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第11話 この世界(RPG風世界)について、その2

「い、一体このままだと……どうなるっていうのさ、静音さん!」

 

 オレは慎重な面持(おもも)ちで静音さんの次の言葉を待っていた。


「今はこの学園のみがこちら《RPG風》の世界から干渉されておりますが、このままですと『現実世界』そのものがこちら『RPG風の世界』と混沌(カオス化)し、やがて結合・合体の後に最後は……。魔王軍が現実世界をも征服することになるでしょうね……」

「せ、世界を征服!? い、いやでもほら、げ、現実世界には『自衛隊』とか『アメリカ軍』なんかあるよね? だったらそれがあれば魔王軍が攻め込んで来ても平気なんじゃ……」


 オレは精一杯の虚勢のつもりでそう言葉にしたのだが、


「アナタ様先ほどワタシが言いましたように、この世界は誰かに『創られた世界』なんですよ。現実世界には存在しないモノ(・・・・・・・)を果たして倒せるとお思いなのですか? それは『幽霊』や『空想上のモンスター』を相手にするようなものなんですよ」


 静音はそう淡々と言葉を紡いだ。だが、オレは食い下がるように反論する。


「だ、だったらさっ! 魔王軍が幽霊みたいな存在なら……現実世界にも攻撃できないんじゃないの? 違うのか!?」

「……いいえ。それが攻撃できるから厄介なのですよ」


 オレは最後の方で自信がなくなり弱弱しく言葉を口にするのだが、静音さんはいとも簡単に論破してしまった。……だが、オレも負けじと更に反論の言葉を口にしてしまう。


「だったら現実世界も攻撃すれば……」

「いえ、現実世界の兵器ではこちらのRPG風の世界のモノ(主に魔王軍)には傷1つつけることができないのです。先ほどもワタシが述べたように、こちら『RPG風の世界』からはあちら『現実世界」には干渉をしていますが、その逆あちらの『現実世界』からはこちらの『RPG風の世界』には干渉していませんので……。そもそも物理的繋がりが存在できないのですよ!」


 オレはもう静音さんに反論できなくなっていた。なんだかすっげぇややこしい説明だったのだが、静音さんの話を要約すると、魔王軍は現実世界への攻撃が通用するが、逆に現実世界からの攻撃は魔王軍には一切通用しない(・・・・・・・)ということらしい。


「そ、そんなの反則もいいところだろうがっ…………」


 これで静音さんが焦っている理由がよく理解できる。もしも魔王軍が現実世界へと来てしまったら、それは即ち世界の終わりを意味するのと同義だろう。なんせこのRPGの世界でも、ここ『エルドナルド城』とその『城下町』が1つ存在するだけで、他の村や町は魔王軍の攻撃によって滅ぼされてしまっているのだから…………。


「おいおい、作者のヤツめ。物語の冗談設定も大概にしろよな……」


 オレはそうこの作品の作者に苦情を呟くが、当たり前だがその返答は聞こえてこなかった。


「ま、早い話が『このRPG風の世界』と『現実世界』とがイチャラブのうえに合体し、恋太郎が誕生したようなモノですね!」

「…………」


 静音さん……。あなたは何で釣師的なエピソードで話まとめようとしてんの? 作者が合体ってワード入れたからか? それはもう故意だよね? 恋太郎なだけに、って! あと第10話(前話)はあまりにも物語が進まなすぎて、今回は『あらすじ』すら導入されてないし、設定が適当にもほどがあんだろうがっ!


「アナタ様……だいぶショックを受けているようですが、まだ本題に入っていないんですよ」


 おいおい、これ以上に何があるってんだよ?


