第99話 これもアンタが原因なんだろう!?
前回までのあらすじ!!
聖剣フラガラッハの動力源である電池が『裏の畑に投棄されていた……』っと思い込まされていたが、実際は『投棄』ではなくネギのように整然と植えられていた。
それも作者によるセリフのすり替え策略技法の1つだと言うことが判明してしまい、オレは『もう自分自身ですら信用できねぇのかよ……』っと嘆くことしかできないのだった……
「(100話の大台を目前にして、そんな事実をネタバラシされてもどうしようもねぇじゃねぇかよ……。もしかしたらサタナキアさんの動力切れを起こして止まっちまったのも、電池畑を見せる為の『伏線』だったとかそんなオチじゃねぇよな?)」
などと怖いことを考えてしまい、改めてこのあな嫁に対して恐怖し始めてしまう。
「ジャスミン……何で電池畑に植えたんだ?」
オレは自分がおかしい事を言ってると思いつつ、畑の主ジャスミンへとその意図は何なのかを質問した。
「うにゃ? 別に意味はないよ。ただこうすれば育つかなぁ~って思っただけだよ♪」
「大きくなると良いよね♪」とジャスミンは笑顔でそうオレに笑いかけてきた。
だがしかし、ジャスミンには意図などはなかったのだ。ただ純粋に「電池が育つといいなぁ~♪」とサンタを夢見て信じる純粋な少女なだけだった。
「(電池は土に植えても育たねぇんだよジャスミン……。そもそもそんな栽培方法始めて聞いたわ!! いつの日か育って単4から単3へと成長して最後には単1電池になるのかよ!? ……いいやならねえよ!!)」
オレは心の中でそう一人ボケツッコミをしつつ、顔を引き攣らせながらも、ジャスミンの『夢』を壊さぬよう優しく語りかけた。
「そ、そっかぁ~。そうなのかぁ……。お、大きくなるといいなぁ~ジャスミン……」
「うん♪ ま、お兄さん。この世界では細かい事を気にしないのが鉄の法則だから気にしないでよ♪」
(全然細かくねえよ!! 電池は畑に植えるもんじゃねぇんだよ。……ってかジャスミン、お前その年で(何歳か分からんが)達観してんのかよ!?)
オレは嘆きの言葉を自分の心の中だけに留め、お話を進めることにした。
「……で、だ。ジャスミン、これ貰っててもいいのかな? 一本だけでいいからよ」
「あっ、たくさんあるから持ってていいよ♪」
っとジャスミンはそう軽い感じで快く返事をしてくれる。
「…………」
「…………」
オレはてっきりジャスミンが取ってくれるものとばかり思っていたが、いつまでもジャスミンは動いてくれず、沈黙が支配する。
だが、ジャスミンもそんなオレの思いに気づいたのか、
「お兄さん、他の作物や畝を壊さないように気をつけてね!」
「あっ、オレが自分で取るのか!!」
セルフサービスとして自分で畑に植えられている電池を収穫するように促されると、再び時間は動き出した。
「(ま、まぁタダで貰えるみたいだし、自分で取るくらいはいいけどね。もうこれ以上の展開なんて用意されてねぇだろうしなぁ~)」
そして畑に植えられている電池を収穫するため、ジャスミンの忠告どおり慎重に入っていく。
「(畑に足を踏み入れるとか、もしかすると初めてかもしんないなぁ)」
オレは畑初体験を淑やかに済ませると、さっさとこの話を飛ばしてやろうとこれ以上喋らずに引き抜く事にした。
「これ見た目からほぼ地面に埋まってねぇよなぁ~」っとタカをくくって、簡単に抜けるだろうと思って片手で引き抜こうとするのだが、
「あん!? な、何だこれ? 何でこんな硬いんだよ?」
右手に伝わるその感触はとてもじゃないが片手で、引き抜く事を拒絶するかのように硬かった。
そこで確実に引き抜くため、今度は左手も添えて両手で引き抜くことにした。
もちろん勢い良く引き抜いて、その衝撃で後ろに転んで畑や畝を壊すようなヘマをしないよう腰を落としてから力を入れる事にした。
「いくぞ……」
オレは誰に言うでもなく、そうポツリと声をかけると滑らぬよう電池を両手で握り締め、力を入れてから電池を…………引き抜いた!!
ずぼっと♪ 土もぱらりらぱらりら♪
「………………」
オレの二度目の初体験はとても文字で説明できないほどの衝撃だった。
「(……ごめん。オレが自分で引き抜いといてアレだけどさ。これ……このまま土に戻してもいいかな? いや、だってさぁ~……)」
オレはその電池の姿に戸惑いつつも、状況を確認する意味でも補足説明を始める。
「(何で単4電池の下に芋の子供のように、更に電池がくっ付いてんだよっ!! それもボタン電池が複数個も!?)」
そう畑に植えられた電池を引き抜くと、その下にはたくさんのボタン電池がくっ付いていたのだった。
「(しかもご丁寧にも、針金だか銅線だかの線をマイナス端子(単4側)とプラス端子(ボタン電池)に繋げるように、セロハンテープでくっ付けやがってからにさあっ!! もしかしてこの線はアレか? 芋と芋とを繋ぐ根っこを再現してんのか? …………芸が細かすぎんだろうがっ!!)」
オレは諸悪の根源、これを作ったであろうクソメイドに、右手で収穫物を長ネギを持つように握り締め詰め寄った。
「静音さん!! これはどうゆうことなんだよ一体さあっ!!」
オレは静音さんに「この立派なものを見やがれ! これもアンタが原因なんだろう!?」と顔の前まで持っていき、電池に付いた土をぱらぱらと落としながら見せつけた。
「おやおや、これは何とも立派に育ちましたねぇ~♪ まぁ~……ぶっふっ……こ、子供達(ボタン電池)もた、たくさんくっ付いておりますね~♪ こ、これは大量ですよアナタ様!!」
静音さんは笑いを堪えられないのだろう、肩と声を震わせながらもそう言い放ちやがった。
「(やっべぇこのクソメイド、作者肝入りのヒロインらしいけどさ…………本気でぶん殴りたくなってきたわ!)」
静音さんとは別の意味で肩と左拳を震わせながら、オレは無力にもただただ次回のお話が始まるのを待つだけだった。
電池に付いた土を払いつつ、遂にお話は100話の大台へとつづく