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第107話 元盗賊の頭アリッサに、聖剣フラガラッハを持ち逃げされた???

「うんうん今日もたくさん持ってきたね! じゃあラッド、いつもどおりの値段でいいかな? っとなるとぉ~全部で……これくらいかなっと」

「(コクリ)」


 ジャスミンはカウンター下から麻袋を取り出すと、薬草取りの少年に買取代金の入った麻袋を手渡した。


「(……にしてもあの子、まったく喋らねぇなぁ~。挨拶とコクリの頷きオンリーだぞ)」


 今流行りのクーデレさんなのかなぁっとその子を見ていた。

 どうやら二人の商談は終わったらしく、少年は麻袋をカバンに入れると、

「…………アリガトウ」


 礼の一言だけ言って、そのまま店の出口へと行ってしまう。

挿絵(By みてみん)

 カランカラン♪


「ラッドまたね~♪」


 ジャスミンも外に出て、その少年を見送る声をかけていた。

 少年は振り返り、頭を下げるとそのまま街の方へ消えてしまう。


「ふぅ~……っと、ごめんねお兄さん達!!」

「うん? ……ああ~、いいよいいよ。オレ達の用事はもう終わってたしな」


 何に対する謝罪なのかと一瞬躊躇(ちゅうちょ)したが、オレ達がいるのに他の客の相手をしたことへの謝罪のようだ。

 ジャスミンのこうゆうところの気の回し方が、他の人と違うところだろう。

 客を相手にする商売だから、幼くてもそうゆうのが身につくのかもしれない。


「あれ? あれれ? アリッサはどこいったの? もしかして……帰っちゃったの?」


 どうやらジャスミンは、さっきの子とのやり取りに夢中でアリッサが帰ったことに気づかなかったようだ。


「あ、ああ。剣も直ったし、なんだか先に自分の店に戻って、金を用意してくれてるみたいなんだ」

「えっ!? アリッサが……そう言ったのお兄さん!?」


 オレが何の気なしにそう言うと、ジャスミンは酷く驚いていた。

 そして何かを考えるように、こう話だした。


「アリッサってさ、()盗賊の(かしら)だったんだよね。で、今は足を洗って武器防具の『のんびり亭』なんかやってるけどさ。あの剣って喋ったりもするし、何より『聖剣』で相当な価値(・・・・・)があるんだよね? しかもアリッサから話持ちかけてきたんでしょ? ボクがこんなこと言うのもなんだけど…………ほんとに大丈夫なの?」


 ジャスミンはそう顔を引き()らせながらも、アリッサの過去とやらを教えてくれた。


「うぇっ!? あ、アリッサが元盗賊の頭だったのかぁ~!? お、おいおい……マジかよ。だからジャスミン(顔見知り)が目を離した隙に、剣を持って早足で自分の店に帰ったのか???」


 今考えれば怪しい行動に心当たりがあった。そもそもオレ達と一緒に一緒にアリッサの店に行けばいいのに、何故かアリッサは自分一人だけ帰ったしまったのだ。

 オレは驚きから顔が青くなるのを初めて実感した。血の気が引き、眩暈(めまい)までしてしまう。


「(確かにアリッサの容姿って、いかにも『私が盗賊の頭です!』って雰囲気醸し出してたけどさ。もしかしてCPR(カパラ)システム(質制度)ってのも、『かっぱらい(盗み)』の略称とかそんなオチ(・・)じゃねぇよな?)」

「おやどうかしたのかキミ? そんな顔を青くして? まさかアイスを食べられなかったから機嫌を悪くしてしまったのか?」


 そんな青信号とまるで瓜二つのようなオレに対して、剣の所有者である天音が暢気(のんき)にも声をかけてきた。


「(……あっ、オレから天音に事実を告げるパッ・ティーンですか?)」


 パターンの最上級系であるそんなパッ・ティーン用語を(もち)いてなんとか誤魔化そうと画策するが、生憎と読者の面々を騙すには至らなかった。


「あ、いや……あのな、天音……」

「うん?」


 オレが何かを言いたそうに言い淀むと、天音は不思議そうな顔でオレを見ていた。


「(い、今言わないとマズイよな? 魔王を倒せる唯一の剣盗まれたかもしんないんだもんなぁ)」


 そしてオレは意を決して、天音に事実を告げることにした。


「天音、驚かないで聞いてくれよ。実は……実はな、アリッサいるだろ? アイツ……元盗賊の頭らしいんだわ。それで……確証はないんだけどさ、剣…………盗まれちまったかもしんねぇんだわ……」

「えっ?」


 オレがそう告げると、天音は状況が理解できていないのか、短く疑問を口にすると固まってしまった。


「あ、天音?」

「……」


 まるで石像にでもなったかのように、天音は口を開けてまま身動きひとつしなかった。


「(オレも静音さんにドングリを入れられそうになったとき、こんな顔してたのかぁ~)」


 っと何故だかそんな天音を見ていると、感慨深い気持ちになってしまう。


 そんな不穏な空気を察したのか、葵ちゃん達も声をかけてきた。


「お姉様……どうかなさったのですか? お兄さま?」

「うん? どうしたのですアナタ様? なにやら天音お嬢様が面白顔をしながら、まるで石像のように固まってるようですが……」

「もきゅ?」


 みんな一様に「何かあったのか?」と聞いてきた。

 事実を告げるべきか迷ったが、みんなにも知らせておくべきだと思い、事実を告げる。


「えっと……アリッサがさ、元盗賊の頭なんだって。で、剣が……聖剣フラガラッハが盗まれたかもしれないんだわ。ま、まだ確証はねぇんだけど……な」


 オレは慌てつつ「でもほんとかどうか分からないんだ……」と声無き声も付け加える。


「えっ?」

「はっ?」

「きゅ?」


 三人ともその事実が受け入れられないのか、天音と同じように固まってしまった。



 開いたお口にドングリを入れる為、森でドングリを集め遭難しつつも、第108話へとつづく

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