第53話 いざ往《ゆ》かん……教会へっ!! そもそも行くのか、行かないのか問題。
前回までのあらすじ!!
オレは冥王ジズさんと取引をし、互いに都合の悪い事は黙っておくと約束をした。そしてジズさんがもきゅ子を連れて帰ろうとしたら、突然もきゅ子が「もきゅもきゅ」鳴き出しオレ達と共に旅をしたいと別れるのを拒んだ。困ったジズさんはオレにもきゅ子をどうするか問い、オレは覚悟を決めてこう叫んだのだった……
「オレは……オレはっ!! もきゅ子を一緒に連れて行…………かないっ!!」
「アナタ様~♪ ありがとうご……うえっ!?」
「もきゅ~っ♪ きゅきゅ~う……きゅっ!?」
「兄さん姫さんのことお頼みまっ……な、なんやて!?」
『作者&読者の方々>ついにもきゅ子が仲間に……ってマジかよ!?』
オレの言葉があまりにも予想外だったのか、1人プラス2匹のドラゴンは大層驚いていた。
そして何故だか、『』で見知らぬ誰かの心の声まで聞こえたような気がした。
「(ふふふっ、いつもいつもオレがオマエらの言うことばかりを聞くと思うなよっ!! さすがにこの答えには誰もが驚いたに違いあるまいっ!!)」
オレはみんなが驚く顔を見て、魔王ばりにしてやったりと悪い顔をしてニヨニヨしていたのだった
「……そうですか。アナタ様が決めたことなら……残念ですが仕方ないですね(しゅん)」
「……きゅ(しょんぼり)」
「兄さんが決めたことなら……ワテに異論はありませんわ(ふぅ~)」
『作者&読者の方々>残念だけど……しょうがないよね(はぁ~)』
オレ以外の全員が「はぁ~っ」っとため息交じりにしょんぼりとしながら、もきゅ子を連れて行かない事をとても残念ながらに納得していた。
「……あ、アレ??? み、みなさん……ご、ご納得のご様子なんですかね?」
オレは『もきゅ子を連れていかない』というボケに対して、みんなから総ツッコミされ「おいおい……」という感じを期待していたのだったが、意外にも思惑が外れてしまい『もきゅ子を仲間にしない』雰囲気になってしまった。
「あ、あの……じ、冗談だよ。冗談なんだよ……みんな……」
「もきゅ子……元気でいてくださいね。ぐすっ(泣)」
「きゅ~っきゅ~っ(うるうる)」
「姫さん……出逢いがあれば別れもあるんですわ。きっとそれが姫さんを大人にしてくれるんですわ……」
『作者&読者>もきゅ子……必ずまたこの『あな嫁』に出てこいよっ!! 楽しみに待ってるからなっ!!』
みんながもきゅ子との別れを惜しむ中、オレの「冗談だよ……」という言葉はかき消されてしまっていた。
「(……ま、まずくない? このままだとほんと~にマズイよね?)」
オレはこのまま『もきゅ子を仲間にしない』を選択してしまうと、読者から大量のクレームとブクマ外しが横行してしまうと思い慌てて訂正をする。
「さ、さっきのは嘘だよ!! 全部嘘っ!! もきゅ子を仲間として連れてくよ♪ もちオールオッケーなん…」
そこでオレの言葉を……いや時間ごと停止してしまう。何故ならみんなすっげぇ睨み、今にもオレを殺さんばかりの殺気に満ち溢れていたからだ。
「アナタ様……嘘……ついたのですか? (ダダンッ!!)」
静音さんはモーニングスターを地面に叩きつけ、
「きゅーっ!! (爪)」
もきゅ子は鋭い爪をシャッシャッ! っと素振りをし、
「あんさん……嘘はあきまへんよ……」
ジズさんは大きな口を開け、その鋭い牙でオレを捕食しようと大量の唾液を周囲に撒き散らしながら、
『作者&読者の方々>マジでさ、コイツどうする? 殺っちゃう? よし殺ろう! すぐ殺ろう! 証拠を残さず殺ろう♪』
