第106話 この世界には亜人もいるの?
「そうだっ!! ま、まだチョコアイス残ってねぇのか!! ソイツがあればサタナキアさんを説得して、世界を滅ぼすのを止めてくれるかもしんねぇぞ!!」
オレは「たかがチョコアイス1つで世界を滅ぼされてはかなわん!」などと急ぎアイスは残ってはいないかと、そのチョコアイスを食べてるクソヒロイン共に聞いてみた。
「えぇーっ!? こ、これが無いと世界が救えないのお兄さん!! どうしようアリッサ! ボク食べちゃったよ!?」
「……あたいも食べちまったよ。でも、まさかチョコアイスが原因で世界が滅んじまうとは……なんともはや、世知辛い世の中になっちまったもんさね!」
店主二人は既に食べ終えており、ジャスミンは世界を救うアイスという食べてしまったことに混乱し、アリッサに至っては、既に世界が滅ぶのを受け入れていた。
「(ええいっダメ店主共めっ!! 混乱してるとか世界滅ぶのを受け入れやがってるわりに、カップに少し残ったのをスプーンでかき集めて食ってんじゃねぇよ!! 上で『店主2人は既に食べ終えており~』ってオレの補足説明が嘘になっちまうだろうがっ!!)」
カランカラン♪ ちょうどそのとき、誰かが店の中に入って来た。
「……こんにちは」
そう短く挨拶をした。
「っとと、別のお客さんだ!! お兄さん達ちょっとごめんね! ……おやおや、ラッドじゃんかぁ~! へぇ~久しぶりだね♪ 今日も『薬草の買取』でいいのかな?」
「(コクリ)」
(まぁジャスミンの店だしね。オレ達も客とはいえ、別の客を疎かにしていいわけじゃないしな)
っとジャスミンは入ってきた来訪者の応対をすることになった。
「(あれ? でもあの子……ケモノみたいな耳が生えてるぞ!? よくファンタジー系で見かける亜人っていうヤツだよな? 詳しくねぇから種族までは判んねぇけど……)」
その亜人の子は、どうやらジャスミンに薬草を買い取ってもらっているようだ。ジャスミンの口ぶりから、いつも売りにきているのかな?パッと見で商人? ……っというわけではなさそうだが、もしかしたら薬草取りで生計を立てているのかもしれない。
「うん? どうしたんだい? アンタ、亜人の子がそんなに珍しいのかい?」
オレがその子をじっと見ていたのに気づくとアリッサが声をかけてきた。
「あ、ああ……初めて見てな。…………この世界には、ああいう子が多いのか?」
「そうさねぇ~。数はそんなに多くはないかもしれないさね。何せこのご時勢だろ? 人間よりも身体的に強い亜人は、兵としても駆り出され易いさね。あとは『旅商人の護衛』とかで、食い扶持にしている子もいるね。……まぁあの子の場合はどうやら、『薬草取り』のようだけどね」
っとアリッサは亜人を知らないオレに詳しく説明をしてくれた。
「(まぁジズさんなんかも擬人化してたしね。亜人がこの世界にいてもおかしくはないよね?)」
この世界の摂理に干渉しないと心に抱きつつ、本編へと話を戻した。どうやらジャスミン達の買い取りには時間がかかるらしいので、オレは店主二人を見限ると、ウチのパーティー連中へと気を取り直して声をかけた。
「おいみんな!! アイスは残ってねぇのか!?」
「「「「ぜーんぜん♪」」」」
相変わらず声揃えて面白顔表記しやがってからに、このクソヒロイン共がっ!!
「わ、妾の分だけチョコアイス……ないのかえ? 他のみんなは食べたのに、妾だけ仲間外れなのかえ?」
ものすごーっく、悲しそうにそう声ににするサタナキアさん。
「(いや、オレも食ってねぇしな! むしろオレの仲間外れ感は、サタナキアさんのそれをも上回る勢いだと思うわな!!)」
『このままでは、魔神サタナキアが怒り出し、冗談みたいな理由で世界が滅ぼされてしまいますよ! 以下より選択肢を選び世界を救いましょう♪』
『食べ終わったカップを差し出す』世界滅亡エンド
『食べ終わったカップを投げつける』世界消失エンド
『食べ終わったカップをゴミ箱に捨てる』世界クリーン運動エンド
「(うーん♪ いつ見ても、まともな選択肢が導入されねぇよな! 大体どれ選んでも同じじゃねぇかよ!! あと3つ目相変わらず意味わかんねぇ……何エコなの? エコロジーなの? エコ意識に目覚めちゃった係りなの?)」
オレは意味不明な選択肢により、『系』とするところを『係り』と人偏をつけ誤変換してしまうほどに動揺していた。
「もうよい……もうよいわっ!! 妾の力を解放して、この世界を滅ぼ…」
「……っと。アイスも食べてことだし、コイツは担保として預かっておくからね! 金はあとであたいの店に取りに来な! それまでに用意しといてやるよ! じゃあな!!」
カチャッ。なんとアリッサは、サタナキアさんがせっかく活躍しようとセリフを言ってる最中に、あろうことか剣を鞘に収めてしまい、勝手に自分の店に戻り強引にも物語りを進めてしまったのだ。
「はっ!? えっ? えっ? ……えぇっ!? こんなんでほんとにいいの?」
オレはいきなりの展開で戸惑ってしまう。そりゃそうだわ。今まさに世界を滅ぼす宣言をしていたサタナキアさんが簡単にも鞘に収められてしまったのだから余計に。
「(あっ、いやでも……前にサタナキアさん自ら『剣を鞘に収めればよいのじゃ!』とか言ってたもんな。もしかして……これのフリだったのかな?)」
まぁそんなことを思いつつも、「世界が滅ぼされなくて良かった♪」っと思うことにした。
「(いや読者の方々が思い、そして言いたい事は分かるよ。それでもさ、イチイチ気にしてたらこっちの体持たないんだもん。そこはいつも振り回され、迷惑を被ってるオレに免じて妥協してくれてもいいだろう? 違うか?)」
オレのこれまでの苦労を盾にして、読者の面々に心の中で語った(ある意味でカタルシス)。そんな物語を騙る……もとい語るオレだったが、物語はどんどんそして着実にゆっくりと進みつつあった。
第107話へつづく