第91話 人にも物にも、それぞれの役割ってもんがあるものさ!!
「……そういえばさ、天音はどうした? メインヒロインのクセにまったく会話に参加してねえぞ! アイツ出番欲しくないのか???」
オレは最近出番が少ない天音先生を探すため店内を見回してみる。
少し離れた別の棚で天音を見つけることができた。どうやら天音は何かを熱心に見ているようだ。「何見てんだ?」っと思い背後から覗き込むと、手にはカラフルなフルーツが握られていた。
「ふんす! ふんす!」
「(……ごめん。何今の? 前の方から聞こえてきたんだけど、もしかして天音の鼻息なのか? 何この娘、ちょっとだけ興奮してるの?)」
そう思い声をかけるか迷っていると、
「……うん? おわっ!? ってなんだキミか。私に何か用なのか?」
天音は背後にいるオレに気付くと、フルーツを両手に持ったままクルっとターンをした。
「(いやだからさ、そのホラーゲームの動作は何なの? ヒロインの間で流行ってるの?)」
だが、あくまでも天音は冷静なままだった。じゃあ先程の鼻息は一体???
「あ~天音は何してるのかなぁ~っと思ってな。この店食べ物も売ってんのな! っと天音が手に持ってるのはフルーツ……マンゴーか?」
「いいい、いきなりなんだ!? キミいきなり下ネタを言うだなんて!!」
「…………はっ? し、下ネタ???」
ごめん。天音が何言ってるのかちょっと理解できねぇわ。……ほんとは理解してるけどね。
「い、今言っただろ!! ほら私が手に持っているフルーツの名前をだっ!!」
「…………」
(そ、そうきたかー。まさかそんなベタな振りされるとは思ってもいなかったぜ!! だからちょっとだけ興奮してたのか?)
どうやら天音はフルーツの『マンゴー』をエロい意味と勘違いしているようだ。おいおいマジかよ……。何ここからマンゴー談義とかしちゃう持ち回りなのかよ? オレは心底呆れながら天音に声をかける。
「天音……別にマンゴーはエロい意味じゃねぇぞ。むしろ読者からは、そんなのを考えちまう天音がむしろエロいと思われちまうぞ! エロ音だぞ! エロ音!!」
『読者目線』というワードを入れて、やんわりと天音を諭すことにした。
「そ、そうなのか!? うむむむむっ。……うーん。不本意だがキミの言うとおりかもしれないな! 作者の意向なら別に無視しても構わんが、さすがに読者の意見だけは無視できないな!」
「作者はいいのかよ……」
(そりゃ確かに読者の意見は大事だよ!! でもさ、だからと言って作者の意向無視するのも違うんじゃねぇのか? ……はっ!? だからメインヒロインである天音が、干され始めてんじゃあるまいな!?)
だが、いつまでもその事を考えていてもオレには仕方が無く、与り知らぬところなので本編シナリオのジャスミンへと声をかけた。
「ジャスミンわりぃな! せっかく説明してくれてたのに、みんなと話し込んじまってさ」
「うん? あぁ全然いいよいいよ。だってお兄さんにはお兄さんの都合があるんでしょ? ならボクが口を挟むわけにはいかないもん♪」
そうゆうとジャスミンは「全然気にしなくてもいいよ♪」と明るく笑いかけてくれた。
「え~っと、それでさっきはオレ達何の話をしてたんだっけ?」
いつもながらサイドエピソードがあまりにも存在感ありすぎで、一体何が本編かよく分からなくなっていた。……ほんとはそんなことを登場人物であるこのオレが言っちゃいけないことなんだけどね。
「確か魔法石に入る『魔力量』の説明が終わって、『相性』についてだったと思うよ♪」
見た目子供の割りにすっげぇ冷静な大人の対応をみせるジャスミン。もしかしたらこの娘は『あな嫁』唯一の良識人なのかもしれない。
「そうそう、そうだった! 魔力を注入しすぎると、暴発して最悪爆発を引き起こしちまうんだろ? で、相性ってのは何なんだ? 『火』や『風』みたく魔法石に種類でもあんのか?」
「おっ! お兄さん鋭いね!! そうなんだよ!! まぁこれは当たり前の話だけど、火属性の魔法石に水属性の魔力を注入しちゃうと、相互作用で打ち消しあって効果がなくなったり、弱くなったりしちゃうんだよ」
っと、ジャスミンは棚に並べられていた魔法石を一つ手に取ると、オレに見せてくれた。
「ほら、これが『火属性』の魔法石なんだよ♪」
ジャスミンが見せてくれた魔法石は赤色をしていてとても綺麗だった。
「へぇ~真っ赤で綺麗な色してんだなぁ。こうして見てると、もしこれが『魔法石』って言われなかったら、ほんと宝飾品に使うただの綺麗な宝石にしか見えねぇもん!」
オレは手に取ると空中に掲げ中を透かして見た。すると魔法石の中へと光を通すと、液体なのに中で燃えているようにも見える。
「お兄さんお兄さん。ちなみにこうゆう風に首飾りとして加工されてる魔法石もあるんだよ♪」
商人なだけに自分の店の商品を説明するのが楽しいのか、ジャスミンは棚に綺麗に飾られていた首飾りをオレに見せてくれる。
「魔法石を加工した物まであるのか! ……こりゃまた綺麗だな」
紫・青・赤・緑など様々な色の種類の首飾りが棚一列に飾られていた。
「わぁ~お兄様! これはとても綺麗な装飾品ですわね!」
「うんうん♪」
男のオレでも綺麗で見入ってしまうのだ、女の子のましてやオレ達パーティの中で、一番の女子力代表の葵ちゃんならその綺麗さに魅入られても当然の事だろう。
またジャスミンも商品を褒めてもらい、頷きながら葵ちゃんを嬉しそうに見ていた。だがそこで疑問に思ったことがあるので、ジャスミンに質問してみることにした。
その質問とやらを今から考えつつ、第92話へとつづく




