第145話 基本、酒場には変人達が集う場所!
「ふむ。どうやら全員食事は終わったようだな! せっかくこの酒場にはこんなに人がいるのだから、この場にいる人達に聞き込みをして情報収集するのはどうかな? どうだろう……キミの意見を聞かせてはくれないか?」
天音はオレの食事が終わったタイミングで、「時間を有意義に使おうではないか!」と提案してくれた。
「ああ。聞けばこの酒場だと『仲間になってくれる人』もいるらしいしな! それにオレ達、この世界には不慣れなんだから、話を聞くだけでもプラスになると思うから天音のその意見には賛成だわ」
オレは天音のその意見に賛同し、酒場にいる人達に話だけでも聞いてみることにした。あわよくば仲間を得られれば良いのだが。
だがオレはこの後、この世界の洗礼をまざまざと受けるのだった。
まず始めに近くにいた、いかにも強そうな豪腕でパンツ一枚の覆面とマントをした男に話かけることにした。
「ああっ!? 魔王を倒すから仲間になれだってぇ~?(笑) そもそもお前らレベルいくつなんだよ? イチィ~ッ!? お前ら馬鹿じゃねぇの? ととっと消えやがれ!」
っと詳しい話を聞いてもらう前に、まるで野良犬でも追い払うようにすぐさま断られてしまった。
次に話かけたのはバーカウンターで飲んでいた、これまたいかにも怪しそうな赤青二色の男達だった。
「ふっオレ達の名は『暗殺者A』と」
「『暗殺者B』だ」
「報酬次第では誰でも殺してやるぜ。……何仲間を探しているだけでオレ達には報酬は払えない? ならお前等に用はねぇな……」
っと、こちらもすぐさま断られてしまう。
「(声まで同じに揃えやがって、コイツら双子なのかよ? それとも単に(配色さんと声優さんの)手抜きなだけか? ってか、『暗殺者』って名乗っていいのかよ自称暗殺者さんよぉっ!?)」
オレはそのカラフルな双子に心の中でツッコミを入れつつ、別のテーブルの人に話かけることにした。
今度は何故か椅子に座らずにそこらで突っ立っていた、白と黒が際立つドレスを着た美人なお姉さんに声をかけることにした。
「ふははははっ。よいぞ、よいぞお主達っ!! 数ある魔族の中でも、この妾に声をかけるとはな! お主達見る目があるではないか! 実はな、ここだけの話妾は……次期魔王なのである! 妾と共に現魔王を倒そうではないか!!」
「…………ごめんなさい」
何かヤバそうなお姉さんだったので、オレの方から断りを入れてしまった。
「(ってか『次期魔王』が普通に人間の酒場に居ていいものなのかよ!? 何気に一緒に倒そうとか言われ心強いけどさ、それはさすがにダメすぎるだろうがっ!!)」
そして次に話かけたのは、いかにもオレ達のライバルらしきお食事中のお姉さん達に声をかけることにした。
「……間に合ってるわ」
女勇者らしきその女性は一言でそう切り捨てた。
「そうね……ごめんなさいね」
連れらしき隣にいた司祭さんも謝りながらも、丁寧に断りを入れてきた。
「(この人達が仲間になれば心強いかったんだけど、話をする隙すら与えてくれないもんなぁ~)」
その後も……
「……なら、血の契約をしてもらうわよ。当然私が『主』となり、貴方達は一生『奴隷』として扱うわよ。それでもいいなら契約してあげるわ」
とか高圧的に主従関係を求められたり、
「ごめんなさいね。既に他の仲間がいるのよ」
っと、既に決まった仲間がいる人には当然の如く断られてしまったり、
「ラララララ~♪」
「あ、あの……話、聞いてくれます?」
歌ばかり歌って、まったく話を聞いてくれない歌姫とか、
挙句の果てには、
「あ、あの……私でも仲間にしていただけるのですか? な、何でもしますからな、仲間に入れてください!!」
っと言うような非戦闘員のお嬢様に、逆に声をかけらたりもしてしまった。
「(このお嬢様、オレの超好みなんですけど! すっげぇ~仲間に入れたいんだけど、やっぱダメかな? えっ? この物語ではヒロイン枠が既に目一杯で入れない? おいおいマジかよ……)」
結局酒場を聞いて回ったのだったが、仲間になって共に戦ってくれる人は誰もいなかったのだ。
「はぁ~、結局誰も仲間になってくれなかったね静音さん」
オレは疲れ果て隣にいた静音さんにそう話かけた。
「まぁワタシ達既に4人(もきゅ子除く)いますから、システム上仲間にできる枠が無くて、そもそも誰に声かけても100%断られるんですけどね」
「静音さん…………あのさ、それ今言うことじゃないよ。そんな大事なことは最初に言いやがれよ……マジで、な」
第146話へつづく