第56話 アナタ様、これがあな嫁版『復活の儀式』なのですよ!!
前回までのあらすじ!!
2人復活させるには20シルバーが必要だ。だが、オレ達の手元には10シルバーしかなく本来なら半分……つまり2人の内1人しか生き返らせることができない。けれどもあの守銭奴で有名な静音さんが2人共生き返らせてくれるらしい。
その手にはモーニングスターを持って……だ。
ビューンビューン。前話から静音さんはモーニングスターをぶん回していた。オレはその現実から逃避するため、「あっこれってば、応用すれば風力発電に役立つんじゃねぇ?』などと将来の再生エネルギーについて考え、今後の展開の衝撃に備えた。
「あっそ~れっ♪」
ブン……ドガンッ! その瞬間、凄く鈍い音がした。それもそのはず、モーニングスターは天音の棺の真ん中ら辺にその重たい身を委ねているのだから。
要するに天音の棺の真ん中に刺さっているわけなのだよ。
「さてと、お次は葵お嬢様の番ですね♪」
「きゅっ♪」
「ちょおまっ!?」
「待てよ!!」っと言いたかったが、静音さんはオレの『オマ国対応専用ゲーム仕様の反対デモ』っぽいモノを振り切りモーニングスターを引っ張る時の力、引っ張り応力を利用して、今度はそのままの勢いで葵ちゃんの棺目掛けてモーニングスターをぶん投げた。
「えいっ♪」
ドガッ! たぶん勢いが足りなかったのだろう、モーニングスター攻撃2回目はやや鈍い音を立て葵ちゃんの棺を押しつぶしていた。
「しししし、静音さんっ!! アンタ一体何してんのさ!? ああああ、天音と葵ちゃんの棺があぁっ!!!!」
オレは心構えが出来ていたつもりだったが、いざその光景を目の前にし、静音さんの暴挙に混乱し慌てふためいていた。
「へっ? 何をってこれはその……復活の儀式ですがね」
「きゅっきゅっ(コクコク)」
何食わぬ顔で静音さんともきゅ子は、あくまでもこれが『復活の儀式』だと言い張った。
「こんな儀式あるわけないでしょうがっ!! そもそも色々と違うでしょっ!!」
オレは間違いを正すべく、静音さんともきゅ子に対して怒りの抗議をした。
「(そもそもコイツら道外れすぎだよ! まぁ1匹はドラゴンだから仕方ないけど。死んでいるとは雇い主の棺を攻撃するだなんてさ……)」
「あっ、そ、そうですよね。アナタ様の言うとおり……ワタシが間違っておりました(しゅん)」
「もきゅ~(しゅん)」
静音さんともきゅ子は反省するようにしょんぼり顔をしていた。どうにかオレの言った事を理解してくれたようだ。……オレの心の声を勝手に読解してだけどな!!
「(反省してくれたのは良かったけど、そもそも『攻撃する』って発想が、かんなりおかしい行動なんだよなぁ~)」
だが、人間(ドラゴン含む)誰しも失敗の1つくらいはあるものだ。だからオレは諭しつつも静音さんを許そうと思った。
「まぁ。静音さんともきゅ子も反省したようだし……」
「そうですよね! ワタシ最初に『復活の呪文』を唱えるのを忘れておりました!! ねー♪」
「 きゅ~ぅ♪」
「……いやいや、なんでそうなるのさ! そもそもオレが指摘してるのはそこじゃなくて……」
まるでオレの言葉を無視するかのように静音さんが呪文を唱え始めた。
「ほぉ~ら~、天音お嬢様さっさと起きやがれ~です♪ 起きないと~ブチ殺しますよ~♪ だから起きてくださ~い♪ ほ~ら、今なら食べかけの焼き菓子もありますよぉ~」
「もきゅ~もきゅっ♪」
静音さんは『復活の呪文』とやらを唱え、もきゅ子も隣で「もきゅもきゅ」鳴きながら静音さんの真似事をしていた。
「(な~んか、どっかで聞いたことのあるようなフレーズだな。どこだろう……ってか『復活の呪文』なのに更に殺してどうするんだよ!? あとそれはもはや呪文じゃなくて、寝てるヤツを起こす文言じゃ……いや、これがほんとの死者の目覚めか!?)」
などとワケの分からんことを考えていた。
「うーん……不思議とお嬢様方が起きませんね。何故でしょう???」
「きゅ~っ。もきゅっ???」
静音さんともきゅ子はとても不思議そうな顔をしていた。
「(そりゃ起きるわけねぇだろうが!! そんなんで生き返ったら苦労はしねぇよ……)」
そして何を思ったか静音さんは次の行動に移した。
「……とりあえず、もう1度コレをブチ込みましょうか♪」
ジャラリッ。静音さんはそう言いながら、鎖の音を立ててモーニングスターに手を掛けた。
「まさかまさか……」
(こんなときオレの悪い予感とやらは良く当たるんだよなぁ)
オレは外れて欲しいと思いつつも「ああ、やっぱりかぁ~」っと呆れながらにその光景を見守るだけだった。
「ほ~ら天音お嬢様ぁ~♪」
ビューン……ドガッ!
