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第180話 目覚めの朝

 チュンチュン♪


「……もう朝になっちまったのかよ」


 あれから静音さんの事を探したのだったが、彼女の姿を見つけることはできなかった。

 そうしてオレは自分の部屋へと帰り、眠りについたのだが一切眠れずこうして朝を迎えてしまったのだ。


「頭いてぇ」

(二日酔いってこんななのか? ……いや、未成年だから酒とか飲んだことねぇけどさ)


 寝不足のせいか、まだ朝だというのにまた頭痛がしている。この世界に来てからと言うもの身体的にはもちろん、精神的にも疲れ果てていたのだ。


「あー! うー、っと!!」


 開いた両手で顔を覆い、上下に擦ると寝不足で疲れている目をマッサージをし、そのまま両手を上の方へと持って行き、そして後ろ手で髪を束ねるような動作をする。


 だが、生憎とオレの髪の毛はそんなには長くないので、手から髪の毛が零れゆく。そして胸元を張るような姿勢のまま大きく欠伸をすると、首を上下左右にゆっくりと回して自分の疲れを確認した。


 ゴキッ。


「あいたっ!? まったく眠れなかったせいか、ほんと完全に昨日の疲れが残ったままだわ。それに寝不足のせいか目元が超いてぇし、首や肩も変な音がするくらいコリ固まってやがるわ」


 そうして腕を交互に円を描く様に回すとようやく目が覚め、意識が覚醒してゆく。


「うん!」

(何だか今日は今までで1番やべぇ感じがヒシヒシと伝わってくるな。でも……もうやるしかねぇもんな!)


 目をぎゅっと瞑ってからパチリと音がするほど両目を見開くと、オレは意を決したように今日へと望むことにした。


 ふと隣を見れば既に同衾人のサタナキアさんの姿はどこにも見えなかった。

 けれども毛布が捲れており部屋から出て行った事だけは分かったが、肝心のどこに行ったのかまでは知る由も無い。まぁ必要になれば必ず姿を見せるだろう。何故だか根拠も一切無くそんな確信をしてしまう。。


「さて……まずは静音さんに会ってみるか!」


 昨日の言葉の意味と姿を消した理由を問いただすため、簡単に身支度を済ませベットをこれまた簡単に整えると部屋を出ることにした。


 カチャリッ。

 もはやテンプレートとも思えるドアの効果音が、オレを外の世界へと(いざな)う。


「静音さん起きてるかな?」


 まだ夜が開け、日が昇ったばかりだったが、既に眩しいほどの太陽の光が燦燦(さんさん)と降り注いでいた。先程夜から朝へと突然変わったばかりなので、きっとまだ早朝だと思われる。


「(そっか。昔のRPGの世界だと夜か朝かしか時間的概念がねぇもんなぁ。だから徐々にではなく、いきなり夜から朝へと変わったんだな)」


 そんなことを考えてしまったが、今のオレにはそんな時間的概念に(かま)けてる余裕は持ち合わせていない。


 そしてすぐさま静音さんともきゅ子がいる部屋へ行くと非常識ではあったが、ノックの挨拶なしにドアを開けた。


「も~きゅ~、も~きゅ~」

「やっぱり静音さんはいねぇのか」


 部屋の中を見渡せば2段ベットの内、下にいるもきゅ子しか部屋にはいなかった。もきゅ子はまだ寝ているのか、規則正しく「もきゅもきゅ」っと寝息を立てている。

 

「でも……一度はここに帰っては来たのかな?」


 部屋の中は昨夜もきゅ子を寝かしつけた時とは違い、ロウソクが消え窓が開け放たれていたのだ。もきゅ子ではさすがに窓までは背が届かないはずだ。だから誰か訪れていたと推測するできる。


 ソイツはもきゅ子が寝て、オレが去った後に誰かがこの部屋に来たのは間違いない。それもそんなに時間は経っていないだろう。夜に窓を開けてしまえば、ドラゴンの子供とはいえもきゅ子は凍死してしまう可能性があるから。


 オレはもきゅ子の寝顔を見てから何か手がかりはないかと上のベットの様子を窺ってみる。


「うーん……毛布とかはちゃんと整ってるな。体温も……残ってねぇ。これじゃ静音さんが居たのか、居ねぇのかどっちか分かんねぇな」


 ベットは使う前と同じようにちゃんと整理されており、静音さんが使ったとも使わなかったとも判断がつかない。


 一応念のため毛布を捲りシーツを触るとその感触を確かめ『熱』が残っていないのかの確認をする。部屋を出たばかりなら、シーツや毛布に体温が残っているはずなのだが、生憎と分からず仕舞い。


 ここで得られる情報はないと判断したオレはもう1度だけもきゅ子の顔を見て安心し、部屋を後にする。


「さてと、天音達はどうすっかな。いや、どうせアイツらじゃ何も分からねぇよな。とりあえず……下行くか」


 天音達に話を聞いてもどうせ寝ぼけてロクな情報は得られそうにもないと悟り、1階へ向かうことにした。


 タンタンタン♪

 昨夜のオドオドした足音とは違い、軽やかに階段を降りてゆく。同じ階段でも視界を得られるか、得られないかでこんなに気分が違うものなのか、っと驚いてしまう。


「(夜は真っ暗で足元見えなかっただけだもんね! 別に怖かったからゆっくりっと階段歩いてたわけじゃねぇからな! か、勘違いするんじゃねぇぞ!!)」


 っと謎の強がりツンデレを読者に披露しつつ、1階玄関ホールへと降り立つ。


「おはようございます! 兄さん、もうお目覚めなんですか! 朝が早いでんなぁ~♪」

「うわっ! ……って、なんだジズさんか!? ああ、おはよう」


 玄関ホールに足を踏み入れた瞬間、声をかけられ驚いてしまったが、誰と言うでもなくそれはこの宿屋の主ジズさんだったのだ。


「ふわあぁ~っ」


 ギシッ! ミシッ!!

 ジズさんはまだ眠いのか、大きな欠伸をすると器用にも目に爪を当てぬよう手の甲で擦っていた。

 だが、ジズさんの大きな体では手狭な宿屋の建物は少し動くだけでも不穏な音を奏でていた。


「(おいおい大丈夫なのかよ、この建物。すっげぇ壊れそうな音立ててるし、上から埃落ちまくりなんですけどね! あとジズさん……アンタずっと朝まで玄関ホール(ここ)に居たのかよ!? もはやそこが定位置(デフォルト)になっちまったのか!?)」


「もうジズさんこの建物から脱出できねぇんじゃねぇのか?」っと心配しつつも、静音さんについて尋ねてみることにした。



 第181話へつづく

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