「では話を続けさせていただきますね。実はですね…………。恋太郎が誕生するまでの期間が決められているのです!(ドヤっ)」

「なんだってぇー!? 恋太郎の誕生するまでの期間が……って、あのさ静音さん。たぶん比喩的表現をしたいんだろうけどさ、『恋太郎』だと本気(マジ)でワケ分かんないから、別の単語でお願いできないのかな?」


 あと何で静音さんが恋太郎関連でドヤ顔してんのか意味わかんねぇよ……。


「(ちっ)…………はいはい。なんかぁ~、そのうちぃ~? 2つの世界がぁ~合体しちゃう? って感じ?(笑)↑↑↑」


『なんと静音はアナタの言葉にやさぐれて、アホなパーギャルみたいな言葉を語尾アゲアゲ気味に使い出した!』


 し、静音さんのキャラ崩壊もいいところだ。このままでは不味い! 不味すぎる!? こ、これはなんとかせねばなるまいに!! 仕方ない……ここは伝家の宝刀を抜かねばならぬか…………。


『オレは静音さんに対し、『おこづかい《賄賂》』を差し出した!』


 そして静音さんの懐へと無理矢理突っ込んでみる。すると……、


「まぁまぁまぁ!! このようなお気遣いはなさらなくてもよろしいのに♪ ア・ナ・タ・様♪♪♪」


『静音の機嫌とアナタへの好感度が最高潮になりました♪ これでいつでも彼女を攻略できますからね♪』


 ろ、露骨に現金すぎるぞ! さすが……守銭奴のクソメイドだな!


「(……ちっ。案外シケ(・・)てやがんなコイツ……)」


 そんなことを思ってるオレを尻目に、さっそくと言わんばかりに静音さんはオレが渡したおこづかい(賄賂)を数え始め何かを呟いたが、オレの耳には……悲しいかな、しっかり届いてしまっていたのだ(泣)


「……で、静音さん。お話の続きをですね、お願いしたいのですが……よろしいでございますでしょうか?」

「あーそうですねー。『あの日』から数えて20日以内に魔王を倒して~、この世界を平和にしないと、もうヤバイですねー」


 静音さんは賄賂が少なかったせいか、かなりやる気を無くしていた。


「あ、あの日っ!? どの日のことだろう? もしかして『告白を断った日』のことか? もしくは『女の子の日』のなのかな? ……っておいおい」


 オレはセルフボケツッコミをする余裕が出来ていた。


「あーちなみに~、もう期限は1週間切ってますよ~」

「……はあっ!? 1週間ホワイ? あと7日だと? 英語でいうと……いや英語では言わないわ!」


 オレはとりあえず英語を知らない事を誤魔化すためにオーバーリアクションをとることにした。


「い、1週間ん~っ!? ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ静音さんてば! どの日からかは知らないけど、元々は20日間もあったんだよね!? なのに期限がもう1週間しかないの!? その説明の雑さはあまりにも馬鹿すぎんだろうがっ!」


 それはあまりにも理不尽すぎるだろ。大体まだ序盤も序盤である。レベルが1どころか、そもそもその表示すらされてなかったのだ。これでは例えどんな物語の主人公がこの世界に来たとしても、誰もこの世界を救えるわけがない。


「だってぇ~、アナタ様からもらったお金少なかったしぃ~、それに~物語を20日も書くとか無理無理(笑)」


 なんか静音さんが笑いながらこの物語の制作秘話ネタバラシを語ってるんだけど、いいのかよコレは? だったら無駄話やこのサイドエピソード(小ネタ)を削ればいいんじゃないのか?などとそんなことを思っていると、ぷるるる~♪ ぷるるる~♪ と電話の着信音が鳴り響いた。


「はーい、もしもし静音ですけどぉ~。……ええ゛っ!? はい! はい! そうですか! わかりました! ありがとうございます!!」

「……ってかこの世界スマホ使えるの???」


 何か知らないけど、急に電話相手にお辞儀をする静音さん。疑問に思いながらも、オレはポケットから自分のスマホを取り出し電源を入れ画面を見たのだが『少し旅に出ます……探さないでください』っと何故だかスマホの画面に表示されていた。右上のアンテナも0本どころかマイナス表示になっていたのだ。


「な、何これ? つか、アンテナにマイナス表示とかあんのかよ!?」


 オレはスマホを操作するが入力を受け付けない。どうやらオレはスマートなフォーンにすらシカトされているようだった。


「アナタ様! いつまで遊んでいるのですか!! そろそろ真面目に物語を進めますよ!」

「あ、遊んでいたのは静音さんの方なのに!? 理不尽すぎるんじゃないか!?」


 静音さんは電話が終わると何故だかやる気に満ち溢れていたのだ。


「し、静音さん。さっきの電話は一体誰から……」

「あっ~アレですか? 実は作者の方から『時給+2円上げてやるから、そろそろ物語を進めてくれ!』っと頼まれましてね♪」

 

