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第141話 これぞまさにステーキ!

「はい♪ お待たせお待たせ~っと♪ まず最初は『ステーキ・レア』が2枚あがったよ♪ さぁどうぞ♪」


ジュ~ッジュ~ッ♪ そんな油が跳ねる美味しそうな音ともに、まずレアを注文した天音と葵ちゃんの前に鉄皿と木のプレートに乗せられたステーキが提供される。

挿絵(By みてみん)

「ご、ゴクリッ。……う、美味そうだな」


 オレは生唾を飲み込むと同時にそんな言葉が出てしまうほどに、そのステーキは美味しそうな見た目と音を奏でていた。


「おっほぉ~っ♪ きたきたぁ~っ♪ これぞ『まさにステーキ!!』っと言った感じなのだな♪ なぁ葵!」

「そうですわね! こんがりと焼かれたお肉の表面、お肉の中から溢れ出す肉汁、またその肉汁の脂が熱せられた鉄皿に触れてバチバチっと良い音と共に、大変美味しそうな匂いをさせてますわ♪」


 天音と葵ちゃんは「もう待ちきれない!!」っと言わんばかりに肉に食らいつこうとするのだったが、

「あ~ダメダメ!! まだそのステーキは完成じゃないんだよ!」


 ジャスミンがそう強い口調で、今まさに食べようとする二人を止めてしまう。


「おいおいジャスミン! こんな美味しそうなステーキを目の前にして、それはないだろうにっ!!」

「お姉様の言うとおりですわ! なんで……」


 葵ちゃんが抗議の言葉を続けようとすると、ジャスミンは厨房からフライパンを持って出て来たのだ。


「何でフライパンを?」そこにいる誰もがそう思ってしまったが、次の瞬間……、

 ジョバ~ッジョバ~ッ♪ ジャスミンは二人の目の前に置かれたステーキの上に、フライパンを傾け液体のようなモノを一気に入れていた。すると……、


 バチバチバチバチッ♪ 

 熱せられた鉄皿から、ありえないほどの音量とその液体が跳ねる音が聞こえてきた。

 その液体が熱せられテーブルの上に飛び跳ねているのだったが、ジャスミンは素早くそのステーキの上にナプキンのような薄い紙を被せ、液体が飛び散るのを防いだ。


「うん♪ これで完成だよ♪ このタレはフライパンに残った肉汁とボク自家製の赤ワインとを交ぜて作ったから、ステーキとの相性は抜群だと思うよ♪」


 そう先程フライパンに入っていた液体とは、ステーキにかけるソースだったのだ。


「天音と葵ちゃんのステーキを置いたら、すぐにジャスミンが厨房に戻ったなぁ~」っと思っていたら、どうやらステーキにかけるソースを作っていたようだ。


 ジジジジジジッ♪

 ステーキから出る音がようやく落ち着くと同時に、ジャスミンは被せてあったナプキンを外した。


「これで完成なんだよ♪ はい、お姉さん達! ナイフとフォークをどうぞ♪ さぁ召し上がれ♪」


 ようやくジャスミンのゴーサインが出ると同時に、天音と葵ちゃんは荒っぽくナイフとフォークを使いステーキを食べ始める。


「もぐもぐもぐっ……ごくん。っ!? う、美味いなこのステーキ!?」

「もにゅもにゅもにゅ……ごきゅん。っ!? た、確かに柔らかくて美味しいお肉ですわね!!」


 天音と葵ちゃんは切ったステーキを頬張り飲み込むと、同じ感想をもらしていた。


「えへへっ~っ。お姉さんたちありがとうね♪ はい、パンとあと喉に詰まらせない様にスープも一緒に飲んでね♪」


 ジャスミンはステーキを褒められ、昼間に食べたパンとスープも持って来てくれたようだ。

挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)

 オレは先程食べた美味しくないパンとスープの余韻(よいん)を思い出してしまう。

 小麦だけでなく大麦やライ麦などの粒々が入った固いパン。野菜の切れ端などが入った塩分超控えめのスープ。


 だが、天音も葵ちゃんもそんなことを気にせずガツガツっと食べ進めていた。


「ごくりっ」


 そんな二人を見ているだけでも、食欲が刺激されてしまう。


「はい! お待たせ!! 今度は『ステーキ・ミディアム』が2枚だよ♪ 熱いから気をつけてね♪」


 そうこうするうちに、今度は静音さんともきゅ子が頼んだ『ミディアム』が運ばれてきた。


 先程と同じように、フライパンからソースを熱した鉄皿に流し込み上にナプキンを被せ、その間にパンとスープも運ばれて来る。


「……うん! さぁどうぞ♪ 召し上がれ♪」


 そしてタイミングを見計らってナプキンが外され、静音さんももきゅ子も食べ始める。


「…………」


 昼間食事をしている時も思ったが、静音さんの食事のマナーはとても上品だった。

 丁寧に右にナイフを、左にフォークを持つと、ステーキの右側から食べる分だけを切り分け少しずつ食べている。

 また食べている間、一切無駄話をしていない。「美味しい!」とか「柔らかい!!」などと言ったステーキの感想すら述べなかった。


 そしてもきゅ子はというと……、


「きゅ~っ? きゅ! きゅっ!!」

挿絵(By みてみん)

 右手にフォークを持ち、それをステーキに何度も突き刺すだけで、全然食べれていない。

「誰も、もきゅ子の世話してくれないのかよ……」と、ヒロイン共に文句を言いたい気持ちを抑え、隣にいるオレが食べさせてやる事にした。



 第142話へつづく

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