第6話 新米……義理の妹、始めました!
ジィ~……前回までのあらすじ!!
静音さんことクソメイドから優しさが1/4の薬『鎮痛薬イヴリン』を渡され、そのお薬に癒やしを求めるためさっそく噛み砕いたのだが、その薬はなんと『ラピッドDPDタブレット型ESPA錠(プールなどで残留塩素を測る検査薬)』だったのだ! なんてモノを飲ませてくれるんだクソメイドが!! ……ってかさオレへの扱いがあまりにも酷すぎんだろが!!
ジィ~、ジィ~……で、現在のこの状況に至るわけなのだよ。
「とってもしゃわしゅわですね! 天音お嬢様♪」
「ああ!! 指がすっごいしゅわしゅわだな♪ この感触はなんだかクセになるよな、静音♪」
指先に伝わるしゅわしゅわ感がえらく気に入ったのか、オレはもう5分くらい口に指を2本も突っ込まれて動けない。普通なら美少女二人に、口に指をダブルで突っ込まれてたら思春期男子なら嬉しいだろうが、オレはまったく嬉しくないからなっ! もしこんなことされて嬉しいと思う人がいたら…………そんなドM根性は捨ててしまえ!
ジィ~、ジィ~、ジィ~、ジィ~。オレはそんな状況に嫌気が差し必死に抵抗を口にしようとするのだが、
「もがっ! もががっ!!」
「口にモノを含みながら喋るなんて、キミはマナーがなってないぞ!」
「そうだー! そうだー!」
口に指を2本も入れられた状況では抗議することもできない。
「まったく、困った奴だ。私にはキミの口に指を突っ込む権利があるんだぞ! 何故なら…私はキミの婚約者だからなっ!!(ドヤッ)」
「そうだー! そうだー!(キリッ)」
「(人の口に指を突っ込むのは重度のマナー違反なんじゃないのかYo!? Hey You!)」
……ってかそこの諸悪の大魔王も、その安っぽい運動家の取り巻きモドキのマネはやめとけ……本物に勧誘されんぞ!
「(あと舌の先っちょを人差し指の先で優しく撫で撫でするのはやめてくれ。……な、なんだか変な気分になるだろうが(照))」
「アナタ様は、今まさに『突っ込まれ系男子』って感じですよね(笑)」
何だか嬉しそうにする静音さん。このドSメイドめっ!!
ジィ~、ジィ~、ジィ~、ジィ~、ジィ~。
「もがっ!」
(ま、まずい! これは非常にまずい状況だ。このままだとこの第6話は下手すりゃ、指突っ込まれたまま終わってしまう!? な~んてことも十二分にありえる事態だぞ!)
オレはこの危機を脱するべく、口の中の指2本を軽く甘噛みしてしまう。
「「いたっ!?」」
「まったくもう、いきなり噛む奴があるか!」
「まったくですよ。まさに飼い犬に手を噛まれるとはこのことなのですね、天音お嬢様!」
「(いや、いきなり口に指を突っ込んでくる奴も大概だからな)」
二人揃っての同じ反応、そしてオレの口から指を離した。少し怒り気味だが、ちょっと嬉しそうにしてるのはなんでだよ? コイツらドM属性なのか???
ジィ~、ジィ~、ジィ~、ジィ~、ジィ~、ジィ~。
「……ってかさっきから『ジィ~、ジィ~』ってこの音はなんなのさ! 効果音の癖にあらすじすら凌駕すんじゃねぇよ!」
オレは音がする方向である、ちょうど真後ろをバッっと振り返った。……すると、
「ジィ~……っ!? 壁ささっ」
「(……何か居たね。あの娘なに? 何でハンディカメラ持ってこっちを撮ってたの? あの娘がこの物語のあらすじさえも凌駕してんのか?)」
「うん? さっきのはもしかして……葵か?」
「あ~……どうやらそうみたいですね」
誰その『葵』って。ま~たコイツらの関係者?
