れ込み音声を聞く。
♦♦♦
場面は南へ移り——。
—南の地、軍事都市『ハージャ』—
とある修練所の古腐った部屋の中で複数の男たちが一人の男を凝視していた。
「ううぅ……」
男は頭を強く抑えうずくまる。
「俺は……オレ、ハ……ググガ、ギギ……」
男は急に目眩がし、うまく喋ることができない。それどころか、男には感情、理性といったものが少しずつ薄れていく感覚があった。
プツン……!
男の中の何かが切れた
「ガガゴゲグガギギゴ!」
この瞬間、男は完全に感情、理性といったものの全てが崩れ消えた。
「ふふふふふふ。ふはははは! あっははははァ! サイコーだ! これはいい! これを使い世界を……! ふはははははははは!」
複数の男たちの中心にいるガタイのいい男が大きく高笑いをする。それに便乗して——。
「このゲーム、兄貴の一人勝ちだべ!」
「へへ! やっちまおうぜ兄貴!」
中心の男以外の男たち、おそらく取り巻きであろう者たちが口々に言葉を発した。そして“兄貴”と呼ばれる男が、これらの言葉を制する様に大きな声をあげる。
「待っていろ! 勝つのはこの俺だ!」
この瞬間、大きな喝采が修練所一面に響き渡った。
♦♦♦
場面は戻り——。
—東の地、大都市『ンヴァ』—
ブロンズモール、その中の小さなイベント会場で多くの人々が活気付き熱狂しているなかフーマンは、冷たく痛い視線を感じていた——。
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