ケース3 よしのり君事件
K&T探偵事務所は9時出勤だ、
「おはよう社長!」
「おはよう、田中君。
早速だけど、今日は新しい依頼が入っているわよ。」
「おおっ!そうか。
結構、探偵への依頼ってあるもんだな。」
「ええ、今回はオレオレ詐欺事件の時の吉崎さんの紹介なのよ。」
「なるほど、前の依頼者からの紹介ってパターンもあるんだな。」
「ええ、結構多いわよ、
一般の人で、探偵に知り合いが居るなんて、
なかなか無いから、
誰からの紹介ってのが多いわね。」
「ふ~ん、それで、今回の依頼ってのは、
どんな事件なんだ?」
「今回の依頼人は剣持さんという、ご夫婦なんだけど、
内容としては、一人息子の良典くんが半年ほど前に、
小学校の屋上から飛び降りて亡くなったのよ、
良典くんは、飛び降りる数日前から、
学校に行きたがらなくなって、
検死の時に、飛び降りた際にではない、
古い傷があちこち付いていたのが分かったらしいの、
ご夫妻は、学校でイジメがあったのではないかと考えて、
教育委員会に調べてもらったらしいんだけど、
学校側も教育委員会も、
イジメの事実は見当たらないと報告してきたんだって。」
「なるほどね、臭いものにはフタをしろってやつかな?」
「ええ、ご夫妻も隠蔽を疑って、
うちに依頼することにしたみたい。」
「実際にイジメがあったとしたら、見逃すわけにはいかないな。」
「そうね、良典くんが命をかけてまで、
何を伝えたかったか、明らかにしてあげたいわ。」
「それじゃ、まず、
良典くんの部屋に、お邪魔することって出来るかな?」
「ええ、剣持さんに、お願いすれば大丈夫だと思うけど、
どうして?」
「剣持さんも調べたとは思うけど、第三者の視点から見れば、
イジメの何らかの証拠が見つかるかもしれないだろ。」
「分かったわ、連絡取ってみる。」
俺は社長と一緒に剣持邸を、訪れることにした。
「「お邪魔します。」」
「どうぞ・・・」
剣持さんは、ご主人が仕事で不在だったので、
奥さんが応対していただいたのだが、
やはり、一人息子を亡くされたので、
生気が乏しく、
食欲も落ちているのか、
頬がゲッソリとこけている。
「初めまして、K&T探偵事務所の田中と申します。」
俺は、奥さんに握手を促して、
精神魔法で強化をかけた。
「よろしく、お願いします。」
いくらか、顔色が良くなったようだ。
「さっそく、良典くんの部屋を見せていただけますか。」
「ええ、こちらになります。」
良典くんの部屋は、
机や本棚などが、きれいに整頓されていて、
真面目な性格が窺われた。
「しっかりした、お子さんだったんですね。」
「ええ、少し大人し過ぎるところもありましたが、
言われなくても部屋の片付けや、予習復習をする子でした。」
お目当ての物を探してみると、
机の上にランドセルが置いてあるのが目に入った。
「あのランドセルは、良典くんが、いつも使っていた物ですか?」
「ええ、あの日に学校の屋上に残されていたそうです。」
「ちょっと拝見させて下さい。」
「どうぞ。」
俺は魔法を使って、
ランドセルに残された、良典くんの記憶を読み解いてみた。
(よし、見えた!)
イジメの中心人物は3人いたようだ、
他のクラスメートは、そいつらが怖くて、
良典くんを無視したりしていたらしい、
そして、良典くんが自殺した当日のビジョンで、
俺は最悪なものを見てしまった。