第146話 寂しさの裏側に……
前回までのあらすじ!!
酒場の人達に「仲間になってくれないか?」っと誘い回ったオレ達だったが、結局システム上の仕様とか言う理由で、そもそも『仲間を増やせない』と静音さんに教えられたのだった……
「じゃあ、もうこの酒場で仲間を集めるのは止めにして……魔王の事や住む場所に関する情報収集をすればいいのかな?」
「そっちもどうせ適当にはぐらかされて終わるんだろうなぁ~」とは思いながらもオレは、静音さんに聞いてみることにした。
「あ~……いえ、魔王に関する情報収集はしなくても大丈夫かもしれませんね。ぶっちゃけ、このワタシがその魔王ですしね(笑)」
「…………」
(そ、それは一番言っちゃいけねぇセリフだぞ、静音さんや!! オレだって既に分かってるのにあえてスルーしてた事柄なのに、何でそんな事を天音達の前で平然と笑顔で仰るんでしょうかね、このクソメイドはさぁっ!!)
天音達の手前、オレはツッコミを入れたい気持ちをグッっと抑えてしまう。
「どうやら静音の口ぶりから察するに、既に魔王の居場所を掴んでいるようだな! ふむ。褒めてつかわすぞ!」
「さすがは静音ね! 偉いわぁ~♪」
「きゅ~きゅ~♪」
「いえいえ、それくらいメイドの嗜みですので、お嬢様方あまり褒めないでくださいよぉ~♪」
三馬鹿ヒロイン共に褒められ、静音さんは少し頬を赤らめ照れながらもオレの事を小突いてきやがった。
「…………」
(ごめん、読者のみんな。これは、言うまい言うまいっと思ってた事なんだけどさ。ひょっとしてこの物語に出てくるヒロイン達って……全員バカなの? もしくは話を聞いてるけど、ちゃんと脳が働いてないから理解してないの? だって天音なんか『静音の口ぶりから察するに~』とか言っちゃってるんだよ。なら言語も内容もしっかりと認識してるはずだろ? それなのに……)
だがしかし、オレには反論する余力も精神的余裕も無く、ただあるがままのその現実を受け入れるしかなかったのだ。
「それならばよし! 情報収集はこの辺にして……。もう疲れたから風呂にでも入って部屋で休息を取り、魔王討伐の為にも体を休めるべきだっと私は考えるが……みんなもそれでいいかな?」
その天音の号令一下、オレ達は各自の部屋へと戻り休む事となった。
「ふぅ~っ。何だか一人になると落ち着くというか、なんというか……」
オレはベットに腰を下ろすと、そう独り言を呟きながらシーツと部屋の凜とした澄んだ空気に対して、何故だか肌寒さと寂しさを覚え、言葉を噤んでしまう。
部屋に灯りが点いていないから余計にそう感じてしまうのかもしれない。
「…………」
ゴロリっと服のまま横になり、色々な事を考えてしまう。
天音達と出会ってからはずっと騒がしく、一人になる時間を求めていたのだったが、それを得た今、今度は逆に天音達の事を恋しがってしまっている自分がそこにはいたのだ。
このままでは孤独に押しつぶされてしまう……何故だかそんな感覚に陥りそうになる。
「あ~も~うっ!! 何でこんな時に変なBGMが聞こえてきて、いきなり朝にならねぇんだよ!? 無意味な時とかオレが望まない時には、やりやがるクセにさ!」
まるで狙い済ましたかのように、気がつくと朝にも変なBGMも聞こえては来なかった。
「ふぅ~」
何度目か分からない溜息。
仰向けになり、頭の後ろに両手を挟み込み、ただただ虚ろな意識のまま木で出来た天井を眺めてしまう。
「……天音達、どうしてるのかなぁ~」
ふいにそう呟いてしまい、「しまった!?」っと口を塞いでしまうのだが、傍には誰もいなく当たり前だがツッコミも何もなかった。
天音達のことだ、オレが部屋で待ってれば遊びに来てくれると勝手に思ってたが、誰も来ず当てが外れてしまった。
「……そういえば、前にもこんなことあったよなぁ~。あれは確か……天音達から告白された時だったよな……ははっ」
思えばその時も、今と置かれている状況は違うのだが、まったく同じ気持ちになっていたと思う。
オレは高校に入学する前、自分では『普通の日常生活』を望みながらも、心のどこかで『非日常な出来事』を心底望んでいたのだ。
頭も顔も性格もすべてが『普通』の自分。前に静音さんが言っていたが、『何ら面白みのない人生』っと表現していたが、実はそのとおりだったのだ。
そしてその後、天音が言っていた『死ぬときも普通にこの世を去る』……今でもその言葉が嫌に頭の中残り響いてしまい、頭から離れない。
きっとオレ自身もそれを自覚しているからだと思う。いや、気付いていながらも「オレの人生はまだ始まってもいないっ!!」っとか、希望的に思い込みたかっただけかもしれない。
そんな自分を変えてくれる……いや、自分を変えてくれるきっかけが欲しかったのかもしれない。
そうして高校の入学式の初日……そんなオレの前に現れてくれたのが天音達だったのだ……。
第147話へつづく