十一話:能力
『今回行うゲームは〝悪霊行進〟だ』
「〝悪霊行進〟?」
「んだぁ? そりゃ」
二人は知らないゲーム名に首をかしげる。
『では、ルール説明を行う』
この言葉に反応してなのか、元々そこには無かったはずの正方形の机がフーマンと切島の前に突然現れると、二人の間を間を遮る。机の上には、机の大半がそれと言っていいほど大きな正方形の形をしたプレイマットのようなボードが一つと、駒が16個が置かれていた。どうやら種目はボードゲームみたいだ。
同時に壱の前にある本がパラリと1ページ進む。そこには絵と文字を使ってわかりやすく書かれている。
フーマンは不思議な感覚だった。絵は、目の前の机の上に置かれているものを簡略化しているせいか視覚的に理解することはできたが、文字に関しては今まで見たこともない文字だった。
けれども、「分からない」と言った言葉は出てこなかった。不思議と何故か理解できた。多分、この黒いドームの中に入るとわかるようになるのだろうと考える。
『では、順に説明していく。〝悪霊行進〟とは、縦6マスと横6マスの合計36マスのボードと合計16体のコマを使ってゲームを行う。
まず、16体の駒を半分に分けた8体のコマが自身の持ち駒になる。内4体は赤色のマークがあり、残りは青色のマークをしている。
ボードには白単色の32マスとボードの四隅に青色のマスの中に白色の矢印が書かれているマスがある。駒の初期位置は、自身側から見て最も手前の4マスとその4マスに沿うようにしてその前列の4マスに駒を置かなければならない。
しかし、その中のどのマスにどのマークの駒を置くかはプレイヤー次第だ。例えばーー前列を赤色で並べ、後列を青色にするーーなどだ。各駒のマークは相手に見えないように置き、駒を進めていく』
「なるほどな......」
フーマンは即座に頭を動かし策を練り始める。どの配置が最もゲームを有利に運ぶことができるのか、安易に決めては負けてしまうと考える。しかし相手の手がわからなければ対策の練りようが無いことを悟り、脳を組み立てた仮想世界から現実へと戻す。
『次に操作説明だ。各プレイヤーは毎ターンに駒を一つだけ前後左右に1マスだけ移動させることができる。駒は必ずいずれかの場所へ移動させなければならない。
そして、これがゲームにおいて最も重要なことだが、自身の駒を相手の駒があるマスに移動すると相手の駒を取ることができる。取った駒は再度ゲームに使用することはできないい』
「ハハハァ‼︎ 相手の駒を取ると相手の情報が分かるってことかァ! だったら簡単だ、片っ端に取りまくりゃいい!」
『......いや、それだと場合によっては負ける』
「何ィ⁉︎」
「どういうことだ?」
『最後に勝利条件を説明する。勝利条件は全部で2つ。
①自身の青いマークの駒を一つでも相手の隅にある矢印マスからボード外へと出すこと
②相手の青いマークの駒4つ全てを取ること
③自身の赤いマークの駒4つ全てを取らせること
そして敗北条件も2つ
①相手に自分の隅から青いマークの駒を出されること
②相手の赤いマークの駒を全て取ること、だ
つまり、虚勢、騙し合い、駆け引きをし、思考時間でさえも有力な情報源になりうる中で、如何にして真偽を見極め自身の勝利へと導くことが重要だ。
ーー他に質問はあるか?』
「ない」
「ねェ」
まるで合唱のように息ぴったりと声が被る。
『わかった。ゲームを始める前に相手に対して自身の望みを教えてくれ。本来ならゲームの前にすることだが忘れていた』
「俺様は絶対服従だ! 俺様の犬になれ!」
『わかった。フーマンお前も望みを言うことができるがどうする?』
「……その願いの範疇を超えて望むことはできるのか?」
『勿論だ。ただし、先ほどルールブックで確認したと思うが、身体に関わることだけは望むことはできない』
「……なるほど。ーーでは、私はお前がこのゲームでこれまで勝ってきた勝利数を貰おう」
「な⁉︎ ハハハァ! 調子に乗るなよ、クソガキが!」
「いいのだろう?」
フーマンは切島の煽りを完全に無視をする。そして、壱の方へと目を向けると質問を投げかける。
『ああ、承った。もう一つ、伝えなければならないことがある。フーマンよ、初めてのゲームにより、お前の能力がアンロックされた。お前の能力はーー〝真偽の言霊〟だ』
「〝真偽の言霊〟……?」
『そうだ。お前のする質問1つに対して相手の答えの真偽がわかる。使用回数は1試合最大3回だ』
「ーーつまり、3つの質問に対して相手の答えの真偽がわかると言うことか?」
『そうだ』
「……なるほど、わかった」
「ハハハ……いい能力を引いたじゃねぇか! その能力で俺様に勝ってみろよ!」
「フッ、言われなくても勝ってやるよ」
まるで強い風が二人の間を通り抜けたかのように空気が一変する。そのせいか、二人にさっきのまるで授業を受けているかのような受講生の顔付きは見えない。真剣な表情をしている。それもそうだ。これから勝敗の分かれ目ともなりうる各駒の初期配置を決めなければならないのに到底楽観的にはいられないだろう。
『では、席について駒を好きなようにセットしろ。でき次第、試合を始める』
フーマンは椅子を少し後ろに引くとゆっくりと座る。一方切島は思いっきり椅子を引き、右横からドカッと音を立てながら思いっきり座る。大きな体をしているが故の行動なのか、その行動には大きな圧を感じられた。二人は席に着くと、駒に手を伸ばした。
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