第200話 主人公の意外な正体とは!?
オレと静音さんはその大きな門を見上げ、互いに言葉を口にする。
「それが……オレがこの世界に来た門なのか?」
「ええ……ですが、今は別の世界へと繋がってますがね」
きっと静音さんはオレと同じような『新たな来訪者』を招くつもりなのか、もしくは『魔物』でも呼び寄せるつもりなのかもしれない。
門の中は真っ赤になっており、中を覗き込めば見知らぬ建物が見えたのだ。そこはオレが知る世界ではなかった。
カシャンカシャン。
「んっ? あれは……」
ふと空を見上げると、暗い空の中に光の輪に囲まれ鎖に繋がれた女性が浮いていたのだ。
容姿から察するに天使(?)いいや、あれはもしかして……。
「おや、アナタ様はアレが気になるのですか? くくくっ。まぁそうでしょうね~」
そうあれはオレを何度も生き返らせてくれた女神様に違いないっと、一目見た瞬間に確信した。
「……っ」
「おやおや~、アレを助け出さなくてよろしいのですか? アレは何度もアナタ様を生き返らせてくれた女神様『アルテミス』なのですよ~。いつものアナタ様ならば、もう叫んでる頃合ですよね?」
まるでオレの心を見透かしたかのように静音さんはオレを囃し立て挑発する。だがしかし、オレはその挑発には乗らなかった。
「どんな原理かは知らねぇけど……ほんとはアレも『静音さん』なんだろ?」
「ふふっ。アナタ様もようやく記憶を取り戻したんですね」
「ああ……おかげさまでな」
オレが皮肉を込めてそう言うと、静音さんはパチン♪ っと指鳴らしをする。
すると空中に居たはずの女神様が幻のように消え去ってしまう。
「ちなみにですが、どこで気付いたのですか? 仮にアナタ様が記憶を取り戻したとしても『記憶の連続』はしていないはずですよね?」
「それは……」
「ふん! 我が主様は聖剣フラガッハの真の主なのじゃぞ。そして主様はすべてを取り戻したのじゃ」
オレの言葉を遮るようにサタナキアが口を出す。
「ああ、やはりサナが原因でしたか。すべて……なのですか? ……相変わらず余計なことをするのですね。まったく」
やれやれと言った感じに静音さんは肩を竦めると、やや大げさに両手を広げ上げ仕方ないといった態度をとる。
「今になって思えば……静音さんにライブラを使った時に気付くべきだったよ。ライブラで役割を読み上げてる最中、ちゃんと『女神様:アナスタシアの声役』って言ってたもんな。それに説明役のお姉さんや選択肢さんの声なんかも全部全部アンタが一人でやってたんだろ?」
「あっ、ついにバレちゃいましたか? ええ、そうですよ。ワタシがしておりました」
静音さんはあっさりとオレの言葉を肯定してしまう。それは諦めからなのか、それとも……。
その真意を確かめるべく、言葉を続ける。
「静音さんは……どうしてオレを殺したり、逆に復活させたりしたんだ? それも何度も何度も……」
前に静音さんと問答をし同じ役割の場合、生存本能的にオレを殺そうとするのは理解できる。
だがしかし、それとは真逆に静音さんが復活させる意味が理解できなかったのだ。殺したのなら殺したでいい。
それでオレの物語は終わるはずなのだ。ならばオレの役割は違うはずなのだ。
そのことを不可解に思い、その確信を得るため質問したわけだった。
「そうですね……今アナタ様が考えていらっしゃるのが『普通』だと思いますよ。ですが、これには理由が……」
「ん? 理由が?」
静音さんはそれ以上何も語らなくなってしまった。
都合が悪いのか、はたまた作者の野郎めがただいまその理由を考え中なのか……。
「ま、まぁいいじゃないですか。そんな些細なことは……。それよりも、です!」
「さ、些細って……」
(まさかまさか、ほんとに作者が物語を考え中なの? おいおい冗談はやめろよ、もう物語も終盤なんだぜ。今からそれを考えてたら披露する場無くなっちまうぞ!)
静音さんは話を逸らすように強引に別の話題を振ってくる。
「アナタ様が記憶を取り戻した……。それならば、この世界を誰が作ったのか既にお分かりなのですよね?」
「ああ、そうだよ。記憶を取り戻す前のオレは、てっきり静音さんがこの世界を作ったものとばかり思ってたけどな。本当は……この物語の主人公の『オレ』が作ったんだろ? オレがもう一人の……『作者』なんだろ?」
魔女子さんが死ぬ間際言っていたオレの役割である『もう一人の……者』とは、この物語のを構成する『作者』を指す言葉だったのだ。
この物語の主人公でもあり、それと同時に『作者』でもあると結論付けたのだ。
普通の物語の主人公ならば『勇者』的ポジションなのだろうが、そうなってしまうとオレの言動に矛盾が出てきてしまう。
何故ならオレがこれを物語で、しかも最初から自分が主人公であると『認識』しているからである。
他にも色々言ってはいけないネタバレや執筆経過(文字数)などを認識し発言していたことなど、そうと思い当たる節がいくらでもあったのだ。
「……ついにその『答え』に辿り着いてしまったのですね。アナタ様にしては上出来ですよ。導けたご褒美に頭でも撫でて差し上げましょうか?」
「ああ、そうかよ。そりゃ~ありがとうよ。だがな、そんなのは御免被るぜ! ……あっ」
「あっ?」
オレは思わず口をついてしまった最後の言葉に「しまった!?」っと手に口を当ててしまう。
そんなオレの行動が不審なのか、静音さんは不思議そうに首を傾げていた。
「(……しまった!? 勢いに任せに断わっちまったぞ……い、今からでも訂正して、頭撫でてもらうことできねぇかな?)」
『な・ら・ば♪ ついに作者であるとのネタバラシ記念と私の最後のお仕事のためにも、ここいらで選択肢を表示させていただきますね♪』
『すべてを最初から始める』再び手抜きコピペの63万文字コース
『是正する』なんとなく字が似ている
『誤魔化すため、強引に物語を進める』これが1番です
「(最後の最後までまともな選択肢が1つも……いや、最後だけまともだったわ。何でだよ!? ボケるなら最後まで通せよな! とりあえず……)んっんー。……オレの役割だけじゃなく、あらすじにある『この物語は本編だけがすべてではない』とかも、ほんとはミスリードを誘ってたんだろ? 違うか?」
オレは息を整えると強引に話を戻すことにした。
「(今誤魔化しましたね。ですが相手は腐っても作者なので、とりあえずは話を合わせましょうかね……)ええ、そうですね。他にも色々とありますがね。ふふっ」
静音さんはやや馬鹿にするように不適な笑みをオレに差し向けていた。
第201話へつづく




