4 男たらしの天災
「お前ら俺置いて何してんだ?」
突然現れた、背中に太刀、腰に刀を2本と短刀やら色々ぶら下げた赤い少年。
俺を取り囲む男らはそれを気にせずわらわらしていると、少年が動いた。
「お前ら、何してんだっ!」
それは一瞬。
赤い閃光が俺の周りを舞い、俺を囲う男たちが倒れていく。気づけば少年はさっきとは逆の方向にいた。
「ひぃっっ!」
少年は振り返ると、俺に向かって口を開く。
「さて、それだけ困った顔してるってことは、その魅了は無意識ってことでいいんだよな?」
「っ!?」
早速ばれた!?
なんか神の天恵ってもっとこう、誰にもばれないとかそういうことがあるんじゃないの?
「ええ、まあ、はい……?」
「なんで疑問形なのかはこの際聞かないでおこうか。あとこっちを向け。俺は魅了は効かないから安心しろ。で、お前ひとりでここまできたのか?」
あ、いや、そっちを向けないのは前世の体質が原因なんですけど……
「あ、いえ……寝てて気づいたらここにいたって言って、信じてくれますか……?」
半分事実、半分嘘で答えると、なぜか少年は少し後ろに倒れかけてからこちらに応えた。
「お前、それ能力じゃなくてもなかなかくるぞ。お前に男たらしの称号をやろう」
不名誉すぎる!
「まあいいや。信じるぜ、それ。俺も同じようなことをこいつらにしていたわけだ。俺はカズ。こいつらのパーティーリーダーだ。お前は?」
「俺はワタル……だと思う」
俺はこの名前を言ってから、少し迷った。
この世界でもこの名前でいいのか、本名をこんな簡単に言ってもいいのか。
前者はすぐに肯定できた。さっきのステータスにこの名前があったから大丈夫だろう。
後者は……まあいいか。この状況で救ってもらったのだ。嘘をつくのも心傷ものだ。
「こいつらも悪気はないんだよ。むしろお前の魅了が悪い。無意識でその超絶的効果は天災」
ひどい言われよう……まあ天恵だからあながち間違ってないけど。
「で? お前はこれからどうするつもりだ?」
「え? えーと……」
言われてまた悩む。
多分ここは世間でいわゆる異世界な訳だから俺を助けてくれるような人もさほどいないだろうし、ダンジョン第2層にやってくる冒険者なんてだいたいがごついオッサンだと思うと魅了の効かないカズに頼るのが一番なことも明白だ。
だが、なにせカズのパーティーには完全体のホモがいる。俺、あいつと、関わりたくない。
まあ、そんなことも言ってられる訳なく、
「すいませんカズさん、俺を少し匿ってもらっていいですか?」
俺は彼に頼ることにした。
この時俺は、カズとの関係は一時的なものだと思っていた。
唯一無二、異体同心の相棒になるなんて、思いもせずに。