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第125話 ジャスミンからの依頼

「それで……ジャスミンの取り分はいかほどなんですか? 報酬の7割(なな)が取り分なのですか?」


 静音さんは歯に着せぬ言葉で、そうジャスミンに直接聞いた。


「し、静音さんっ!! それはあまりにも……」


 オレはあまりにも直接すぎる言葉に動揺し、静音さんの名前を呼んで止めようとする。


挿絵(By みてみん)

「はははっ。いいよいいよお兄さん。そうゆうことは最初にちゃんとしとかないとだもんね! それに小さなことを疎かにすると、後々トラブル発展する事もあるもん。そうだね、ボクのギルド……いや、この世界で唯一のギルドは取り5(・・・)、つまり受け取った報酬の5割をもらうことになってるんだよ」

「ほ、報酬の5割ぃ~っ!? ジャスミンの取り分だけでかっ!?」


 ジャスミンの取り分が半分というあまりにも大きすぎる数字に、オレは大人気なくも()頓狂(とんきょう)な声をあげてしまう。


「ま、お兄さんが驚くのも不思議じゃないよね。でもね、さっきも言ったけど依頼が完了しても、報酬を払ってくれない人もいるだよ。その場合ボクが、ギルド側が依頼を受けてくれた人に支払うんだ。だからそれも含んでの『取り5』なんだよ」


 っとジャスミンは「ごめんね……」っと言いながらもそう説明してくれた。


「あ、ああ……そういう裏の事情があったのか。……それなら仕方ないのかもしれないなぁ~」

(それにしても、報酬の5割ってのはさすがに……)


 まだ怪訝そうな表情を浮かべているオレに対して、静音さんが補足してくれた。


「……まぁアナタ様が思っていることも理解できますが、ジャスミンのギルドは良心的な部類ですよ」

「えっ? 何どうゆうことなのそれは?」っと、静音さんの方を振り返り説明を促した。


「ええ。酷いところではギルド側が報酬を誤魔化したり、取り分が8割以上だったり、っと色々トラブルが絶えないと聞いたことがあります。それにジャスミンは、依頼人が報酬を支払わない場合でも自腹で補填(・・・・・)をしているようですが、他のギルドではそんなの聞いたことがありませんしね。まぁ今では他のギルドは……」

 

 静音さんはそう言葉に含みを持たせていた。


「(あっそうか。この街以外はもう……)」


 そこで静音さんの言いたいことを察した。既に他の街は存在していない(・・・・・・・)のだ。

 オレはその暗い雰囲気・気持ちを吹き飛ばすように、明るく静音さんの言葉に反応することにした。


「ほ、他のギルドはそんなに酷いのか。ならジャスミンのギルドは良心的なんだな!!」

「お兄さん……。ふふっお兄さんって良い人なんだね♪」

「いやいや、オレなんか良い人じゃねぇっての。はははっ……」


「でもね、お兄さん。ちょっと気をつけた方がいいよ。良い人ってのは騙され易いし、それにお兄さんの親切を利用する人もいると思うんだ。特にこんなご時勢だから、余計気をつけないと……お兄さんみたいな人は簡単に殺されちゃうよ」

「はっ……は……」


 オレはそのジャスミンのキツイ一言を聞いて、笑ってる顔が乾いてしまうのを感じていた。

「それって冗談だよな?」っと、もう1度だけジャスミンに聞こうかと思ったのだが、ジャスミンの顔と言いぶりを見る限り、たぶん今のはマジな話でジャスミンなりの『忠告』だと思うことにした。


「(マジかぁ~。確かにこんな世界じゃ、オレみたいな弱いヤツから食い殺されちまうよな。ほんと気をつけないといけないな!)」


 い、言えない。既に何度も殺されてるとは言いたくても言えなかった事柄だった。


「(そもそも誰がオレを復活させてるんだ? 天音や葵ちゃんを復活させてたから静音さんなのかな? それとも別の誰かなのか? うーん……)」


 その答えは自分で考えても辿り着けなかった。静音さんに聞こうかとも思ったが、何かヤバそうなので今は聞かない方がいいだろう。


 そんなことを思ってると、ジャスミンから声をかけられる。


「お兄さん達、もしかして依頼とか引き受けてくれるのかな?」

「うん? 依頼を? そこに貼ってあるやつのか? っつてもまだ見てねぇからなんとも言えねぇよ。まぁでもオレ達にできそうなのがあれば、やってみたい気持ちはあるよ。か、金も必要だしな」


 そうジャスミンの問いに正直に答えた。


「あ~。はははっ。だよね。お兄さん達、まだ依頼は受けたことないよね? もしよかったら、ボクの依頼を一番始めに受けてくれないかな?」

「ジャスミンの? ジャスミン自身が何か頼みたいってことなのか?」


 アリッサから既に依頼は受けていたが、ギルドは通していなかった。それにあれはアリッサに言われずともする予定だったので、そもそも『依頼』とは思ってもいない。


「う、ん……。実はね。まだ依頼書は貼ってないんだけど……」


 っと明るいジャスミンには珍しく歯切れ悪く、依頼の内容をオレ達に簡単に説明してくれた。


 何でも先ほどジャスミンが裏庭にある井戸に水を汲みに行くと、井戸の奥底から光が放たれ何かの声が聞こえてきたのだという。それはまるで悲鳴のような、女の人の声で井戸の中から響き渡ってきたらしい。ジャスミンは怖くなり、水を汲むのを止めて戻ってきてしまったという。すると、井戸から離れるとその声と光はピタリっと止んだらしい。

 依頼というのは『井戸の中から聞こえてくる、謎の光とその声の正体を突き止めて欲しい』とのこと。


 もし人だったら救出しなければならないし、もしかすると魔物が井戸の中に潜んでいるかもしれないと、ジャスミンは危惧して依頼を頼みたいのだと言う。


「……ってわけなんだよ。どうかなお兄さん達……もしよかったらだけど、この依頼……受けてくれないかな?」

「あっ、もちろん報酬は払うよ!」とジャスミンは付け加えてくれた。


「井戸の中から光が放たれて、そして声が聞こえる……確かにそれは怖いよな」

(もしかするとジャスミンが言ったように、魔物が中にいるかもしれないな。普通人が井戸の中に入るわけがないし、もし仮に人が誤って落ちて助けを求めてるとしたら、ジャスミンが井戸から離れたら声が止んだというのもおかしいよな? それに何より光を放つなんて……そんなの魔物以外いねぇよな?)


「それは魔物の場合は『討伐』を。人の場合は『救出する』。で、基本はまず『調査』になるのですね?」


 静音さんはこの手の事に慣れているのか、淡々とそうジャスミンに質問をしていた。



 井戸の中から聞こえてくるという、謎の光と声の正体とは一体何なのか? それを次話までに考えつつ、お話は第126話へつづく

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