15
◇ ◇ ◇
「ん……、んぅ……」
「あ、雪音?」
雪音の寝息がしてそちらを向くと雪音の瞼がゆっくりと開いているところだった。
「あ、アッキー……、お見舞いに来てくれたんだ」
いつもとは違う少し眠気を帯びたような声。
「あ、あぁ。もう、大丈夫なのか?」
「うん」
「そっか。それはよかった」
「ねぇ、アッキー」
「ん? なんだ?」
「後で美樹に謝っといて「ごめん」って」
え?
「私諦めたつもりでも、諦めきれてなかったんだ。だから、こんなバチが当たったんだよ」
こいつはまさかさっきのを聞いていたとでもいうのか?
「もう、何そんな不思議そうな顔してんの? ただ、夢に美樹が出てきて泣きながら謝ってたの。なんでそんなことを美樹がしてるのかは解らないけど……、少なくとも私に非があるのは明白だったから」
「そうかな、俺はどちらが悪いとかは思わない。だけど、一応伝えておくよ」
「うん。ありがと」
その後俺は雪音と他愛もない話を三十分ほどしてから彼女の家を後にした。
その日の夜。俺は美樹の部屋に来ていた。
「ごめんね。本当は今回みたいな形で伝えようなんて思ってなかったのよ。もっと相応しい時期に伝えるつもりだったの」
美樹はいきなりそう切り出した。話の流れが全く解らない。
「だからね、あのときの私の気持ちに関わる部分の記憶を封印しようと思うのよ」
「封印?」
「そう。まぁ、封印って言っても別のところに置いておくだけなんだけどね」
「えっと、美樹さん?」
「でね、今回の事のお礼もかねてユリエとサユリにその部分の記憶だけ抜き取ってもらって彼女達の中に封印しておこうと思ったのよ」
「あの、聞いてます?」
「はいはい、男なら覚悟決めてね?」
そんな声が背中から聞こえた、直後、首筋に何か生暖かいものが当たるのを感じた。そしてそれはさらにゆっくりと力を加えられ、表皮を破るような音がした。その瞬間俺はようやくそれが、ユリエの牙の感触であることを認識する。だが、時既に遅く、それを感じたのを最後に意識が暗転する。
翌日、自分のベッドで目が覚める。
「あ、おはようございます。ご気分はいかがです?」
上体を起こすとサユリがこちらを向いて笑顔で聞いてきた。
「え? あぁ、別に大丈夫だ」
「えっとぉ、確かめたいのですが、昨日のこと、どこまで覚えてます?」
真剣な表情でサユリが聞いてくるので俺は覚えている限りのことを話した。だが、大まかなことはだいたい覚えているのだが「生霊の行動原理」だった「美樹の気持ち」が何だったのかが思い出せなかった。
「問題ないですね。その通りです」
「え? 問題あるだろ」
「大丈夫です。それはただ思い出せないだけですよ。まぁ、乙女の秘め事なので詮索するのも野暮ってものですよ」
「そう、なのか?」
だが、それより気になることがあった。
「なぁ、ユリエはどうした?」
「あぁ……、ユリエはですね……」
サユリはそういうと、懐から小さな人形を取り出した。それはどこかで見たことあるような……って、ユリエ?!
「えぇ、契約違反をしたので、懲罰を受けてるんです。暫くはこのまま、動けませんし、喋ることもできません」
「契約違反?」
「はい。本当は記憶だけ吸い出せばいいのを、調子に乗って生気をちょこっとだけ吸っちゃったんですよ」
「そ、そうなのか」
意識が暗転したのはそのせいというわけか。




