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第132話 借金が無くなり身軽になったが、自分の役割が分かんないから気は重い

挿絵(By みてみん)

「じゃあお兄さん達、夜までは時間あるからさ……アリッサのお店で武器や防具を揃えたらどうかな? ボクはここで夜の仕込みがあるから、忙しくなっちゃうし……それにそれに夜になれば、酒場(ここ)にも人が集まると思うからその時に食事がてら情報を得たりするのがいいんじゃないかな?」


 ジャスミンは「忙しくてちゃんとした相手ができなくてごめんね……」っと断りと入れると、オレ達に限りある時間を有効に使うよう提案してくれた。


「ああ! 確かにそうだな。旅に出るのは、武器や防具が大事だもんな!! みんなもそれでいいかな?」


 オレはジャスミンの言うことにも一理あると、天音達にも同じことを提案してみた。


「もちろんだ! それにキミが自ら資金を融通して、お金に余裕ができたのだろう? ならアリッサに早めに返済するのもよいのではないか? それと……正直、腰の部分が空いていると何だか寂しいしな」


 天音はそう言うと、今は担保としてアリッサに預けている『聖剣フラガラッハ』を惜しむよう、付け具部分を撫でて寂しそうな顔をしていた。

 そうして一路オレ達は、アリッサの店に戻ることにした。


 カランカラン♪

<武器屋&防具屋『凶器と狂気が入り乱れる(いこ)いの場:のんびり亭』>

挿絵(By みてみん)

 まだ1日も経っていないのに、何度この店を訪れたのだろうか……正直言って覚えていないほど、このドアの音を聞いた気がする。


「いらっしゃーい! ……って何だアンタ達か? 何か忘れ物でもしたのかい?」


 アリッサはオレ達を見ると、不思議そうな顔をしてそう聞いてきた。


「(まぁそうだよな。1日に何度も店にくれば何しに来たって反応が普通なんだよな?)」


 オレはそう思いながらも、アリッサに再び店を訪れた目的を話した。


「実はなアリッサ……こっちで金の工面が出来てな。それでアリッサに金借りといてから、今更わりぃんだけどさ、借りた金の返済と武器とか防具を今のうちに調達しとこうと思ってな……それでまた店に寄らせてもらったんだわ」


 オレは事詳細を説明すると、さっそくアリッサから借りた金貨を返すことにした。もちろん宿屋代で払った25シルバーは静音さんに両替してもらった、オレ自身の金から補填しておいて、だ。


挿絵(By みてみん)

「借りたり返したり、ほんとごめんなアリッサ」


 オレはもう1度謝る。だが、アリッサは気にもしないような顔で、「な~に、借りた金をちゃんと返してもらうんだ! そんな謝るようなことじゃないさね!! それじゃあ、アンタらから預かったこの剣を……っと、返すからね!」そう言ってアリッサは厚手の布に置かれた『聖剣フラガラッハ』を丁寧に持つと、オレへと返してくれた。


「ほんじゃ、これで貸し借りなしだからね!! また……金に困ったら、いつでもあたいを頼りな。アンタらには、無茶な頼み(・・・・・)もしちまってるしね。……あっ、でも貸し借りが終わっちまうと、その約束も無し(・・)って事になるんだよね?」


 アリッサは今気づいたようにそう言うと、少し残念そうな顔をしてみせる。

 オレはそんなアリッサを励ますように、元気づけることにした。


「あっいや、オレ達……元々魔王を倒すのが目的だったんだよ。だからアリッサから頼まれなくても、それは果たしてみせるさ!! なっ、天音!」


 オレは誤魔化すように、勇者である天音へと話を振った。


「ああ、もちろんだ! 私は勇者なのだから、魔王を倒すのは当たり前だろ! ふふっ、アリッサから頼まれんでも私たちはその目的をやり遂げてみせるさ!!」


 天音は水を得た魚のように、声高らかにそう宣言すると受け取った聖剣フラガラッハを握り締め、天に掲げ「この剣に誓うぞ!」っと言ったようなポーズをとっていた。


挿絵(By みてみん)

「そっかそっか。……アンタ達は偉いんだね。……で、武器と防具が欲しいのかい? ならあたいだって協力させてもらうよ! さ、さすがに『無料で提供』ってのはできそうにもないけどさ、少しくらい安くすることはできるからね! さぁさぁ遠慮なく言っておくれよ」


 アリッサはそうしみじみ言うと「どれでも好きなの選びなよ!」と店の中を自分の装備を見て回るように言ってくれ、オレ達は遠慮なく各自で店内を見回すことにしたのだった。


「ふむ、私にはこの剣があるからな! ……まずは、鎧や盾でもみるべきなのかな?」


 天音はそう言うと、防具が並べられている棚の方へと向かって行った。


「ならワタクシは武道家ですから……何を装備すればよいのでしょう? もきゅ子一緒に見繕っていただけませんか?」

「もきゅもきゅ!」


 葵ちゃんは本来の自分の役を思い出したように『武道家』を名乗り、もきゅ子と一緒に見て回ることにしたようだ。


「ならワタシは、適当に店内を見て回りますかね」


 既に撲殺用の武器『モーニングスター』などを持っている静音さんは、何を買うでもなくぶらぶらっと商品を見て回るようだ。


 そして肝心のオレはというと……、


「…………オレはどうすりゃいいんだ?」


 各々目的があって店内を見ていると言うのに、オレだけ何をしてよいのやらと迷い子のように、あちらにこちらにっとウロウロするだけだった。そんなオレをみかねてか、アリッサが声をかけてくれた。


「なんだいアンタ何を買うか決まってないのか? ……アンタそもそも何役(・・)なんだい? 戦士には見えないし、かと言って魔法を使えるようにも見えない。もしかして……遊び人とかじゃないよね?」

「ぐはっ!? そそそ、それは……」


 アリッサの的確すぎるそのツッコミに対してオレは、上手く返答できず言葉に詰まってしまう。


「(そうだよ! オレ何役なんだよ? い、一応はこの物語の『主人公』でいいんだよな? そもそもそれって何役に当てはまるんだ??? 勇者は天音、武道家は葵ちゃん、僧侶とその他は静音さん、もきゅ子は……魔物ってかドラゴンだもんな! 確か最後の役割当ては……『  』っと空白だったんだよな? 作者の野郎めが『面倒だから勝手にアイツに決めさせろ!』とか静音さん言ってたし。じゃあ自由(フリー)でいいのか???)」



 主人公にあるまじき主人公、一体何役なんでしょうかね? そんなことを考えながら、お話は第133話へつづく

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