第50話 こ、このままだとすべてが伏線になっちまうぞ!!
前回までのあらすじ!!
ドラゴンに追いかけられ命からがらようやく坂を登り、そしてサーフィンの要領で棺で坂を滑り降りたのだったが、何故か道の真ん中にはご丁寧にも直線に並んだ石が3つジャンプ台のように存在していた。
オレ達はその石を踏み台にし『コフィン・ストリーム・アタック』(棺の流れるままに)を決めつつ、空へ向かい『アイ・キャン・フライ♪』っとジャンプをしたのだった……
ヒューーーッン。
「たっか!! ガクガクブルブル」
「あれっ? アナタ様、高い所が苦手だったのですか?」
「きゅっ?」
静音さんはオレが震えているのを、高所恐怖症だと思っているようだ。
「ち、違うもんねっ!! お、オレはたたたた、高い所大好きだよぉー」
「アナタ様、体だけでなく声まで震えているのですが……」
「そうオレは高い所と怖い所が大好きだ!!」そんな強がりを見せるのだが『体』と『心』と『脳』がそれを拒否してるだけ。つまりは……『怖い』ってことだよっ!! 別にイイだろ。苦手なことの100や200あったとしても
そうしてオレ達はニュートン先生が発見したように重力の洗礼を受けることになる。まぁ空から落下して文字通り、この身をもって体験することによって、だっ!!
ヒューーン?
もはや飛んでいるシチュエーションの尺が長すぎて、マヌケな効果音にすら疑問符がついてしまうほどだった。
「やべぇ! やべぇぞこれはっ!? このままだと……死ぬ!?」
オレはそんな尺の長さをお構いなしに未だマイペースで状況を説明していた。空を飛んだ瞬間はハイテンションだったが、これから落下するという事を思い出して「こりゃ~、下手すると死ぬかもしれないなぁ~」そんな恐怖から混乱していたのだった。
っと、そのとき、である。
「アナタ様っ!!」
「し、静音さんっ!?」
いきなり静音さんから呼ばれ、「もしや静音さんがこの状況から助けてくれるのか!?」そう思いオレも静音さんの名前を呼んだのだったが、
「???」
「えっ静音さん!? 何で不思議そうな顔してるのさ!!」
「えっ!? いいえ、何もありませんが……ワタシに何かご用ですか???」
「いや、静音さんが最初にオレのこと呼んだんでしょうがっ!!」
「あっ、はい。そうですね……えーっとそれで???」
「いやいや、何でオレのこと呼んだのさ!? 何か打開策があったんじゃないの!?」
「いいえ、全然ございませんよ。ワタシはただアナタ様の事を呼んだだけですし……」
「こんなときにただ呼ぶんじゃねぇよ!!」
「アナタ様っ!!」
「な、なんだよ……いきなりそんな真剣な顔しちゃってさ……」
オレは静音さんの真剣な顔に少したじろいでしまう。。
「ワタシは……ワタシはっ!! お金なんて払いたくありませんよ!!」
「……な、何の話してんだよ!?」
「え゛っ゛? アナタ様が先程『ただ呼ぶんじゃねぇよ!!』っと仰ったではありませんか!! だからですよ!!」
「はあ~~っ!?」
(静音さんは一体何を言って……っ!?)
「って有料とか無料って意味の『ただ』じゃねぇんだよ!!」
「えぇー!?」
「もーきゅっ!?」
静音さんともきゅ子はこの状況下においても尚、同じようなリアクションで驚いていた。
「……ち、違うのですか!? ワタシはてっきり……」
「もきゅもきゅ……」
「オマエら……ちゃんと状況解かってんのかよ!?」
「あ~……ジャンプして今は落下の最中のようですね。……それが???」
「きゅぅっ?」
静音さんともきゅ子は不思議そうな顔で、「コイツ、今更何言ってやがんだ???」っと首を傾げていた。
「オレほんとオマエら大嫌いだわっ!!」
「アナタ様!! それより前を見てください!!」
「何なんだよ!! どーせ尺を長引かせる為に同じことの繰り返……」
ドガッ!? ヒューン……ドンッ!!
「アナタ様!! 目の前に木があって危険ですよ!!」
「……そ、そうゆうのはなるべく早く言ってよね……ガクリッ」
「(急急)アナタ様目の前に……」
「…………」
静音さんがまた早口でセリフを言っていたが、オレは木にぶつかった衝撃と更に落下した衝撃も加わり、もはやそのボケに対して突っ込む体力が残っていなかったのだ。
「もきゅもきゅ~っ(頭なでなで)」
「も、もきゅ子……(すんっ)お、オレのこと慰めてくれるのか!?」
もきゅ子はオレを哀れんだのか、悲しそうな鳴き声でオレの頭をなでなでしてくれていた。
「もきゅーっ!! (殴り)」
「……ってーな!! なんでいきなり殴るんだよ!!」
「もーきゅ!! もきゅっ!!」
「何言ってるか全然わからねぇよ!!」
もきゅ子が「もきゅもきゅ……」言って意味が分からないし、いきなり「修正してやる!」的に殴られたので更に意味が分からなかった。もしかしてDVに目覚めちゃった感じ?
「あーきっとワタシがせっかくボケたのに、ツッコミ役のアナタ様が役目を放棄したから、もきゅ子は怒ってるんでしょう。ねー♪」
「もーきゅっ♪」
「そのとおりだ!」と言わんばかりにもきゅ子は頷いていた。
「そんなの知らねぇよ!! もきゅ子はどんなポジションなんだよ!!」
「えっ? もきゅ子もあのドラゴンも坂も、そしてこの棺もすべては『コフィン・ストリーム・アタック』をする為のただのネタ要因なのですよ。アナタ様、もしかしてご存知なかったのですか!?」
「…………」
オレは静音さんの問いに答えなかった。仮にもしそれが本当だとしたら作者はそのネタを書きたいが為に葵ちゃんや天音を殺しし、尚且つ新キャラ登場させたり挿絵や名前まで考えたことになってしまうのだ。そんな冗談みたいなこと許されるのだろうか?
「ま、マジかよ……もうこのままだとすべてが作者の伏線ネタになっちまうだろうが……」
「あーそうですねー。そもそも、この『あな嫁』は『タイトルから内容』を考えたと言ってましたし。『プロット何それ? そんなん初めて聞いたわ~』などとこの前のたうち回っていましたよ」
「…………マジ?」
『もはや、作者を誰も止められるモノは存在しなかったのだ。何故なら読者クレームすらネタにしてしまうほど、この『あな嫁』は奇作になっていたのだ。……いや、そもそも最初からかもしれない!!』
「……静音さん。それは誰に言ってるの?」
「……さぁ誰でしょうね?」
「……きゅっ?」
「……がああっ?」
オレと静音さん、もきゅ子に何故か隣にいるドラゴンまで揃って首を傾げていた。
「……ってか話てる間にドラゴンに追いつかれてるんですけどっ!!」
ドラゴンに追いつかれすべてを伏線にしつつ、お話は第51話へとつづく