「葵! そんな所に隠れてないで出て来い!」
「(ぶんぶん)」
何か手を振ってるな。さしずめ「私にはおかまいなく」ってところか?
「いいから早くこっちに来るんだ葵っ!!」
「葵お嬢様。どうぞこちらへ……」
天音はもどかしさからか、イライラと怒り気味になっていた。対照的に静音さんはその葵という名の娘に優しく語りかける。
「ワタクシ………お邪魔じゃありませんか? 静音……天音お姉様」
そんな声がすると、恐ろ恐ろといった感じで、下駄箱の陰からその娘が出てきた。
「えっ!? 天音がなんで!? でも天音はこっちに……いるよな? ……っているね。…ってことはこっちの下駄箱の影にいるのは別人ってことか???」
そこには天音にそっくりのとんでもない美少女がいたのだ。まさに鏡に映したような、もはや言葉では言い表せないほどにその娘と天音は似ていたのだ。
ただ1つだけ違いを挙げるとすれば、それは髪の色だけだった。天音はメインヒロインの証である真紅の赤色の長い髪に対し、葵と呼ばれた少女は白く長い白髪にも見えた。また時折太陽の光を反射し、銀色に輝いても見えた。
「え~っと、その娘は……天音の妹さんなのか?」
「ああ……葵は私の自慢の妹のなのだぞ! 少し人見知りするが、カワイイ奴でなぁ~。この前なんか……」
っと、いきなり天音の妹自慢話が始まってしまった。このように天音が自慢話をするときは、大抵長話になるので、読者諸君は覚悟しておいてくれよな!
「葵お嬢様は……天音お嬢様の双子の妹さんなんです。昔から病弱で人と接する機会があまりなく、話すのが……特に男性に対しては苦手のようでして……(ちらっ)」
「(確かに妹さん、今も少し小刻みに体を震わせているな。もしかして怖がらせちまったのかな?)」
そんな説明をしてくれる静音さんは、天音の双子の妹だという『葵』と呼ばれた少女を盗み見た。オレは勇気を振り絞り、その絞りたて新生な勇気で声をかけてみることにした。
「……あ、あのオレは!」
「(ビ~クッ!?)ささっ」
「こら! 私の妹をいじめるなっ!!」
「いきなり大きな声を出さないでくださいっ!」
オレの声に驚いたのか、天音の妹さんはまた下駄箱の陰へと戻ってしまった。天音の双子の妹に声をかけただけで、二人にものすっごい怒られてしまう。
「ご、ごめん! 妹さんを驚かすつもりはなかったんだ。オレはただ……」
「……わ、ワタクシのことなら大丈夫ですわ! お、お、お、お兄様」
「(お、お兄様? ……誰が!? この娘は誰に声をかけているのだろうか?)」
後ろに誰かいるのか? っとオレは後ろを振り返ったが誰もいなかったのだ。
「えっと……『お兄様』って誰のことかな? まさかオレのことじゃないよね? あははははっ……」
「いや、キミのことだろ」
「いえ、アナタ様のことを呼んでるんでしょ」
「(あっ、うん。なんとなくオレのことだろうなぁ~とは理解してたんだけどね)」
オレは笑って誤魔化そうとしたのだが、普段ボケ役の天音とメイドに普通にツッコミを入れられてしまった。そしてお兄様と呼んでくれるその妹さんのその真意を訊ねてみる。
「な、なんでオレのことをお兄様と呼ぶのかな。妹さんは……」
「だ、だってお兄様は天音お姉様の婚約者さんなんですよね? だったら将来ワタクシとお兄様は義理の兄妹になりますし。それに……」
「(うん。めっちゃ気が早いねこの娘さん。オレなんか今日の朝聞いたばかりなんだぞ。そもそも何で天音の妹さんがもうそのことを知ってんだよ!?)」
「既成事実というやつだな! さすが私の妹だ! あ~っははははは~っ」
何か知らないけど、テンション高めに高笑いする天音さん。あとたぶんその既成事実の言葉使い間違えてんぞ!
