第103話 魔神サタナキアをどうやって起こす?
「……ってちげーよ!!」
「もきゅきゅ!?」
オレは怒りに任せ立ち上がった。いきなり立ち上がったので、首に跨っているもきゅ子はとても驚き、必死にしがみつく。あっ……とは言っても、ちゃんともきゅ子が落ちないよう手で抑えてたけどね。だって危ないもんね!
「おや、アナタ様どうかなさったのですか? そんなお怒りになられてまして?」
「(ほんと文字稼ぎの為に会話ループしてるんじゃねぇだろうなぁ?)」
もう何度目か知らない静音さんのそのセリフ。
「いやいやだからさ!! 何オレを無視して物語進めようとしてのか!! ってことを言いたいんだよ!!」
「あ~……ですが、アナタ様が『いつまでも物語進まねぇなぁ~』っと仰られたので、こうして本編物語を進めているのですが……それに何かご不満でも?」
「(ほんとしれっと言うよねぇ~、このクソメイド。しかもちゃんと理に適ってるところがまた嫌らしいわ!)」
「…………はぁ。もういいや。で、何の話してるのさ……」
もうこれ以上会話を引っ張るのは無意味と悟り、本編物語に参加することにした。
「えっ? アナタ様、話……聞いてなかったのですか? それでもアナタ様はこの物語の『主人公』なのですかっ!! アナタ様のような方がいるから1ヶ月で終わる物語が、7ヶ月経った今でも続いてしまっているのですよ!! ほんとお戯れも程々にして下さいよね!!」
静音さんは『オマエが原因で物語が長くなっている!!』とそう捲くし立ててきた。
「ほんとごめんよぉっ!! さっきまで土下座してお馬さんごっこしてた(床とお友達になってた)から、本編シナリオの話聞けなかったんだよ!!」
オレは怒りとも嘆きともとれるそんな言葉を口にする。
「(オレ主人公なのにさ、取り扱いがあまりにも酷すぎるだろうが……いつか報われる日が来るのかなぁ~)」
オレはそんなクソメイドに怒りつつも、反省の言葉を口に、更には心の中で自分の境遇を嘆くことしかできなかったのだ。
※…………たぶん無理ですね(笑) by作者より
何か作者から辛辣なことを言われた気もするが、たぶん気のせいだろう。……いや、気のせいであって欲しい。そう思い、希望を胸に抱きつつ本編を進めることにした。
「……で、聖剣フラガラッハの動力源を交換したけど、それがちゃんと正常に動くかって話なんだろう?」
「なんだ、アナタ様。ちゃんと私達の話を聞いていらっしゃるではありませんか!」
「(そりゃ~主人公置いてけぼりにして、勝手に物語進められたりしたら、嫌でも耳に入るだろうよ)」
そしてオレももきゅ子を胸元に抱きかかえながら、聖剣フラガラッハが置かれているカウンター前に行った。
「……そういや動力源を交換したってのに、サタナキアさん喋らねぇよな? やっぱり何か不手際でも……」
オレがそうポツリと言うと、
「えっ!? お兄さん剣が喋るって……そんなことあるわけないよ!? ……アリッサは聞いたことある?」
「……いいや。あたいもそんな事は初めて聞いたさね。剣が……喋るねぇ……」
店主二人は眉をしかめ、訝しげな表情をして互いの顔を見ていた。どうやら二人ともそういう剣の類は見たことがないらしい。
「(ほんと言うとオレだって、剣が喋るとかいきなり言われたら『なんだコイツ? 頭おかしいのか?』って、今のジャスミンやアリッサのような顔しちまうかもしれんわな)」
オレは心の中でそう思いながらも、必死に補足説明をしてみた。
「あっ、いや……この聖剣フラガラッハには、魔神が……『魔神サタナキア』が封印されてんだわ。だから、その……サタナキアが喋る……みたいな?」
「ふーん……この剣に……魔神が封印ねぇ~」
「……聖剣なんだよね? それなのに魔神が封印されてる……そんなことってありえるのかい? あたいにゃ俄には信じらんないさね」
店主二人に不思議そうな顔で見られ、オレも最後はそう自信なさ気に答えてしまった。
「とりあえず、動力源の交換は終わったんですよね? ならサナを……いえ、『魔神サタナキア』を実際に起こしてみるのが手っ取り早いのではないでしょうか?」
静音さんが珍しくオレをフォローしてくれた。
「(さっすが静音さんだぜ!! そのおいしい所を掻っ攫う嗅覚だけはオレも見習いたいわ)」
そしてオレ達は、サタナキアさんを起こすことになった。……なったのだが、
「……そもそもさ、どうすりゃ起こせるんだ?」
静音さんに起こせと言われたが、そもそもオレ達はサタナキアさんを起こす手段を知らなかったのだ。
「あーとりあえず……声でもかけてみますか?」
静音さんがそう無難なアドバイスをくれた。……どうやら、この世界の管理人である静音さんでも、サタナキアさんを起こす方法は知らないらしい。
「(…………本当に知らないのか? どうする静音さんに任せてみるか?)」
「ハンマーか何かでブッ叩けば起きるんじゃないのかい?」
アリッサは過激にそう言うと、店にある商品のハンマーを棚から持ってきていた。
「(おいアリッサ……オマエそれ製鉄用のハンマーだよな? なんでそんなもん持ってきてんだよ。起こすどころか、ぶっ壊す気じゃないだろうな? アリッサに任せて大丈夫なのか?)」
「うーん……もしかすると、呪文か何か欲しいのかなぁ~?」
ジャスミンは腕を組んで、何か方法はないかと考えてくれていた。
「(おっ! さっすがはジャスミン先生だ!! それっぽいアドバイスをしてくれている。……やっぱりジャスミンが一番か?)」
『さてと……誰のアドバイスを実行する?』
『声をかける』それでは起きません
『ハンマーでブッ叩く』起きる前に剣が壊れます
『呪文を唱える』そもそも呪文知ってんの?
「…………」
(ごめん。相も変わらずロクな選択肢がなかったわ。大体選択肢を選ぶ時点でオチを説明するってさ、絶対ダメじゃないのか?)
どの選択肢を選ぶか次話までに考えつつ、お話は第104話へとつづく