第148話 漢《おとこ》なら『混浴』と言う2文字の前に、『撤退』なんて言葉は存在しない!!
前回までのあらすじ!!
風呂に癒しを求めたオレは場所を聞くためジズさんに尋ねた。
すると、この宿屋の風呂は露天風呂でしかも『混浴』のオマケ付きなそうな。更にはただいま女の子入浴中との情報も得てしまった今、「何故行かぬのか? いいや、行かねばならぬ漢ならばっ!!」精神で決意を持って風呂に向かうことにしたのだった……
「でもさ、ジズさん。もしかして『女の子が入ってる』ってのは嘘で、実は農夫のおっさんってそんなオチはないよね?」
今のいままで散々この物語で騙されてきたオレとしては、改めてジズさんに確認をする必要があったのだ。
「何をいうてますのんや兄さん! ワテがそんな嘘言いますかいな! 兄さん……それはホンマ心外ですんでっ!! れっきとした女の子が入浴中なんですわ!!」
ジズさんは自分が疑われたことに怒りを露にしていた。
「いや、ほんと疑ってごめんって! でもさ、オレ今まで散々騙されてきたんだよ。だから今回も……って気持ちがあってさ」
オレは心の内をジズさんに話すと疑ってしまった事を謝りながらも、更に質問を続けた。
「……ちなみになんだけどさ。その女の子って……まさかもきゅ子じゃないよね?」
何度となく作者の罠・策略に引っ掛けられたオレは、その可能性もあると勘繰ってしまったのだ。
何故ならジズさんは女の子とは言ったけれども、人間の……とは一切言っていないのだ。
今回の話はきっとそこが弱点だと思い、何度も突っ込んで質問をしているわけなのだ。
「……前にも言いましたけど、兄さん。そんなことしたら、もきゅパパに食い殺されますんで」
「はははっ。だ、だよね……」
オレとジズさんはもきゅパパのイメージ容姿を挿絵として挿入し、その姿に畏怖の念を懐き恐れ戦いてしまう。
その戦きようと言ったら、小野小町と同義と言ってももはや過言ではない。
「ほんとのほんーーとに、ただいま女の子が入浴中なんだよね!? 『クマ公が実は女の子でした(笑)』とか『水着着用の混浴施設』とか、そんなんじゃないんだよね? ね?」
「に、兄さん……どんだけ疑い深いんでっか? よっしゃ!! 兄さんがそこまでお疑いなら、ワテの名前『冥王ジズ』の名を懸けてもよろしいですわ! ほんまのほんま、正真正銘の女の子が今入浴してますわ!!」
ジズさんはオレの疑い深さに感歎としながらも、自らの名まで懸けてそう断言してくれたのだ。それならばもう行くしかないだろう。
それにもしこれが『罠』や『騙し』の類だったとしても、『混浴』の2文字を得てしまった今、誰がここから撤退できると言うのだ? それに「ゴミ箱を妊娠させる程の……」との異名を持つこのオレに『撤退』の2文字は存在しないのだ!!
「そういや、確か兄さんの知ってるヒトやったと思いますよ~」
「オレが知ってる人??? ……も、もしかして!?」
(そうオレが知ってる人と言えば天音達しかいないのだ! ま、マジかよ……本当にいいの? 彼女達と混合しちゃってもさ!? まぁ確かに彼女達はオレのお嫁さん候補なのだから、一緒に風呂に入っても何ら問題はないだろう……)
オレは格好良くも口を塞ぎ、考えるように右手を当てて考えるフリをしてしまう。
「ジズさん他に詳しい情報はないのか!! 頼む知ってたら教えてくれ!!」
そうしてオレは人生で初めて真剣に頼みごとをした。まぁそれが人ではなくドラゴンで、しかも入浴中の女の子の話だって事を除けば尚の事良かったのだろうがな。
「他に情報でっかぁ~? ……あっ! 確か酒場で兄さんと話してましたんで。それに確か口癖が……『妾』やったと思いますのんや」
ジズさんは断片的ではあるが、重要な情報を提供してくれた。
「オレと面識があって、酒場で話してて口癖が妾の女の子……か。……っ!?」
(そ、そんな人いたか? だってオレが声をかけたのは、ジャスミンの他に『仲間を集めていた時』に声をかけたくらいなもんだろ? その中で……っつ!? い、いた!! いたよいた!! 確かにそんな女の子がいたんだよ!!)
オレはようやく思い当たる節に辿り着いたのだ。
察しの良い読者さんは既にお気付きのことだろう。詳しくは『第145話』を見てくれよな!
……もうみんなログったかな? そうオレが辿り着いた答えとは……この女の子だったのだ!
みんなはあまり覚えていないかもしれないが、オレが各テーブルを回って仲間の勧誘をしていた時に「妾は次期魔王である!」っと、少しヤバメ発言が目立つ魔族のお姉さん。
「美人さんなのに、やべぇなこの人……」とか思っていたが、まさかまさかのアレがこの伏線だとは思ってもいなかったぜ!
それに彼女は魔族なのである。だからジズさんが『人間』と明言していなかった事にも頷ける。
「(お、おいおいマジかよ……。あ、あんな美人さんと一緒にお風呂に入ってもいいわけ? 後で読者からクレームとか来ない? いいや例えクレームが来ようとも、あんな美人さん(頭は残念)と一緒にキャキャウフフしながらお風呂に入れるならば覚悟のうえだ!!)」
そう早口で心の声をまとめると、オレはすぐさまその混浴が楽しめると言うお風呂場まで走って行った。
「あっ兄さん! ちょ、ちょっと待ちぃ~なぁっ!! ……ってワテが止める間もなく、走って風呂場の方へ行ってしもうたな。ホンマに良かったんやろうか……。兄さん。兄さんは忘れてるかもしれへんけど、この物語は『R15』なんでっせ。そこんところ気をつけなはれ」
光の速度よりかなり劣る疾風の如く、第149話へ向けて全力ダッシュtoダッシュ!!