『だがオレは、可憐な美処女にお兄様と呼ばれてしまい、内心ではほくそ笑んだのは言うまでもない事実だったのだ! ……ドヤ』
「(おいそこのクソメイド! オレの中の奥底に潜む心情を勝手に声に出すんじゃねぇよ。……まぁほぼ合ってはいるけどね。あとその『美処女』のボケには絶対突っ込んでやらねぇからな!)」
「あの……お兄様ぁ?」
葵ちゃんが可愛気にオレのことを見上げている。
「(やべぇ、こんなカワイイ娘に『お兄様』だってよ、どうするよおい!)」
『ここで選択肢さんが乱入しました! どれか選んでくださいね♪』
『いいから黙ってオレをお兄様と呼べ!』既に呼んでおります
『とりあえず…この場で押し倒す』待て待て早まるな! 天音達がいるんだぞ!
『オレのことはご主人様と呼びやがれ! このメス豚風情がっ!』 ←これだ!
(『これだ!』じゃねぇよ! R15指定からR18にランクアップさせる気なのかよ! ほんとはしゃぎすぎだぞオマエら。ここはオレが無難な選択肢を……)
「……ああいいよ。オレも『葵ちゃん」って呼ぶけどさ、それでいいかな?」
あくまで自然に笑いながら、妹(予定)の葵ちゃんの名前を呼んでみた。
「は、はい(照)」
「(チクショー可愛いな葵ちゃんは!! いや、もちろん天音や静音さんも負けず劣らずの美少女だが、葵ちゃんからはなんてゆうか癒やしのオーラ感が溢れ出しているんだよね。特にその大きなお胸様から。それに奥ゆかしい感じでまさに『THE妹』って感じなのだ。……まぁ義理なんだけどね)」
「こらキミっ! 私の大切な妹に手を出すんじゃないぞ!」
「いたたた! いってぇよ! 耳ちぎれんだろうがっ!」
……姉である天音様はお怒りになられ、オレの右耳を引き千切れんばかりに引っ張ったのだ。そうでなくても朝の爆音で耳やられてんだから、少しは加減しろよ。ったく。
「で、葵お嬢様はなんで下駄箱の陰に隠れてたんですか?」
「あ、あの……それはそのぉ~……(照れ照れ)」
静音さんが葵ちゃんに何故隠れていたのかを質問したのだったが、当の葵ちゃん本人は言葉を濁し、顔を覆い隠すように顔の前で何度も指をくっつけたり、離したりしていた。
「そうだよ! 確かさ、ハンディカメラか何かでオレたちのこと撮ってなかったか?」
「はうぅぅぅっ」
図星だったのか、葵ちゃんは困り気味にあぅあぅしている。
『やっぱりとりあえず、彼女を押し倒しますか?』
『はい』か『イエス』で答えましょ……、
「(だからどんな選択肢なんだよ。あと選択肢出すタイミングな! ただいまオレはいきなり乱入してくる選択肢さんに対する、『傾向と対策』を絶賛募集中です! なお採用された方にはもれなく、オレのパンツをプレ……)」
「葵……そ、それはもしかして『IN START2』の真似なのか!?」
「あ~っ!」
「あぅあぅ」
『オレの読者に対する要望はコイツらに消失されてしまったようだ!』
「『IN START2』? 何だそれ? 聞いたことねぇけど、映画か何かなのか? そういや最近、映画自体見てねぇや……」
「『IN START2』ってのは、4月末に発売されたばかりのサイコホラーゲームのことだな!」
「あっそうなのか。……お嬢様もホラーゲームとかするんだね」
天音や葵ちゃんのような日本を代表するようなお嬢様が、庶民の代表格であるゲームなどするとは夢にも思わず驚いてしまった。
<ここで説明しよう!>
