第104話 魔神サタナキア、目覚めるそのとき!!
「(……一体誰を選べばいいんだ?)」
オレは考えあぐねていたが、そこで一つ閃いた。それは……
「(そうだよ!! 確かサタナキアさんを起こすには……あの言葉が有効なんじゃないか?)」
そう思うと、オレは即座に行動に移した。
「お~、これはとても美味しそうなチョコアイスだなぁ~♪」
「「「「「はあっ!?」」」」」
その場にいるヒロイン全員(葵ちゃんともきゅ子を除く)が口を揃えてそう口にした。
ある意味揃いすぎててちょっと怖いのと、「何言ってんだコイツ?」という目線には目を覆いたくなってしまう。
だがオレは、そんなヒロインズをお構いなしに続けて叫んだ。
「お~っと、アイスが溶けてきたなぁ~。このままじゃ~全部溶けちまうぞぉ~♪ 誰か食べてくれる人はいないのかなぁ~♪」
まだそれを続けるオレに対して、ヒロイン達は各々台本どおりのセリフを口にする。
「あ、あの……アナタ様。それはいくら何でも単純すぎではないではないでしょうか?」
「そうだぞ!! いくら何でも相手は『魔神』なんだぞ! そんなチョコアイス1つで起きるわけないだろうがっ! やはりここは勇者であるこの私が……」
「お兄さま……ワタクシにもそのアイスを下さいませんか?」
「お兄さん……大丈夫?」
「なんだいアンタ! やっぱり頭が……」
「もきゅぅ?」
「(ツライ!! 何がツライかって? ヒロイン達に頭がおかしいヤツと思われてるのもアレだけどさ、何よりも誰もオレを擁護してくれる人がいないって事にだよ!! 葵ちゃんに至っては、アイスくれだもんなぁ!!)」
もはやこのオレに味方なんぞ存在しないこの世界。いやむしろ全員敵ですよね? っと言っても過言ではないこの状況。
もし仮にこれがライブのゲームの実況だとしたら、さぞかしコメント欄が大荒れしていることだろうな!
そんなヒロイン達の精神攻撃に耐え忍び、心の中でそんなことを思っていると、
「チョコアイスじゃとっ!? どこじゃ!! どこにあるのじゃ!? 溶ける前に妾が食してしんぜようぞっ!!」
「(はい! サタナキアさんが起きちゃいましたよっ!! 自分でやってて反応に困るけど、こんなでほんとにいいの? 魔神なのにチョコアイスで起きちゃうの? ……サタナキアさん、どんだけ食い意地張ってんだよ!?)」
そんな事を思い、さっきまで騒いでいたヒロイン達の様子が気になり盗み見た。
「サナ……ようやく起きましたのですね! …………よかった」
「うむ! これでようやく魔王を倒すことができるな!!」
「アイス……ワタクシのアイスはどこでしょう?」
「わわっ!? ねね、アリッサアリッサっ!! ほんとに剣が喋ってるよ!?」
「ほんとだね。こいつは驚いたなんてもんじゃないよ。まさか本当に剣が喋るなんて……ね」
「もきゅもきゅ♪」
「…………」
(ごめん。何でコイツら普通に受け入れてんの? えっ? さっきまで「そんなんで起きるわけねぇじゃんか(笑)」みたいな態度取ってて、何しれっと普通の反応しやがってるんだよ!! さっきまでオレを馬鹿にした感じはどこいった!?)
「いえいえ、アナタ様。これも台本どおりのセリフなので(笑)」
静音さんがそう言うと、他のヒロイン達(もきゅ子含む)も賛同するように頷いていた。
「ごめん……静音さん。いつもいつも言ってるけどさ、その『台本』って部分がオレにはよく理解できねぇんだよ!!」
(何なんだよこの世界は! ラノベなのに予算があるとか、まだ書籍化もしてねぇのに、既にアニメ化意識しちゃってます!! とかさ。ほんとこの物語大丈夫なのかよ……)
「アナタ様……」
「……な、なんだよ静音さん?」
静音さんが何かを言いたそうにオレを呼んだ。オレは少し恐怖を覚え、ドギマギしながら答えてしまう。
「本当の事を言っても……よいのですか? ネタバレになって、作者の方から最初からいなかったかのように存在ごと消される可能性が出てきますが……よろしいでしょうか?」
「…………ごめんなさい」
静音さんにそう言われ、オレはすぐさま頭を下げて謝ることにした。一見すると主人公の癖に不甲斐無いとも思われるだろうが、オレでさえも物語の登場人物という性質上仕方ないことなのだ。
「チョコアイスぅ~っ!! 妾のチョコアイスはどこなのじゃ~!!」
そんな恐怖しているオレをお構いなしに、サタナキアさん本人はチョコアイスを探すのに必死のご様子だった。……まぁ知らぬが仏という言葉もあるくらいだしな! 放置プレイに勤しもうぜ♪
第105話へつづく