第155話 気になる夢の内容……
「(……ここはどこだ? 何でこんな暗闇にオレはいるんだ?)」
『(あ……な……た様)』
「(んっ? 誰だよオレを呼んだのは?)」
『(よくも静……を!! お前は……者だ?)』
「(……これは天音の声……だよな?)」
『(しっかりしろ静音さん! い、今……)』
「(うん? 今度はオレの声だよな? ……何でオレの声が? あっ、そっか! これは『夢』なんだな、きっと!)」
『(ワ…シなら大丈…ですか…ね)』
『(でも! 血がこんなに出てるだろ!!)』
「(えっ? 血? 誰の? 静音さん……のか? 何でだ?)」
『(ふん! 傀…の分際でまだ喋れるようね!! これでトドメよ!!)』
『(ごふっ…………)』
『(し、静音さんっ!? う、嘘だろ!? なぁ静音さん!!)』
『(きゃはははっ。これで………ンの座は私のものよ!!)』
『(静音さん! 静音さんってば!! しずねさーんっ!!)』
オレが静音さんの名前を叫ぶと同時に、音無き衝撃波と光が視界を奪い去ってしまった。
「うわぁぁぁ眩しいっ!? 何なんだよ今のは!? ゆ、夢で……いいんだよな?」
(今のが夢にしては妙にリアルに感じたぞ! 本当にアレは夢……なんだよな?)
そこでオレは激しい動悸に襲われ、今見たものが『夢』であることを確認するように、周りを見渡した。
「「あっ……」」
ちょうどそこで、夢の中に出て来たあの人と目が合い、声が重なってしまう。
「あのさ……静音さん。そこで何してんの?」
オレはモーニングスターを手に持っているクソメイドへと声をかけてしまう。
「えっ? ああ……これですか? 実はモーニングコールならぬ、モーニングスターコールでアナタ様を起こしてさしあげようかな♪ っと思いまして……」
どうやら静音さんは今日も殺る気に満ち溢れているようだ。
「…………」
(やっぱりアレは夢だよ。だってさ、むしろオレが静音さんに殺されそうになってるんだもん。むしろ夢の中の配役はミスキャストにも程があるだろうがっ!!)
「あ、あの……アナタ様。どうかなさったのですか?」
返事をしないオレを心配して静音さんが声をかけてくれる。
「えっ? ああ……いや、その……う、上手い返しのツッコミを考えててさ。し、静音さん! モーニングスターコールだとオレを起こすどころか、永遠の眠りになっちゃうでしょが!!」
オレは動揺を誤魔化すように、そう切り返したのだったが……。
「……アナタ様。本当に大丈夫なんですか? お顔が悪いですよ。お水でも持って来ましょうか?」
静音さんに素で心配されてしまう。
オレはそんな心配を吹き飛ばすように、言葉を言い放った。
「も、も~う! 静音さんたらそんなこと言ってさ、水持ってきて『これで顔でも洗いやがれ!』って顔に水ぶっかけるつもりなんでしょ! ち、違う?」
動揺と焦りからたどたどしい言葉になってしまう。
「えっ? あ……はい。も、もちろんですよ!! あ、アナタ様のお顔が悪いのは今に始まったことではないので、不肖このワタクシめが水をぶっかけて差し上げますから、か、覚悟しておいてくださいよ!」
静音さんも一応はオレの先行ツッコミに話を合わせてくれた。
「…………」
「…………」
だが、二人とも無言になってしまう。
そんな沈黙を嫌って、オレは口を開いた。
「実はさ……今朝は変な夢を見たんだよ静音さん」
「……夢……ですか?」
静音さんはいつもとは違い、一切の茶化しを入れずオレの言葉に耳を傾けてくれていた。
「……どんな内容だったんですか?」
「う、ん。それがさ……」
(これは言った方がいいのかな? でも悪いことだから言わない方がいいかもしれないよな?)
オレは静音さんに対して、夢の内容を言うべきかどうか迷ってしまう。
「アナタ様?」
静音さんは不安そうな顔をしながら、オレが口を開くのを催促するように呼んだ。
「(やっぱり夢だったとしても言った方がいいのかな? 静音さんにも関係ある話だしな……)」
そう思い、オレはとりあえず静音さんに話してみる事にした。
「実はさ、夢の中で静音さんが……」
「……ワタシが? どうしたんですか?」
オレの夢だというのに、自分の名前が出てきて静音さんは不思議そうな顔をしていた。
そしてオレは意を決して、内容を伝えようとする。
「夢の中で静音さんが殺……」
「ううーん!! よく寝たのじゃ~♪ おや、小僧もう起きていたのかえ? それに……静音ではないか!? 何でお主がこの部屋にいるのじゃ? ま、まさか妾に朝駆けでもするつもりなのか!?」
タイミングの悪いことに、ちょうど隣で寝ていたサタナキアが起きてしまい、オレの言葉は有耶無耶になってしまった。
「うん? なんじゃ二人とも妾の顔を見おってからに? ……何かあったのかえ?」
サタナキアさんは何故自分が見られているのか分からずに、オレ達にそう聞いてきた。
「あ、いや、その……」
オレは急な事に対応できず、言葉が上手く出なかった。
「いえ、何にもありませんよ。朝食が出来たようなので、お二人を呼びに来ただけですのでね……」
静音さんはオレとは違い、何食わぬ顔でそう言い、先程のオレとのやり取りを無視するように「早く顔を洗って、酒場の方に来てくださいね!」っと言い残すと、さっさと部屋を出て行ってしまった。
残されたオレとサタナキアさんは、未だベットの上にいた。
「……もしやして、何かあったのか小僧よ?」
サタナキアさんは心配するようにそう聞いてきたが、オレは「いや、別に……」と歯切れ悪く言葉を返すと、それ以上は聞いて来ずに「ならば早く朝食を食べに行くぞ!!」と、オレを急かしつけるだけだった。
第156話へつづく