第67話 キチガイと勘違いはよく似ている……
前回までのあらすじ!!
「お金が欲しいなら、ソイツをあたいに寄こせ!」お姉さんはそう言うと、オレを指差しながら指名してきた。
最悪お姉さんに下男扱いされるのか、または愛玩動物となっって夜のお相手までしまうのか? ……それもちょっといいかもしれないな♪ などとほくそ笑みつつオレは『童貞催促理論』を構築していた。
また他のヒロイン達の反対も大いに予想されたのだが「お金の為だから仕方がない……」っと渋々ながらに決定してしまったのだった……
「ほらっよ♪」
友好の証なのか、はたまた奴隷契約成立の調印式の簡略化なのか、アリッサは笑顔で右手を差し出し握手を求めてきた。
それに応えるよう、オレもこれからの事を考えると照れながらに右手を差し出し握手をしようとする。……するのだったが、
スカーッ。
「あ、あれーっ???」
握手を想定していたオレの右手は空を切り、酸素と二酸化酸素また水素などが大半を占める混合物、つまりは『空気』と握手をする形になってしまう。
「(えっ? えっ? なんでなんで???)」
そんな戸惑いも束の間、突如としてオレの胸元から赤く短い一本の腕が伸びてきて、アリッサと握手をしていた。
「これからよろしくな、お嬢ちゃん♪」
「もきゅ~っ」
そうアリッサが握手をした相手とは、それは天音達に食われまいと、オレの胸に必死にしがみついていたもきゅ子だったのだ。
そんなオレの戸惑いを他所に、悲しそうな鳴き声をあげながらアリッサと握手をしていた。
『アリッサが言っていたソイツとは、まさに『もきゅ子』を指していたのだった!!』
オレは所在なさ気な右手を差し出したまま、固まってしまう。どうやらすべてはオレの1人勘違い祭りだったようだ。
自宅でやるクリスマス会に友達を誘ったのに誰一人として来ず、1人寂しく頭に赤い三角帽子を乗っけ、しょんぼりとしながら1人クラッカーを鳴らし、火が点いてないロウソクが刺さったままのショートケーキを食べてる野球少年。
……オレの状況と心情は今まさにそんな感じだった。
「(これだよこれ。あな嫁名物、主人公と読者の期待を大いに裏切る作者の策略!! もう言葉のマジックが巧みすぎるだろっ!!)」
もはや1文字足りとも気が抜けないオレが「またかよ……」っと嘆いていると、
「んっ? なんだいアンタ? 右手なんか差し出したりして???」
更にアリッサの何気ない言葉も追い討ちをかけてくる。
「あ、いやその……」
オレは言葉に詰まってしまう。
「どうしたんだキミ。右手なんか出して?」
「お兄様ぁ~?」
「もきゅ~?」
天音達までここぞとばかりに追い込みをかけてくる。もはやオレのHPは赤表示され『1』になっていた。
そんな瀕死寸前のオレに対して空気読めるけど……あえて読まない! 大本命のあの人の心無い言葉が最後に心を抉りにかかった。
「ニヨニヨ~。おやアナタ様、右手を差し出して……どうかなさったのですか? もしかしてもしかしてアナタ様が選ばれてると思っていたのですか? さすがにそんなこと思ってませんよねぇ~(笑)」
ワザとらしい事この上ない。しかもあまりにも鋭利にして的確で急所を突くクソメイドのセリフ。
もはやオレのHPはもはや『0』どころか、マイナスを更新しまくっていた。
「もきゅ~っ」
そんなオレを慰めるようにもきゅ子が服を掴んできた。
「もきゅ子どうかしたのか?」
「ふるふる」
そして「あれを見て」というように、もきゅ子はアリッサを指していた。
「ぐへへへ~っ。じゅるりっ」
もう描写することも困難なほどにアリッサはぐへっていた。たぶんもきゅ子との懇ろねにゃ~んな事を妄想しているに違いない。
もしかして……食べようとしてないよね? ま、ある意味では『食べる』で合っているのだが……。
「(うあ、あれはやべぇわ……)」
素でそんな事を思ってしまう。だが、このままでは『あな嫁』が獣姦モノになることを危惧して、再度もきゅ子に意思を確認することにした。
「もきゅ子どうする? オマエはあのお姉さん、アリッサのとこ行きたいか?」
オレはぐへってるアリッサを指差すと、既に答えは判ってたが念を押すように聞いてみた。
「もきゅもきゅ!!」
ものすっごく抵抗するように、オレの服に爪を立て嫌々するもきゅ子。
「(そうだよな……さすがに美人でもあの顔はないもんなぁ)」
是非とも読者にも見せたかったのだが、生憎とこのあな嫁には挿絵を描いてくれる人がいないため、文字表現のみでお送りすることにした。
だが、もきゅ子の気持ちが痛いほど解った。……まぁもきゅ子に爪立てられ肉に食い込んでいるから、文字通り痛いほどなのだが……。
オレはそんなもきゅ子のためにも意を決してアリッサに立ち向かう事にした!
「あの、アリッサ! 少し話があるんだけど……」
とりあえず下手に出てアリッサの様子を伺うことにした。
「うん? どうかしたのかい? ……もしかしてやっぱりやめる!! な~んて言わないよな?」
ギラリッ。アリッサはサーベルを手に取ると、刃でワザとらしく光を反射させて、有無を言わさぬ態度をとる。
「(やべっ下手なこと言ったら切り殺されんぞ!? こ、ここは慎重にせねば……)」
オレは頭をフル回転させるため、歌舞伎役者のようにぐるんぐるんっと頭を回す素振りをした。……いや、実際あんな回らないから『素振り』だけ、真似てみたのだ。
「……なにやってんだいアンタ?」
「…………」
アリッサに頭のおかしいヤツと思われてしまった。まぁオレがアリッサでも同じことを思うだろうがな。
基地の外で頭をフル回転させどう切り抜けるか考えつつ、お話は第68話へとつづく。




