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第143話 知識と工夫次第で食べ物は美味しくなる! その2

「へへ~っ、そのステーキにかかってるソースは、なんと言ってもボクお手製のオリジナルソースだからね! 材料は秘密だけど、すり潰した果物やナッツが入ってるんだよ♪ それにそれに焼いた仔牛のスネや骨で摂ったフォン・ド・ヴォー(フォン)っとね……」


挿絵(By みてみん)

 っとジャスミンは鼻の下を右人差し指で擦りながら、自信満々に早口でソースの中身をオレ達に教えてくれた。褒められたのが嬉しいのか、もきゅ子に食べされながらもソースの材料を次々と『秘密だよ♪』っと言いながらも続けて説明をしてくれている。


「(ジャスミンって何かカワイイよな! それに気が利くし優しいし料理もできてオマケに店の経営まで何でもできるしな! もしかしたら……ジャスミンが一番ヒロインっぽい(・・・・・・・)かもしれない)」


 オレはジャスミンが楽しそうに料理の説明してくれるのを頷きつつ、次のステーキに口を付ける。

挿絵(By みてみん)

「もむもむ……ごくん! う~ん!! やっぱこのステーキうめぇよな! んんーっ。っとと、せっかくだからスープとパンもいただくとするかな♪」


 美味しいとは言ってもさすがにステーキばかりでは無理があるのか、少し喉を詰まらせてしまい今度は一緒に持ってきてくれたスープを飲むことにした。


挿絵(By みてみん)

「(昼間食べた時のマズさを想像すると、ステーキの美味さが()がれるからほんとは遠慮したいんだけどなぁ~)」


 そう思いながらもジャスミンの目の前では本音は言えない。言えるわけがない。だってさ……、


「うにゃ? ニコニコ♪ (ちらっちらっ)」


 先程褒めたおかげか、ジャスミンは上機嫌で笑顔となりもきゅ子の世話をしつつも、常にオレの食べる動向をチラ見していたのだ。

 オレもジャスミンに(なら)って笑顔を見せ、木のスプーンを手に取りスープを口にする。


「(はぁ~……どうせ味が薄くて美味しくな……んんっ!?)な、なんだ!? さっきと同じ薄味なのに、今度はちゃんと旨み(・・)が感じられるぞ!?」


 そのスープは見た目も味も昼間食べたそれと同じなのだ。なのに今飲んでみると、野菜の甘味と塩の加減が絶妙にマッチしているように感じてしまう。


「えっ? こ、これって昼間と同じのだよな?」


 オレはスプーンで2口目をすくい、空中で手を静止したままジャスミンに聞いてみた。


「うにゃ? そうだよ。だって昼間の残りだもん」


 ジャスミンは何食わぬ顔で「何でそんなこと聞くの?」っと不思議そうな顔をしながら、もきゅ子の世話に戻った。


「(マジかよ……。昼間と同じなのに何で美味く感じるんだ???)」


 オレはその原因を探るべく、二口目に口を付けた。


「……うん。でもさっきほどではないな」


 二口目は何故か一口目よりも美味しくは感じなかったのだ。

 何でだろう……そう首を傾げながらも、再びステーキを口にしてからスープを飲んでみた。

 ……すると、


「ズズッ……んっ!? 今度はスープの味が強くなったぞ!? なん……いや、そうか!! 味と香りが強いステーキを食べてからスープを飲んだせいなのか!!」


 そうスープ単体ではただ野菜の甘味と薄い塩味しか感じられなかったのだが、スープを飲むその前に味の強いステーキを口にしていた違いがあった。


 肉の旨みと脂、そしてソースの強い味とフランベしたワインの香り、それらが余韻(よいん)として口の中に残したままスープを飲んだから、より美味しいと感じることができたのだ。

 もしこのスープがもっと塩味が強く、肉などが入っていたらこれほどの旨味の差は演出できないだろう。


「そうゆうことだったのか……これぞまさに『味の相乗効果』だな!」


 オレは自問自答で旨味の謎を解決をすると、今度はパンに手をつけることにした。

挿絵(By みてみん)

「うん? このパン……温かくて柔らかいぞ! いや、柔らかいだけでなく表面がパリッとしてるだと!? ジャスミン! これは焼きたてなのか? だからこんな柔らかいのか!?」


 手に持ったパンの感触は昼間のモノとは比べ物にならないほど柔らかく、そして何より温かかったのだ。


「もしかしたらオレ達の為にと、新たなにパンを焼いてくれたのかな?」そう思い聞いてみたのだが、


「ううん。それも昼間のと同じ4日前に焼いたパンだよ♪」


 ジャスミンは昼間のと同じと答えた。

 だがしかし、オレには到底同じパンには思えず「でも!!」っと反論の言葉を続けようとするのだったが、ジャスミンが先に口を開きそれを静止してしまう。


「実はね、このパンには……あるちょっとした工夫(・・)をしたんだよ♪」

「パンに工夫を? それだけであれだけ硬かったパンが、こんな柔らかでパリッとするもんなのか?」


 オレは不思議に思い、ジャスミンに説明の続きを促した。


「まず最初に、パンの縦真ん中にナイフで切り込みを入れてそこにバターを挟み込んでから、パンの表面を少しだけ水で濡らしてカマドで焼き直したんだ♪ それに焼く時にも、よりパンが柔らかくなるようにってカマドの中に直接水を入れた木のコップを入れて、水分を補ったんだよ♪」


 聞けばただカマドで焼き直しをすると、パンは温かくはなるがより水分が蒸発してしまい、石のように硬くなってしまうのだと言う。

 だから普段はそのまま食べるか、昼間のようにスープに浸して食べるのが普通らしいのだ。



 第144話へつづく

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