っと証拠を残さないよう画策する作者&読者の方々は各々自分の武器を手に持っていた。
「あ、あ、あ、あ、あのー……」
オレは何の言葉を口にすればこの危機的状況を回避することができるか考えた。……考えたが、まったくこれっぽっちも思いつかなかった!! ドヤ
「(いやいや、説明文でドヤ顔決めてる場合じゃないよな。へ、下手すりゃ殺されても……)」
まさに一刻を争うこの状況っ!! だがそんなときである……
『みなさまお待ちくださいっ!! 主人公である彼を殺しても何の解決にもなりませんよ!! まずは落ち着いて冷静になって下さい!!』
なんと選択肢さんが突然乱入してオレの事を擁護し、助けてくれたのだ。
「おいおいマジかよ!? 選択肢さん助けてくれんの!?」
オレは期待に胸を熱くし、選択肢さんの言葉を今か今かと待ち望んでいた。
『そもそもこんな男を殺しても、ゴミを増やすだけなのですよ!! そもそもゴミには処分費というお金もかかりますし。それに彼、実は……』
「……」
選択肢さんの言葉はまだまだ続いていたのだが、生憎とオレの耳はそれを認識する聴力が拒否していた。たぶん自己防衛機能の一種なのだろう……。自分の心が傷つき壊れないよう、聞こえないフリをしたのだ。
『……しゃ』なのです! それではみなさま、これにてご納得していただけましたねっ!!』
長い長い選択肢さんのオレへのディスり祭りが終わると、オレを除く全員が「まぁ選択肢さんがそうゆうなら……」と謎の納得をし、どうにかこの場は収まったのだ。……オレの精神汚染と引き換えに、な。
「……で、さ。もきゅ子をオレ達の仲間として連れてくことでいいんだよね?」
オレは精神汚染の影響か、元気なく現状の確認をする為、声なき声で聞いてみた。
「ええ、そのように決まりましたよ♪」
「もきゅっ♪」
「ほな兄さん姫さんのこと……くれぐれも頼んますよぉ~♪」
そしてジズさんは「もうワテの出番は終わった! すべては作者の手の中ぁ~♪」と謎のフレーズを口ずさみながら、バサバサッ、バサバサッ。とその大きな翼を羽ばたかせ空へ飛んでいってしまったのだ。
「(オレ達を信用してくれるのはありがたいが……そんなんでいいのかよ護衛のジズさんよ!!)」
オレはもきゅ子の護衛であるジズが去った空を見てながら、そんな苦言を心の中で思っていた。
「もうさ、これでこの第52話は終わっていいんだよね? じゃあ、いつもどおり締めの言葉を……」
『いやいやいや、まだこの話のタイトル回収済んでませんからっ!!』
「……マジで?」
オレがこの第53話を締めようとすると、選択肢さんから待ったコールが宣言された。
『そうそう。そもそもまだ話が全然進んでませんよね? ま~た読者の方々から『くだらない件、くだくだ長すぎ~(笑)』とかクレーム来ちゃいますよ。それでもいいんですか!!』
「た、確かに……それはマズイよねっ!! そうじゃなくても、最近クオリティだだ落ちでヤバイってのに……」
オレはクレーム&ブクマ外しの恐怖から「このまま落ち込んでいる場合じゃないぞ!?」っとさっそく物語を進めようとした。
『そうですよ~。イチイチくだらないクレーム内容を考えて書く私の気持ちになって下さいよ』
「……選択肢が犯人だったのか!!」
『てへりっ☆』
「いや、そんな文字だけで『てへりっ☆』とかされても挿絵すらねぇから描写が分からねぇからさ。……ってかこれを読んだ人から『何々この『あな嫁』の感想欄ってヤラセなん?』とか逆にクレーム来ちまうだろうがっ!!」
