第95話 静音さんは『仲間』……なんだよな?
「(……あれ? そういえば静音さんはどうした? 普通こんなとき真っ先にオレを陥れようとするのに……)」
そう思い、静音さんの方をちらっとガン見してみる。
「…………」
静音さんは真剣な顔付きになりながら何かを考えているようだ。
左手で右肘を支えるように腕を組み、右手は握ぎりアゴ元に置かれ、「私今考えてますから、話かけるな!!」ってオーラが全身から滲み出ていた。
一瞬「オレを陥れる策でも考えているのか!?」とも勘繰ったが、どうも違うっぽい。
「静音さん?」
「…………」
そう声をかけてみたが、無視された。それはいつもの『嫌がらせの無視』ではなく、本当に声が聞こえていないような無視だった。
「…(んなに)…(くに?)…(んしょくが)…(じまっ)…(でも)…(まだ)……(じ)…(ん)…(されてるはず)……なのに」
何かをブツブツと口にしていたが、声があまりにも小さくよく聞き取れない。たぶん考えている事を意図せずに口に出しているのだろう。最後の「~なのに」しか聞き取れなかった。
オレはそんな静音さんの事が少し心配になり、意識があるのか飛んでんのか分からない彼女を起こすため、かける声を大きくして肩を揺さぶってみた。
「静音さん! 静音さんってば!! 静…」
すると「何か用ですか?」とオレを殺さんばかりの真っ直ぐで、まったく感情が篭もっていない目線を差し向けてきた。
「……音…さ……(ごくっ)」
まだセリフ途中にも関わらず、オレは言葉に詰まり息を飲み込んでしまう。その間にもずっと、静音さんとオレは目を合わせたままだった。それはまるで「彼女から目を逸らしたらすぐに殺されてしまう……」何故かそんな感情がオレの心を闇が広がるように支配していく。
するとカタカタッ、カタカタッ……。どこからともなくそんな音が聞こえてきた。別に音源を捜すわけではないが、ふと自分の足に目を向けると今にも崩れ落ちんばかりに膝が、そして足全体が小刻みに震えていた。
「(これはなんだ? 何で静音さんと目を合わせているだけで、オレはこんなに震えているんだ? 静音さんは『仲間』……なんだよな? もしかして『敵』じゃないよね?)」
オレの中で色んな感情が渦を巻きなが……
「うん? 二人ともどうしたんだ? そんな見つめ合ったりして? まさかフラグを立ててるのではあるまいな?」
「…………っ!? ごくっ……はぁはぁ……」
天音が声をかけてくれたおかげで、身動きが取れるようになる。まるで、俺だけ時間が止められていた呪縛から解放されたような感覚だった。
「二人とも???」
まったく反応しないオレ達に、天音は再び声をかけてくる。
「………………いえ、何でもありませんよ。…………ね、アナタ様?」
「(コクコクコク)」
オレはその静音さんの有無を言わさず、まったく感情が篭もってない言葉に同調するように、ただただ頷くことしかできなかった。
「(何なんだ今の静音さんは? まるで…………いや、そんなはずはないよな? 今はそのことを考えるのはよそう……)」
静音さんに対して考えようと思ったが、怖くなるので話を逸らすように口を開いた。
「し、静音さん! ここここ、この剣、『聖剣フラガラッハ』の『動力源』ってどこにあるか、わわ、分かるかな?」
先程の恐怖が未だ体の心に残り言葉を上手く言い出せず、何度も言い淀んでしまった。
言葉だけでなく、寒くも無いのに体まで小刻みに震えてしまう。
「………………あっ~はいはい。……もちろんですよアナタ様♪ なんせワタシはこの世界の管理人ですので♪」
少し間を置き、いつものように静音さんは軽い調子で喋りだした。この流れ・雰囲気を保つよう、オレも軽口をきく事にした。
「そ、そうだよ! 静音さんは『この世界の管理人』だったんだよね! し、しかも臨時のアルバイトなんだよねぇ~(笑)」
「アナタ様よく覚えてらっしゃいましたね! そうなのです! 作者の方から2円も時給を上げてもらい、今は……あっちゃんと聞いてから、驚いたリアクションとって下さいねアナタ様。ななな、なんと今現在は『時給960円』なのです!!」
静音さんは自分の時給を自慢げにしていた。
「(じ、『時給960円』だったのか。じゃあ元々は東京都の最低賃金『958円』だったって事なのか? 静音さん、守銭奴の割りに安く使われてやがるじゃねぇかよ……計算できねぇのかコイツ?)」
などと思っていると、
「おや、アナタ様。あまり驚いてらっしゃらないようですが……」
オレがまったくリアクションしないことに対して不満なのか、先程と同じように無機質な目の色へと変わり始めていた。
「(まままま、まさか、さっきと同じ事になるんじゃねぇよな!? そそそそ、それだけは阻止せねば!!)」
オレは何でも良いので、適当に喋りだすことにした。
「そ、そうなんだ!! すっげぇな静音さん! 作者から時給2円も上げてもらうなんてさ!! きっと作者も静音さんの実力を認めてるってことだよね! お、オレももし作者に会うことがあったら、静音さんの時給もっとあげてもらうよう頼むことにするよ!!」
「だから機嫌直してね」と言うように静音さんに媚びへつらう。
「えへへ~っ、アナタ様からそんなに褒められると照れちゃいますよぉ~♪ 実はですね……作者の方から『最近静音も頑張ってるから、また時給上げてやるから感謝しろよなっ!!』っと言われたばかりでして……あっこれはオフレコすので、他の出演者には内緒にして下さいよ」
「内緒ですからね♪」っと静音さんは照れつつも嬉しそうに、また時給が増える事を喜んでいた。
「(本文に載っている以上、オフレコなんてありえないんだけどなぁ。むしろオンレコ真っ盛りだよね?)」
本編全部をオフレコにしつつ、第96話へとつづく
※いとおかしい=あな嫁独自の語句。とても頭がおかしい様を指す。




