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あな嫁~あなたの目の前に野生のお嫁さん候補(お嬢様)が現れた!!入力コマンドは!?……だがしかし、コントローラーにシカトされてしまったようだ。~  作者: 立花ユウキ/scarlet
第3章本編『そして、長い旅の始まり……』

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第40話 新魔王が二人誕生?

 前回までのあらすじ!!

 この世界はRPGをモチーフ(元ネタ)にしているため、人は死んでも復活できるらしい。

 じゃあ一体なんなんだよ……この茶番は!



「ほんと、そうだよなぁ~」


 オレはボケ~っとアホ面で呆けつつ、今回のあらすじの内容に賛同する。

 だが、いつまでもこのままだとお話が進まないので、ちゃんとした顔に戻し静音さんにこれからどうすればいいのか訪ねた。


「でさ、静音さん……。オレ達これからどうすればいいの?」

「まずは、教会へ行き天音葵両お嬢様方を復活させ、それから街で武器や防具・道具などを揃えて……とりあえず今日のところは『宿屋』で休みませんかね?」


 とりあえず死んだ二人を復活させ、お買い物をしながらウロチョロして宿屋で休もうぜ! と言うことらしい。また「それになんか色々あって疲れましたしね~」などと静音さんが呟きながら、休息を勧めてくれた。


「ソウダネ。オレモ、ソウオモウヨ、シズネサン」


 オレはもうどうでもよくなって棒読み……いやカタカナ表記でロボットっぽく受け流した。


「あっ、重大な事を忘れてました」


 そこで静音さんは何かに気付いたようだ。


「えっ? まだ何かあるの???」

「え~っと、確かに教会では死んだ人を復活させることができるのですが、……そのぉ~……」


 それは静音さんには珍しく、言い淀んでいた。


「もう何を言われても驚かないからさ、言っていいよ……」


 オレは覚悟を決め、静音さんに言葉を続けるよう促した。


「実はですね……復活させるには……シルバー(お金)がいるんですよ……」

「……プリーズイズマ二ー(・・・)?」


 オレは動揺から、『マネー』を『マニー』っと若干流暢(りゅうちょう)な発音で再度質問してしまう。


「はい。……あっ、イエス! イエス!!」


 そして「そうですそうです」とオレの適当な英語に合わせ返事を合わせ、そこいらのおじさんのように頷く静音さん。


「結局どこの世界でも金なのかよ……」


 オレは呆れとも諦めともとれる、現実の厳しさについてを呟いてしまう。


「まぁ結局はそれが世の中の摂理ですし、また人間社会の根本なのかもしれませんね~」


 静音さんもオレに賛同するように、やや諦め調のため息をついていた。


「あっ! と、ところでオレお金……この世界の共通通貨の『シルバー』? とかいうの1つも持ってないんだけどさ……大丈夫なの???」


 静音さんに巻き上げられたのは『日本円』だし、そもそもこの世界に来てから魔物を一匹すらも倒していないので1円……いや1シルバーもまだ稼いでいなかったのだ。

 早い話、この世界の通貨に関しては一文なしである。


「あ~……そ、それはマズイですねぇ~。どうしましょうか……あっ!」


 またもやそこで何かに気付いたように静音さんがリアクションをとった。


「えっ? 何かあったの??? もしかして静音さんがシルバー出してくれるとか?」


 オレは「静音さんの雇い主である天音と葵ちゃんの復活のためならば、いくら守銭奴の静音さんだって金を出してくれるかも……」っと若干の期待を込めたのだったが、


「はっ? 何でこのワタシが《お二人の為に金出さにゃきゃいけないんですか???」


 だがしかし、あっさりと否定されてしまった。


「(これだもんなぁ! こんな金に汚いヒロインって、今までにいたかよ!? あと素が出てんぞ、静音さん)」


 それでもなお俺は諦めてなるものかと思い、食い下がる。


「いや、ほら、緊急事態だしさ……もしかしたらぁ~っと期待したんだけどね。はははっ……」


 オレは静音さんの守銭奴ぶりに引くどころか、乾いた笑いをし、少し落ち込み気味になってしまった。


「そんな落ち込まないで下さいよ♪ 今気付いたのですが……」


 静音さんはオレのことを励まそうと先ほど気付いたであろうことを話し出した。


「(もしかして、教会の神父だかを脅しましょう♪ とか言い出さないだろうな?)」


 オレは不安になりながら、静音さんの言葉を待った。


「すっかり忘れていたのですが、王様に謁見した時に……こほんっ。『これから魔王を倒すのであろう。これは少ないが旅の足しにでもせよ……』っとお金を渡されてたんですよ。それに先程、農夫の家で天音お嬢様がへそくり(・・・・)の5シルバーを見つけてましたし……」


 静音さんは息を整えると王様(?)の真似をして、偉そうにオレに茶色い麻袋を手渡してきた。

挿絵(By みてみん)