「アナタ様さっきから誰と喋っておいでなのですか!? ほらさっさと天音お嬢様と葵お嬢様を復活させる為に教会へ行きますよ!!」
「きゅっ!」
静音さんともきゅ子は、文字だけで表示されてる選択肢を無視して「さっさと物語を進めやがれっ!!」と促してきていた。
「(お、オマエらさっきまで『選択肢さんが言うなら~』とか言ってたじゃねぇかよ……何で何もなかったように、しれっと物語進めようとしてんだよ……ったく)」
……とはこの物語の主人公であるオレが言えるわけもなく、心の中で文句を言い物語を進めるべく、一路教会へと向かおうと棺を引っ張ろうとしたのだったが……
「……いやいや、棺から色々とマズイものが出てやがるぞ!!」
ジズさんに追いかけられ木にぶつかり、落下した衝撃でそ、その……とても言いにくいのだが、天音と葵ちゃんの棺の中から手や足などがはみ出していたのだった。
「こ、これ……大丈夫なの???」
オレは「一応死んでいるとは言え、ヒロインがこんな事になっても良いものなのだろうか……」と、静音さんに尋ねてみた。
「あー大丈夫でしょ……。もう既に死んでますし(笑)。とりあえず中に適当に詰め込みますよ。ほらほらアナタ様も早く手伝って下さいな!!」
静音さんは葵ちゃんの手足を無理矢理棺の中へと押し込んでいた。
バキッ、ボキッ、グチャ……。静音さんの方からそんな音が延々してるのは……き、気のせいだよね? ね? オレはかな~り不安になったが、とりあえず天音の棺の元へ歩み寄り、静音さんの真似をして棺の中へと詰め込む事にした。
「ひ、ひぇ~、ってか怖っ!! オレ死体とか触ったことねぇんだよ。いきなりこれはハードル高すぎんだろうが……」
などと愚痴を言いつつも、詰め込み教育の如く天音の手足を棺の中へと強引に押し込んでいく。
「アナタ様っ!!」
「えっ? な、何か用なの静音さん???」
オレはいきなり静音さんから呼ばれて「もしや何かあったのか?」っと思ったのだったが、
「これは『死体』ではなく『遺体』ですからねっ!! あくまでも元ヒロインの成れの果てなのですから、どうかそこだけは決して間違えぬよう……」
「ひ、久々に聞いたねその豆知識……」
(随分前から思ってたけどさ、静音さんって天音達が死んでるとすっげぇディスりまくりだよね? なんでだ? 一応『雇い主』と『お世話係』って関係のはずだよな???)
……とは静音さんにミジンコたりとも言えず、オレはただ黙って『スーパーの袋詰め込み放題』のように棺の蓋が閉まらないほどパンパンにし(=たぶん棺の中で色んなモノが引っかかってるのが原因)、どうにか天音の棺の外に飛び出した手足を入れる事に成功したのだった。
「(少し棺が膨らんでいるのは見なかったことにしてくれよな二人共っ!!)」
「さ、さ~てと、なんか色々なことがあったけれども……いざ往かん! 仲間を助けるべくして教会へっ!!」
そう改めて宣言してからオレは再び人力でロープを引っ張りながら、トボトボと農道を歩いてゆくのだった……。
「アナタ様ぁ~、お嬢様方が腐敗する前にぃ~、さっさと引いて下さいよぉ~♪ あっ、もきゅ子も紅茶飲みますか?」
「もーきゅっ♪」
「あっもう~、ティーセットを丸ごと呑み込まないで下さいよぉ~♪ この焼き菓子と交換しましょ♪ ね♪」
「もきゅ~っ♪ 」
正しくはクソメイドと新しく仲間に入ったクソドラゴンが、天音の棺の上でお茶会を催している棺を引っ張って……だ。
「いざ往かん!」だと行くのか、行かないのか迷っちゃうよねぇ~……などと思いつつ、お話は第54話へとつづく




