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◇ ◇ ◇
昼過ぎ、俺は適当なテレビゲームを引っ張り出し、ユリエ達と時間を過ごしていた。
格闘ゲームで俺がユリエに連敗し続けたことで優越感を超えて飽きてきたユリエが選手交代という名の戦力外通告を俺に言い渡したため、俺はサユリと交代した。そのために少し暇になった俺は水でも飲もうかとリビングに降りた。
ピンポーン。
玄関のインターホンが来客を知らせる。母親は昼前に買い物へと出かけ、父親は友人宅へと遊びに行っているらしく、今は俺ぐらいしかいない。なので、必然的に俺が出るしかないのだ。
「ヤッホー、アッキー!」
玄関のドアを開けると明るい声が飛び込んできた。雪音だ。見た目は黒髪のロングヘアで、その一部を後ろで球を作るように結い上げているというかなり特徴的なものとなっている。当たり前だが、中学の頃よりも大人びていてスタイルも肉感的になっている。
「相変わらず元気だな」
呆れ混じりに俺は言う。
「へへぇ、だって久しぶりにアッキーに会うんだもん。元気にもなるでしょ」
「そういうもんか? まぁ、とにかく入れよ」
俺はそう言って雪音を家の中へと招き入れた。
「なんかアッキーの家に来たのって久しぶりだね」
感慨深げに言う雪音。
「中学以来だからな」
俺は淡々と言いながら、台所で、飲み物の用意をする。
「美樹ん家もそうだったけど、変わってないってなんかいいよね」
「ん? 美樹の家にも行ったのか?」
「うん。ここに来る前にね」
なるほど、美樹の客は雪音だったのか。
「そういえば、今日は手伝わなくていいの?」
俺がテーブルにお茶を置くと同じぐらいの時に雪音は小首を傾げて聞いてきた。
「ん? あぁ、クリスマスのか? 午後にすることにはなってるけど」
そう、一昨日にある程度示されたスケジュールによれば午後からということになっている。
「え? じゃぁ、来ちゃ悪かったかな」
「大丈夫だろ、実際は呼び出しがあるから」
「そうなの? なら、いいんだけど」
「それよりどうだった? 久しぶりの親友との再会は」
「どうだったって、別にそんな長いこと離れていたわけじゃないよ。たまにだけどメールとかしてたしさ。まぁ、楽しかったけど」
雪音はそう言って小さく微笑んだ。
「それよりさ――」
プルルル……。突然、家の電話が着信を告げる。
「あ、ちょっと待っててくれ」
「あ、うん」
俺は雪音にそう告げると居間を出て玄関の電話のところまでいく。液晶に写されているのは携帯番号。この番号は確か美樹のだ。
「もしもし?」
「晃仁? 今からやるからすぐ来て」
予想通り電話の相手は美樹だった。
「え? あぁ、わかった。今来客中だからちょっと遅くなると思う」
「まぁ、いいけど、あんまり遅くならないでね」
そう言うとガチャっという音とともに電話が切れる。俺も受話器を元に戻してから居間へと戻る。
「美樹から?」
雪音が静かな口調で尋ねてくる。まるで何かを探ろうとでもしているかのようだった。
「あぁ、準備するから来いって」
「そう。じゃ、私そろそろ帰るね」
雪音はそう言うと玄関へと足早に向かう。
「え? そうか? 準備って言ってもそんなに時間かかるもんじゃないし。なんだったら、一緒に――」
「アッキー、気を遣ってくれるのはありがたいけど、私にも用事とかあるからさ……」
「え? あ、あぁ」
「じゃ、またね」
雪音はそう言って、靴を履き、玄関を出て行った。その間、雪音は一切こちらを向こうとはしなかった。
「あいつ、なんかあったのかな?」
いくら鈍感だと言われる俺にだって察することができるぐらいの異変だった。だが、その原因が何で、どうしてそうなっているのかということは一切解らない。ただただ、妙な違和感が残るだけだった。