 ……渡されたのだが、見た目とは裏腹に驚くほどすっげぇ軽かった。正直「コレ中身入ってるのか?」っと失礼ながらに思ってしまうほどに袋は軽かったのだ。


「と、とりあえず開けてみようか……」


 麻袋の口を紐解き、中を覗き込み確かめてみる。だがしかし、である。


「……入ってないくね?」


 真っ暗なせいなのか、はたまたオレの目がおかしいのか、袋の中には何も入っていなかった。


「し、静音さん。あのぉ~……これさ、中身まったく入ってないんだけど……」


 そう静音さんに聞くのだったが、


「うぇっ!? そ、そうなのですか!! 何だかヤケに軽すぎると思ってましたが……あんのクソデブめぇ~っ!! このワタシを騙しやがったんですね!! アナタ様! 魔王を倒した暁には、あのブタ野郎が住む城を襲撃しましょうね! これは何がなんでもですからね!! 例え誰か一人が欠けてもこれだけはやらねばなりません!」

「(静音さんの素が出まくって、すっげぇ怖いんだけど。あと魔王倒してから、王様襲撃すんなよ。それじゃあ『英雄』どころか、むしろ『新魔王』の誕生になっちまうじゃねぇかよ……)」


 オレは袋の下に穴でも開いてないかと、ひっくり返しバサバサッと音を立てて袋を振った。すると……、

 チャリン♪ っと何かがオレの足元に一枚だけ地面に落ち、反動で跳ね返りクルクルと回転するとやがて勢いがなくなったのか、パタリっと音もなく……それは横たわった。


「…………」

「…………」


 オレと静音さんは落ちたそれを無言で見つめていた。これがもし人と人だったら、恋物語でも始まるであろうが、如何せんそれはコインだったのだ。


「あのさ、静音さんに聞きたいんだけど……」


 オレは静音さんにそう問う。


「あっ、偶然ですね。ワタシもちょうどアナタ様にお聞きしたかったんですよ……」


 どうやら静音さんもオレと同じことを思っていたようだ。

 そうして、まるで示し合わせたように同じセリフを口にした。


「これはさ……どう見ても(ゴールド)じゃないよね? ……静音さん」

「これは……どこから見ても(ゴールド)ではないですよね? ……アナタ様」


 オレと静音さんの文字セリフの割合はシンクロ率52%とやや微妙だったが、言いたいことは同じだったようだ。


「オレには薄汚れた銀色に見えるんだけど……静音さんはどうかな?」

「ええ。……どう見ても金色どころか、くすんだ銀色のようですね……」

「ああ、良かった。どうやらオレの目がおかしくなってたわけじゃないんだね……」


 そしてオレはそのコインの額面を確認しようと、足元のコインを拾い上げた。


「……コインの表面には『5って書かれてるね」

「……ええ、ワタシの目にも『5』と見えますね」


 どうやら銀色の薄汚れたコイン、つまりこの世界の共通通貨であるこのシルバーの額面は『5』なのだ。5それは……その価値観は……


「……あのさ、静音さん。前にも聞いたけどさ、『5』ってどれくらいの価値なのかな? もしよかったらもう一度だけ説明してくれる?」


 オレはそれを覚えているのだが、これを読んでいる読者に知らしめる為、あえて静音さんへと説明を求めた。


「……ええいいですよ。5シルバーですと、そうですねぇ……回復小の効果を持つ『かいふく草』が1つだけ買えます。また『1人分の宿屋代』になりますね……」


 静音さんが前よりも、丁寧に説明してくれた。たぶんオレの意図を察してくれたんだろう。そうしてオレと静音さんは……


「……」

「……」


 二人揃って、またもや無言になってしまった。


 だが、口火を切るようにオレは言葉を口にした。


「あのさ、静音さん。オレちょうど今考えたんだけどさ……聞いてくれる?」

「ええ、もちろんですよ。ちょうどワタシも自分の考えを、アナタ様に言おうかと思ってましたし……」


 どうやら静音さんも同じことを考えていらっしゃったようだ。


「じゃあさ、とりあえず一緒に言ってみない?」

「なんだか答え合わせみたいでちょっとドキドキしますね!」

 

 オレと静音さんは遊びのつもりで、互いの考えたモノが一緒だったのか気になり答え合わせをすることにした。


「(すぅ~)」

「(すぅ~)」


 オレと静音さんは息を吸い込み、それに備えこう叫んだ!


「魔王を倒した暁には、あのブタ野郎が住む城を襲撃(・・)しようぜっ!!!!」

「魔王を倒した暁には、あのブタ野郎が住む城を襲撃(・・)しましょうねっ!!!!」


「……」

「……」


 答えはほとんど同じだった。オレと静音さんはその偶然……いや必然事項だったのかもしれないその答えに対して、きょとんっとした顔で互いの顔を見てしまっていた。


「……ぷくくっ……あっははははははっ」

「……くくくっ……あはははははははっ」


 そして互いに事前に示し合わせたわけではないのに、揃って同じ思考に辿り着いたことに両手で抑えて笑いが堪えらず、狂ったように笑っていた。それは他の人から見たら、まるで悪魔……いや『魔王』の姿に見えたかもしれない。


「……ふふっ。静音さん……同じだったな」

「……くくっ。アナタ様……同じでしたね」

「はぁ~あ~っ。……なんだかオレ達、初めて意気投合したかもしれないね!」

「……ですね!」


 笑い疲れ落ち着くと、冷静になりつつも互いに仲間を得られた高揚感でいっぱいになった。

 オレと静音さんの文字セリフのシンクロ率は89%以上となり、いつでも王様が住む城を襲撃する心構えは万全になっていた。



 こうして新魔王が二人誕生しつつ、お話は『第41話 やっぱり現実(リアル)はゲームのようにはいかないな……』へとつづく。


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