 安っ!? +2円って……そんなの上がっても気付かねぇよ。騙されてる、それは騙されてるんだよ静音さん!! そんなことを思ってるオレを尻目に、オレの横で静音さんは小躍りするくらいの勢いだった。


「えっ~と、何でしたっけ…………ああそうそう! あと1週間で魔王を倒すって話でしたよね♪」


 静音はご機嫌なのか終始ルンルン♪ 気分で語尾にも『♪』が付いていた。


「あ、うん。あと何で最初が『あの日から20日』って期限だったの? それと何で静音さんがそれを知ってるのかも……」


 オレは思い切ってこの際だからと疑問を聞いてみることにした。


「まず、ですが……。その魔王を倒すまでの期限『20日』というのは、どうやらアナタ様の『出席日数』と大きな関わりがあるようなのです!」

「……はいっ? オレの出席日数!? それって学校のやつか? そんなのがこのRPGの世界と現実世界との世界平和に関係あんのかよ???」


 そうですそうです……と変なおじいさんみたく肯定するように頷いている静音さん。


「今こうしている間にも、現実世界ではいつもどおりの時間が流れておりますが、アナタ様はこちらの世界に来ているので、学校には登校していないことになっております。ま、早い話が無断欠席中(・・・・・)なんですね。……ですので21日間無断欠席してしまうと、その理由の如何(いかん)に問わず即『留年』という形になってしまうのです。ですからこの世界崩壊までのリミットが『20日以内』ということらしいです。あと『2つの世界が1つに~』という(くだり)のは、そのついで仕様のようですね♪」


 オレはその静音さんの説明をぽか~んとアホ(ずら)した表情で聞いていた。傍から見ていたら、よほどアホな子に見えたことだろう。だが、それもそのはず。話の内容もアホみたいなのだからそれも仕方ない。


 だってさ、オレの出席日数不足による『留年事項』と、現実世界及びこのRPGの世界の『世界平和』が同列なんだぜ。いや、むしろ世界平和はオマケ設定なんだぜ。本当に物語の根底がそれで良いのかよ!? 後で読者からクレーム来ないの?


 オレは今後のことは未来のオレへと匙を投げ、今の問題・疑問を聞いてみることにした。


「え~っとじゃあさ。天音や葵ちゃん、それと静音さん達も21日を過ぎてしまうとオレと一緒に『留年』しちゃうんじゃ~……」

「あっいえいえ、ワタシ達は大丈夫のようです。何か勝手に出席していることになってますので。そもそも『2つの世界これら』を記憶として認識(・・)しているのはワタシとアナタ様だけですしね」

「だから何でオレだけそうゆう扱いなんだよ! 『名無し』とか『村人C』とか『1人だけ留年戦士』とかさ! オレも、もうそろそろこの作品に対して大正デモクラシーばりに、デモストライキすんぞコラっ!」


 オレはこの物語の設定に対し、戦後最大級に憤慨(ふんがい)していた。


「それとワタシがそれらを知っている理由なのですが…………。ワタシはこの物語の臨時の管理人のアルバイトをしているからなのですよ!!」

「は、はぁ? この物語の臨時の管理人のアルバイトなの? ……静音さんが? 何それ何それ!?!? 作中の登場キャラの正体が実は「物語の管理人だった!」なんてのは聞いたことあるけど、まさか臨時なうえに『アルバイト』っていう雇用体系の設定は斬新すぎるだろう!? あとそれを平気でこれを読んでる読者さんにバラすなよな! それに確証はないけど、静音さんを雇っているのは作者だろうな。さっき静音さんの時給を2円上げてたしな。それはそうと税金や失業保険とか払ってんのかな?」


 もうツッコミどころが満々祭々(まんまんさいさい)だった。



 第12話『チュートリアル編』へとつづく

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※満々祭々=あな嫁独自の新造語:祭りの如く賑やかにたくさんあるなどの意味を指す

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