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◇ ◇ ◇
「…」
まるで嵐のように美樹が去って行ったドアの方向を俺は少し呆れた感じに眺める。ただ一応、そこには呆れだけではなく、美樹がいつも通りに戻っていることへの安心感などがあることも付け加えておかないといけないだろう。
「晃仁さん、よかったですね」
俺がドアから視線を戻すとサユリがそんなことを言ってくる。
「? 何のことだよ」
「とぼけてる」
ユリエがジト目でこちらを見ている。
「なんなんだよ、お前らは」
「美樹さんが元気になって嬉しいんですよね」
「思いっきり顔に書いてある」
「そりゃ、まぁ、幼馴染だし、心配になってたのは当然のことだよ」
「そうですか?」
「そうだよ。お前らが思っているようなことは微塵も存在しない」
「…鈍感」
俺はカバンを持って部室を後にする。背後でユリエが何か言っていたが気にしない。どうせ、何か変なことを言っているに決まっている。