「葵お嬢様ぁ~♪」
ヒューン……ドガガッ!
「さっさと起きやがれですよぉ~♪」
ドガッ! ドガッ!! 静音さんは笑顔ルンルン気分で、まるでムチを振るうようにモーニングスターの鉄球をバチコン! バチコン!! っと2つの棺に交互にぶち込みまくっていた。
その度に棺からは……血やらなんやらがドッパドバっと飛び散ってしまう。
オレはその光景をただ眺めていたのだがハッ! とし「さすがにやりすぎだろ!?」っと今更ながらに止めに入る。
「し、静音さん! そんなことをしても意味ないから、もう止めてくれ!!」
オレは必死に後ろから静音さんを羽交い絞めにした。
「へっ? ちょ、ちょっとアナタ様どこを触っているのですか!? それとこれはお嬢様方を復活させる『大切な儀式』なのですよ! 邪魔をしないで下さい!! 『アナタ様が復活させろ!』っと仰ったからしているのですよ!」
「いやほんともう止めてくれっ!! こんなことしたら生き返らせるどころか、死者を冒涜しまくてんだろうっ!?」
静音さんがとうとうイカれたのかと思い、全力で阻止する。
「もきゅ~っ(裾くいくい)」
「何だよもきゅ子!! 今静音さんを止めてるんだからオマエも邪魔すんな!! って、え゛ーっ!?」
あまりにももきゅ子が裾を引っ張るからそちらを向くと、なんとそこには……今まさに棺から這い出てこようとする天音と葵ちゃんの手が見えた。
ガタガタ、ガタガタ……。たぶん棺の蓋部分が破壊されて上手く開かないのだろう。血だらけの指がうにょうにょ、じたばた。と動きだし、今まさに這い出ようとしていたのだ。
「怖っ! 何この光景!? これってローファンだよね!? 何でホラーチックに早代わりしてんだよ!?」
「まま、細かいことは言わないのがこの『あな嫁』ですので」
「もきゅもきゅっ」
「(……こ、細かいか? ジャンルは結構重要なことなんだぞ)」
「ま、そんなことよりもそろそろ復活なさいますよ♪」
「マジかよ……マジで復活しちゃうの?」
一瞬「いいのかこれで?」と思ってしまうのだが、まさかまさか武器で攻撃して生き返るとか……どんなんだよ!?
「ふふふっ。アナタ様もこれには驚きのようですね。実はこの『モニスタ』はただの武器ではないのですよ。『生と死』を司ると言われる『伝説の武器』という後付け設定だったのです!」
「で、伝説の武器なの!? これが……」
オレにはただの『撲殺用の武器』にしか見えなかったのだが、実際この光景を目にしてしまえば、例えそれが後付け設定だったとしても納得せざろう得なかった。
「ムカツク相手にはこれで撲殺し、お金様を貰えればこれでぶん殴って復活させる。……なんとも世知辛い世の中ですよねー」
「……結局『金』なんっすか」
オレは『世の中』よりも、静音さんの考え方そのものが怖くなっていた。
「も、もきゅう! もきゅっもきゅっ!! (裾くいくい)」
「何だよもきゅ子!? またオレの裾を掴んで……ってあれ!?」
もきゅ子がまた裾を引っ張るからそちらの方を見ると、なんと棺が2つとも空になっていたのだ。「一体いつの間に???」そう思い教会内を見渡すと、
「あーーー」
「うーーー」
……あうあう言いながら、天音と葵ちゃんは両手を突き出しながら教会内をウロチョロしていたのだ。
「……あれは……何してんの?」
「……きっと生存本能のみで動いているのでしょうね」
「もきゅぅ?」
「あーーー」
「うーーー」
天音と葵ちゃんはこちらに気付いていないのか、明後日の方向へ進み歩いていた。
ヒロイン達が生存本能のみで教会内をウロチョロしつつ、お話は「第57話 復活の儀式inお真面目版」へとつづく




