第151話 オチに継ぐオチと、シュールな絵の連続祭り!!
「ふぅ~。少し長湯しすぎたかな。残念だけど……そろそろオレも上がるとするかな」
オレはこれからの事を考えながらも、この混浴露天風呂に「誰か女の子でも入ってこないかなぁ~?」っと、湯に体を沈ませながらも目だけを出してワニ族の真似事をしていたのだが、女の子どころか男すら入ってくる者はいなかった。
仕方がないので、もう混浴を諦めて風呂から上がることにした。
ガラガラガラ~。
「(マジで誰も入って来なかったなぁ~。天音だけじゃなく、葵ちゃんや静音さんも先に風呂に入ってたのかな?)」
オレは脱衣所のドアを開けながら、そんなことを思い悩んでいた。……すると、
「おや兄さん、もう上がるんでっか? なんやなんや、お早いのでんな~。せっかくやから、一緒入りたかったんやけどなぁ~」
ドアを開けると、脱衣所の部屋いっぱいにジズさんが収められていたのだ。
「…………」
(ほんと、どうやって中に入ったんだよ!? 擬人化して中に入ってから解いたのか? 元に戻す意味が分かんねぇよ!!)
オレは考えるのを放棄し「そ、そうなんだ。ごゆっくり……」とジズさんに挨拶を交わして、急ぎ服を着て自分の部屋へと戻って行った。
「うっ! さ、寒っ!?」
部屋のドアを開けると、ひんやりとした冷たい空気が部屋の中と外とを交換するように流れ込み、ドア付近にいるオレの体温を奪う。
せっかく温泉で体の芯まで温めたのに、これでは体が冷えてしまうだろう。
「おっ! ロウソクが点けてあるぞ! もしかしてジズさんが点けてくれたのかな?」
先程まではテーブルの上に置かれたロウソクには、火は点けられていなかった。
ロウソク程度の火では、とても暖は取れない。だが代わりに灯りがある事により、先程までの暗かった気分が少しだけ紛らった感じがする。
「体が冷える前に寝るとするかな。……って、何で毛布が盛り上がってんだよ」
本格的に体を冷やす前にベットで寝ることにした。寝ようとしたのだったが、ベットにはまるで誰かがいるような毛布が謎の盛り上がりをしていたのだ。
毛布さん>「ワーワー♪ 今夜は寝ないで騒ぐぜぇ~♪ でも明日からは夜更かしなんかしないぜ~♪」
※絵はイメージです。実在する毛布とは何ら関係ございませんので。
「(いや、その盛り上がりって意味じゃねぇよ!! 何で今夜だけの限定的なんだよ!! 大晦日と元日を跨いで特別に起きてる子供なのかよ!? あと夜が3つも重ねがけであんぞ!!)」
オレは誰に言うでもなく、心の中でツッコミをしてしまう。
一瞬、天音達の誰かが「夜這いに!?」ないし「冷たいベットを温めてくれている!?」などと、ぬか喜びをしたのだが、どうやら違うようだ。
そしてその正体を確かめる為に腰に携えてる剣の持ち手部分に手を重ね、いつでも抜ける準備を整えると、そっとベットの中を覗き込むことにした。
「そろ~り、そろ~り……っと。……って、何でだよ!?」
そこで見た光景に思わずツッコミを入れてしまう。その盛り上がりを演出している正体とは……、
「ファ~ン♪ ファ~ン♪ ちょこあいすとやら、うまいのじゃ~♪」
そう。オレのベットに潜んでいたのは、なんと先程まで一緒に露天風呂で混浴をしていたサタナキアさんだったのだ!
「(おいコラクソ作者! おめえマジで馬鹿じゃねぇのかよ!! 何でここぞばかりにサタナキアさんをオチ担当に起用しまくってんだよ!! こんなにシュールな絵ばっかで、畳み掛けて来るんじゃねえよ!!)」
オレはオチに継ぐオチに苦言を称すると、ベットを占領していらっしゃるサタナキアさんを叩き起こす事にした。
「さ、サタナキアさん! 起きてくれよ! そこはオレのベットなんだぞ!!」
「むにゃむにゃ。もう……ちょこあいすは食べられんのじゃ~♪」
食べ物を口にするという、ベタな寝言でサタナキアさんは返事をしてきた。どうやら本格的に寝ている様子のようだ。
「(ふふっ。……あっ、いやいや。『本格的に寝ている様子のようだ』って本文表記に対して、思わず笑っちまっただろうが! そもそも剣が、魔神が、睡眠を欲するのかよ!?)」
このままでは埒が明かない。
だがしかし、暖房が一切ないこの部屋で毛布がなければ、オレは普通に凍死してしまうかもしれない。
だからと言って、寝ているサタナキアを外に放り出すわけにもいかなかった。だからオレは……サタナキアさんと一緒に寝る事を決断する。
「とりあえず、寝る場所を確保する為に少し退かさせてもらおうか。サタナキアさん、ちょっとごめんなぁ~。よっと……これでよしっ!」
真ん中で寝ているサタナキアさんを少しずらし、自分の寝る場所をどうにか確保する。
元々シングルベットほどの大きさなので、剣とはいえ二人で寝るにはやや狭いと感じてしまうが贅沢は言えない。
「……せまっ! 何でオレの部屋なのに、ベット上で不自由しないといけないんだよ!?」
(まぁ、別にいいんだけどさ。こんなこと……いつものことだもんね!)
贅沢は言えないが、代わりに苦情はいくらでも言える。
そして隣からは「ファ~ン♪ ファ~ン♪」っという音が寝言のように聞こえるだけで、誰もオレの苦情を受け付けてくれない。
ロウソクの明かりが部屋を照らし、また隣にサタナキアさんがいるせいか、風呂入りに行く前の暗く寂しい感じは不思議と感じることはなかった。
「もしかしたら、サタナキアさんはオレの寂しさを察してわざと……」そんなことを思いながら、おやすみっと誰に言うでもなく、寝る挨拶をすると深い眠りへとつくのだった……。
第152話へとつづく