第61話 手持ちがねぇっす!!
前回までのあらすじ!!
宿屋と同じくらい大きいジズさんがどうやって入ったかと疑問に思ったが、どうやら擬人化して中に入ったらしい。何で宿屋の中で姿を元に戻したのかよくわからんが……
「まままま、まさか……ジズさんなんっすか?」
オレはそれを聞かずにはいられない。
「もちろんよ♪ それともまだ疑ってるの? ふぅ~っ♡」
「あっひゃっ!? なななな、何するんですかジズさん!! そんないきなり耳に息吹きかけるとか!?」
ジズさんはオレに寄り添い、胸を押し付けながら左耳に息を吹きかけてきた。
「キミ……随分とお楽しみのようだ、なっ!」
「いたた、痛いって天音っ!? 耳引っ張らるなよ!!」
天音は「なっ!」に合わせてオレの耳を引き千切らんばかりに、強く引っ張っていた。
「あらあらそっちのお嬢さんはヤキモチかしらぁ~?」
「ちちちち、違うぞ!! 私はあくまでも婚約者と言う立場からだな……」
「いや、天音お嬢様。それをヤキモチと言うのですが……」
珍しく静音さんがツッコミをしていたが、テンパってる天音には聞こえていないようだ。オレはどうにか耳のダメージから立ち直り、ジズさんに話かけた。
「ジズさんって実は『女』だったんですね。喋り方も全然違うし」
「あらあら、ワタシが女だと困るのかしらぁ~? (ちらっ)まぁこちらの姿は言わば仮初めなの。ま、早い話『理性的な精神部分』を具現化した存在。そう考えてちょうだい♪」
ジズさんは指で胸元の服を引っ掛け、胸の谷間を強調しながらそう答えた。
「(このあな嫁でお色気お姉さんとか、予想外なんですけどーっ!!)」
オレは年上お姉さんの登場に心の中ではしゃぎつつ、天音達がいる立場上冷静さを保つように、質問を続けた。
「ちなみにドラゴンってみんな擬人化できるんですか? 例えばこのもきゅ子とかも……」
「もきゅっ?」
名前を呼ばれ、オレの腕の中にいるもきゅ子が「呼んだ?」みたいな顔をしていた。
「基本的には出来るわね。でもお姫様はまだまだ子供だから、もう少し大人にならないと無理ね」
「あっそうなんですか……」
「あらあら残念そうな顔しちゃって♪ もしかして、お姫様もワタシのような容姿だったら~、な~んて考えちゃってるのかしら?」
「いえいえいえいえ。そんなことは!!」
オレは全力で否定するが、もしももきゅ子がこんなジズさんのようにバインバインのお姉さんになったら……っとイケない(ある意味ではイケちゃう)妄想をしてしまう。
「なんだったら……あ・な・たが無理矢理ウチのお姫様を大人にしちゃう? ってのも全然アリよねぇ~♪」
「いや、さすがに無理矢理ってのはちょっと……」
「もきゅーっ?」
オレは抱き抱えてるもきゅ子に目を移すと、つぶらで純粋な二つの瞳がオレを見つめていた。
この純粋で穢れ無きもきゅ子をオレが……。
「いっそのことこのまま……っていかんいかん!! オレは何を考えてるんだ!?」
オレは雑念を振り払うように、首を振り欲望を断ち切り、物語を進める。
「そそそ、そんなことよりも!! オレ達宿屋に泊まりたいんです!!」
「……逃げたわね」
「キミ……誤魔化したな」
「お兄様……誤魔化しましたわね」
「アナタ様……露骨に話逸らしましたね」
「もきゅもきゅ」
オレは強引に物語を進めたのだが、全員見逃してくれなかった。
だが、大人のジズさんは空気を読んで話を進めてくれる。
「こほんっ。……ところでお兄さん達お金はちゃんと持ってるの? 泊まりなら1人につき5シルバー、ご休憩なら3シルバーかかるわよ」
「あっ!?」
「……もしかして持ってないの???」
宿屋に泊まるには金がかかる事をオレはすっかり忘れていたのだ。
そもそも天音と葵ちゃんを復活させる為に静音さんに寄付しちゃったから手持ちは0シルバーだ。
「そ、そっすよね。宿屋が無料なわけないですもんね」
「はぁ~っ。まったくもう~……それなら反対側の『道具屋』か『武器屋』あたりで、売れそうな持ち物を売ってお金に換えるしかないわよ」
ジズさんは呆れながらも、ちゃんとアドバイスをくれた。
「うむ。そうゆうことならとりあえず、道具屋あたりにでも行ってみることにしよう!!」
勇者天音の号令&先導の元、オレ達は道を挟んで反対側にあるお店に行くことにした。
ディルティン♪ ディルティン♪ ディルティンティン♪
「な、何この音???」
この音はどこからぁ~~~っ!? っと思っていると、オレの後ろにいた静音さんがこの音を口ずさんでいたのだ。
「……何してるの静音さん?」
「うぇっ!? ああ……この音ですか? 街中ですので、BGMを奏でてました」
「……制作費削減目的で?」
「……はい。制作費削減目的です」
毎度思うけど、そもそも小説にその意識は必要なのか!? あと静音さんちょっとしょんぼりしてんじゃねぇかよ。嫌々やってるのか!?
などと無粋なことは口にしないで、天音の後に続いて行った。
「(た、たぶん意味があるんだろうしね……)」
悲しげにディルティン♪ っと口ずさみつつ、お話は第62話へとつづく。




