少女は夢を見る
「あなたのことが好きでした、僕と付き合ってください!」
白い校舎は紅に染まり、グラウンドからは部活を終えた男女の声が響き渡る。
そんな喧騒の裏側で、相反するような静寂に包まれた世界。
校舎を挟んだだけでこんなにも空気が違うものなのかと、バカみたいに浮かれていた数秒前の自分。
喜べ、私。
考えていた限りで最高のシチュエーションに恵まれたぞ。
「……はい、こちらこそ……よろしく、お願いします」
校舎に負けずと頬を赤くしている自分が分かる。
人生で告白されたのは初めてで、その相手はこちらだけが一方的に知っていると思っていた、あのカッコイイ男の子。
心臓がうるさい。ドクン、ドクンと耳から脳に響いている。
外の喧騒はかき消されて、お互いの顔が近づいていく。
ああ、これが、私の初恋……!
「ハッ!!!」
ちゅんちゅんと、小鳥がさえずる音が聞こえる。
私は最近買ったお気に入りのミントグリーンのパジャマでベットの上にいた。
「……ん?」
慌ててベットから飛び降りて、窓のカーテンを全力全開で開ける。
と、そこから見えるのはいつもと変わらない青い空と、庭に生えている緑の葉をつけた紅葉の木。
「……んー、ふふふ、ふふーんふふ」
声が震えている。
笑おうとして失敗している。
「……いや、ねえ、そりゃ、ねえ」
いや、嘘でしょう?
だって、目に沁みるような紅色も、外の埃っぽい空気も思い出せる。
あの彼の声も、吐息も、五感で感じていた。
自分の鼓動の高鳴り、恥ずかしいのにずっと見つめ合っていたい、矛盾した気持ち、全てが鮮明に記憶に残っているのに。
いやぁ、嘘でしょう。
「……現実でしょう?」
夢でしょう。
初投稿です。
スマホ投稿で不備もあるかもしれませんが生暖かく見守ってください。