『IN START2』とは、ジャーナリズム精神溢れるリー・サン夫婦がイースター島に向かう途中に、原因不明の飛行機事故で命からがら無人島にたどり着いてしまうお話なのだ。だが、無人島には謎のオカルタ集団がいて、妻のジェーン・サンは連れ去られてしまう。主人公であるリーさんは落ちていたハンディカメラ片手に暗闇の村にたどり着き、妻の行方を捜すことになってしまう。
また村には妻の居場所を記した謎のカルタ、通称『謎カルタ』が散りばめられており、村人たちと時にカルタで勝負したり、時に村人に追いかけられながら途中怪我をして、その際足だろうが頭を怪我をしようが右腕のみに包帯を巻いて治療をし、やっとこさ連れ去られた妻を捜すことになる。妻を捜す最中村の秘密や妻の過去を知ることになるのだが、そこには驚くべき事実が隠されていたのだった……。
……といった今絶賛大人気中の一人称視点のサイコホラーゲームなのだ。ちなみに日本開発でしかも日本だけの販売にも関らず『パッケージ・音声・字幕・メニュー画面表示』に至るまで全部英語表記の鬼畜仕様である。海外のレビューでは「やっぱり日本人はクレイジーだね!」と何故か好評なホラーゲームなのだ!
「あっ静音さん、ゲームの説明終わった?」
(本編中及び、読者の方々にこんなこと言っていいのかわかんないけどさぁ。この物語の作者って、ほんとサイドエピソード《小ネタ》に力入れすぎだと思うんだわ。全然本編の物語が進まねぇ進まねぇ。いい加減読んでる読者からクレーム来んぞ!)
オレ達は静音さんがゲームの説明が終わるのを下駄箱の隅っこの方で、ずっと待ちぼうけていたのだ。そして何故かオレはこの物語の行く末を心配してしまう。
カチャン、カチャン、ピッ♪
「天音お姉様。バッテリーの交換が終わりましたわ」
「おお~っ! 何かそれも『IN START2』っぽい感じの効果音で、なんかイイよな♪」
「(もう『IN START2』の話はええっちゅうに! こちとら小説なんですよ! アンタらも少しはそれを自覚しやがれよな!!)」
ハンディカメラのバッテリー交換1つにも何故か喜びの表情を見せる双子のお嬢様共。「ほんと誰かこの話に収拾をつけてくれよ……」っと呆れ顔をしてしまう。
「あっ、もうこの第6話は行数が足りませんね。次も『IN START2』の話で盛り上がりましょうか♪」
「(ま、まだ説明したりないのかよ!? 静音さん……あと行数って言うな、行数って!)」
そんな静音の物言いに対し、オレは心の中でツッコミつつも苦笑いをしてしまう。
「なんでしたら第7話も前作『IN START 1』のお話を……」
「そ、それだけは止めてくれ! そろそろ本気でこの物語のストーリーを進めないとまずいからさ!! じゃないと、そろそろ本気で読者からクレーム来ちまうだろうがっ!」
「「え~っ」」
オレの正論ツッコミに対して、物凄く嫌そうなハモりを披露する天音(お嬢様)と静音さん(付き人のクソメイド)。……ってかもう1人のお嬢様の葵ちゃんはどこ行ったんだよ?
カチャン、カチャン、ピッピッ♪
「ふぁぁ~♪」
「うん、バッテリー交換にまったくの余念がないよね!」
よく見ると葵ちゃんは嬉しそうな顔をしながら、まだバッテリー交換の練習をしていたのだ! オレはその葵ちゃんの天然さに感服しつつあった。
次回予告:オレに義理の妹が増え、また心の負担も大幅に増え、胃に穴がたくさん開きそれでも本編を進めたい! それだけの思いで第7話を書きたい今日この頃。
ってかいつになったら主人公の名前出てくるの?
野生のお嫁さん候補(お嬢様)の野生っぷりまで…………残り『72009文字』
※真紅の赤色=強調するためで誤字ではない