第62話 リアルな重みはいかほど?
前回までのあらすじ!!
宿屋に泊まるにはお金がかかる。だが、オレ達の手持ちは仲間を復活させた為に寄付をして『0シルバー』つまり無一文になっていた。そこで擬人化したジズさんのアドバイスでお金を作る為、宿屋の反対側にあるお店に向かうのだった……
「こんにちわー!!」
カランカラン♪ 天音は開口一発元気に挨拶をしながら、ドアを開け放った。
「(天音さんほんとハイテンションだよね。あれは真似できねぇわ)」
そんな事を思ってしまいながらも一緒にお店の中へと入って行く。
<武器屋&防具屋『凶器と狂気が入り乱れる憩いの場:のんびり亭』>
「どこらへんが『のんびり亭』なんだよ。看板に偽りアリじゃねぇかよ……」
目の前に表示されたお店の名前にさえツッコミをしてしまう。悲しいけど、これも主人公としてのお勤めなのだろう。
……して周りを見渡すと、さすがは『武器屋&防具屋』と言うだけあって店の中には、剣や槍・鎧・盾などたくさんの武器や武具が所狭しと並べられており、まさに「いつでも戦争始められますぜダンナっ!!」っと言った感じだ。今考えると武器屋防具屋ってわりと一番最強なんじゃないだろうか?
「はぁ~っ。やっぱり武器屋&防具屋と言うだけあって、色んな剣や鎧なんかがたくさんあるんだなぁ~」
たくさんの武器に囲まれてちょっとだけ興奮してきた。「でも男の子ならこんなの見せられたら、興奮するよね……」などと心の中で思い、近くにあった木枠囲われ飾られてる剣の1つを手に取ってみた。
「お、おっもっ!? リアルの剣ってこんな重いのかっ!?」
あまりの剣の重さから驚き、よろめいて落としそうになってしまう。
「うわっ、っとと!!」
何とかバランスをとって剣の落下を防いだ。
「あ、あぶねーっ! これ売り物なんだから傷でもつけたら大変だよな。金もねぇのに、破損とかマジで洒落になんねぇよ……」
あんまり武器に詳しいわけではないが、これはたぶん片手剣『ロングソード』と呼ばれる『洋剣』だと思う。RPG特に序盤などでは1番メジャーな武器の1つと言えるだろう。
「にしてもこれは……鞘も入れると軽く5キロくらいはあるかもしれないな。剣の真ん中に『溝』みたいなのが掘ってあって、少しは軽量化しているみたいだけど、これを片手で振ってドラゴンなんかのモンスターと戦うってのか?」
俺はちょっと解説を交えながら、他作品の主人公達をディスにかかる。
「ちょっと試しに……」
カチャ、スーーッ。持ち手部分を握り、剣身を鞘から引き抜くと僅かに金属特有の摩れる音と匂いがした。そして右の片手だけで剣を持ち上げると、敵がいるつもりで自分の肩から相手の頭目掛けて軽く振り抜いてみることにした。
ぶ、ん! 空気が切れる鈍い音がする。
「っとと……おいおいマジかよ」
ただ剣を振り抜く……たったそれだけの事で、剣自体の重さによって体ごともっていかれそうになってしまい、前のめりの姿勢になってしまう。
たぶん上半身よりも下半身、特に足腰の筋力、そして何よりつま先とそれを支える重心力が圧倒的に足りないのだろうな。だから剣の重さに耐え切れずバランスを崩してしまうのだ。
よく異世界に転移したラノベやゲームの主人公なんかが、初めての戦闘で剣を持ち「重いぃ~」とか言いつつ、敵に勝ってしまう!! な~んてシチュエーションは王道なのだろうが、生憎とこれはリアルであり空想の類ではないのだ。
とてもじゃないが『普通オブ普通』一般人のオレでは、何の修練もせずに自由に振りかざして戦うことは無理なように思える。そもそも片手どころか両手ですらしっかりと振り切れる自信がなかった。
現実と理想とのギャップ、そして何よりも自分の能力・不甲斐なさに、驚きとも落胆とも言えない複雑な表情をしていたんだと思う。
そんなオレを見兼ねてか、天音が明るく声をかけてくれた。
「ふふふっ。何だキミは? もしかして『剣』に興味があるのか?」
「あ、ああ。まぁオレも一応は男の子だしな。武器、特に『剣』って聞くと心が躍っちまうんだわ。それに普段『剣』なんかを手にする機会もなかなかないしな……」
ちょっとワクワク顔で天音がそう聞いてきた。
カチャリッ。オレはそう言いながら剣身を鞘へと収める。
「なんてゆうかこ~う、ただ剣身を鞘から引き抜いたり、収めたりする音を聞くだけでもちょっと楽しいんだよな。……変かなオレ?」
オレは恥ずかしげに左手で頬を掻く動作をして表情を誤魔化す。馬鹿にされるのかなぁ~っと思ったのだが、天音の反応は違っていた。
「いいや、そんなことはないさ。私は女であるが『勇者』なのだぞ。キミのその気持ちは良く理解できるさ」
天音は馬鹿にすることなく、そっと自分の腰に装着している剣に目を向けた。
「あっそういえば、天音は『聖剣フラガラッハ』を自由にブンブン振り回していたよな? やっぱり天音も剣の修練と言うか修行なんかしたのか?」
「いいや。私は『勇者』という設定だから、そんなものはする必要がないのさ。それが証拠に……っ!!」
天音はオレが右手に持っているロングソードを手に取ると、勢いよく鞘から引き抜くといとも簡単に操っていた。
「はっ!」
ブン!
「いやぁっ!! たぁーっ!!」
ブンブン!!
天音は空気が鮮やかに切れる良い音を出しながら自由自在に剣を振り、まるで演舞を披露するように華麗に舞っていた。
「すっげー」
そんな普通の感想しか言葉にできなかった。
天音は「勇者だから……」という設定だけで、オレが持つのもやっとだった剣を、まるで自分の体の一部のように変幻自在に操っていたからだ。
これが初めから才能を持ってるヤツとの才能の決定的な差なのか……っと嘆きつつ、お話は第63話へとつづく。
※溝=英語ではFuller。日本語では樋とも呼ばれている。剣身の中心部に縦溝を付けることにより、軽量化しつつも剛性を保つ利点があり、また血が流れる溝の役割もある。




